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処刑回避のため家出した令嬢は、男装騎士として運命をやり直す  作者: 松平 ちこ


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第10話 母国への潜入調査を命じられた男装従騎士

「君、天涯孤独って本当?」


「……はい?」


 呼び出された兵舎の一室、そこでリンは品定めを受けた。男がリンの前に立ち、話しかけてきたのだ。

 入隊して三年と少し、今さら出自について触れられるとは、リンは思わなかった。


 ――何か、ヘマをしただろうか。


「あー。ごめんね? これから頼む任務が極秘任務に当たるからさ。確認だよ、確認」


「はっ。こちらこそ素で返答してしまい、申し訳ございません。

 私は末っ子のため、口減らしに親に売られそうになり、孤児院に駆け込みました」


 リンは当時の教会を頼った時と、同じ台詞を出して説明した。


「以来、親とも兄弟とも連絡は取り合っておらず、天涯孤独と思ってもらって、問題ありません」


 背筋を伸ばし、聞かれた範囲を答えているだけなのだが、リンは男を見据えて不快感を飲み込んだ。

 目の前の男は、リンの話をにやにやと聞いている。


 ――胡散臭い。見目も良いし、上位貴族かな。


 男の出で立ちは明らかに、こんなところへ来るには、立場が上過ぎるように思う。

 けれどリンは、それを聞ける立場でもなかった。


「それって、証明出来る?」


「シスターヴァイオレットが、当時対応してくれました。記録と共に、ご確認いただけるかと」


 後ろ手に胸を張ってそつなくリンが答えれば、男は一応、満足したらしい。

 後ろへと下がった。上官が前に出て、話を引き継いだ。


「リン。今からの任務は極秘任務だ。他言無用、期間は二ヶ月。詳細はここに書いてある。読んだら返せ」


「はい」


 盗聴を気にしてなのか、黙って読めとのことだった。

 一人で呼び出されたこともそうだが、いつもと違う念の入れように、これから何か起きるのかとリンは感じた。


 リンに任されたのは、潜入調査だった。調査方法は自由。

 ミレット王国を可能な限り調査せよ、とのことだった。


 ――駐屯地の位置関係。貴族関係。こういうことを調べたがるって、やっぱり……。


 アスフォデル王は即位後、リンが志願兵となってから、外交に力を入れているようには全く見えない。


 前世、王子の婚約者としてカメリアは、アスフォデル前王と外交もしていた。

 リンにとっては今現在、前世と違う歩みをするアスフォデル国の動きに、ずっと違和感を持っていた。


 即位後に臣下を入れ替え、冷酷王と呼び名がついた現王陛下。

 その実、不正貴族の一切を許さず、総入れ返しただけという真相を入隊後に知った。


 冷酷王と揶揄された一因は切り捨てられた貴族たちによる情報操作。

 非の無い王太子然とした姿から、あまりにもかけ離れ、冷酷に処罰をする大胆さが、大きかったらしい。


 ――噂って当てにならないのな。


 生来の優秀さは失われず、暴君とは言いがたいため、内部では意外にもその人気は高かった。


 逆に言えば、その行動全てに無駄がなく意味があるとも言えた。


「明日から作戦行動へ移れ、今日は一日、準備期間へ充てろ」


「はっ!」


 紙を返し敬礼をして、リンは退室する。

 家族の有無を聞かれたのは、潜入に辺り使い捨てられる駒を探していたからか。


 ――本当に戦争を始めるのかな。


 それは何のために?

 一抹の不安を抱えながら、リンは自嘲の笑みを浮かべた。


 ――戦争する気があるのか、探るために潜入したのに、逆に母国に私が潜入するなんて。


 ミレット王国の重要拠点の位置は変わりがなければ、リンは既に把握している。

 けれど、地理や歴史は知っていても、貴族関係や自国のことは、リンはあまり知らないと気づいた。


 ――外交と王太子妃教育、貴族学校。体よく情報操作をされていたのかな、僕は。


 苛立ちと共にリンはこれを機に、自国ミレット王国へと帰る決意を固めた。




 ◇◆◇◆◇◆◇




「ジニア。僕、任務につくことが決まったよ」


 夜の居室での就寝準備をしながらリンは普段通り、ジニアに報告をする。


「お、気をつけてな。いつ帰ってくんの?」


 ――良かった。ジニアは知らないんだ。


 いつもと変わらない彼の返答に、リンは少しホッとする。

 敵国への潜入調査など、命の保証もない任務だからだ。


 ジニアは遠くの村に家族がいると言っていた。給金も仕送りをしていると、リンは聞いている。

 そういった者へは、任務が下りてないのだろう。


「……三ヶ月くらい、かな」


「……長いな。気を、つけろよ」


 リンの潜入は二ヶ月、往復の距離を考えると、それくらい想定していた方がいいだろう。

 ジニアは少し、返事を真剣に考え込んで、返してきた。


「……いつから?」


「明日の朝には出るよ」


 素っ気なく返して、リンは荷物をまとめた。普通は危険かもしれない。

 けれど、ジニアのお陰でここ三年、隠し通せた実績もある。

 

 それに、ジニアにもまだバレていない。リンには、魔法使いとしての能力もあった。

 警戒心はあっても、悲観的になることはなかった。


 ――前世の最期の方が、よほど地獄だと思うし。


 首にそっと触れて、リンは唾を飲み込んだ。

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