赤い賢者と星屑
リサは、ラザリスでも指折りに上質な宿のテラスで、今日集めた資料をまとめていた。
ロザリオはすでにユウたちに渡している。
その前段階で十分に根回しも済ませていたから、リサが法王から目をかけられていることは、もはや周知の事実だった。
上級宿を用意してもらうくらい、造作もない。
それにリサは、使っていい時には、存分に実家の名前を使う質だ。
利用できるものは、最大限に利用する。
それができないほど、青くもない。
ラザリスの大図書館に籠もって、もうずいぶん経つ。
目移りする資料はいくらでもあった。
けれど、ユノやユウが現場で頑張っているのを思えば、寄り道ばかりしているわけにもいかない。
後で読む用の本と、今読むべき資料をきっちり分けて、自分の趣味は――なるべく後回しにしていた。
それでも。
なんて、面白いのかしら。
思わず読み耽りながら、ふと、仲間たちの顔が浮かぶ。
リサは、自分でも少し驚いていた。
一匹狼のユノを引き込んだのは、その気質が気に入ったからだ。
一匹狼であること自体が、良かった。
こちらに、必要以上に踏み込んでこない。
距離感を誤らない。
腹を割って話せるが、馴れ合わない。
ユノとは、仲間というより――
対等なパートナーだった。
それが、今はどうだろう。
気づけば、自然と「仲間」だと思っている。
思ってしまっている。
たぶん、原因は分かっている。
あの、ぽやんとした男と。
間抜けなガキンチョ。
それから、世間慣れしていない、不思議な魔術師。
ユノの言い方を借りるなら――
おもしれー奴ら。
それほど長い付き合いでもないくせに、ここ数日、妙に何かが足りない。
そのことを、リサは理解していた。
そして同時に、理解したくなかった。
そういえば、とふと思う。
この二年間、リサとユノを誘ってきたパーティーも、クランも、山ほどあった。
利用価値のある連中も、実績十分の組織も、確かに存在した。
それでも、全部断ってきた。
なのに。
ユノが連れてきたのは、どうしようもない、デコボコのポンコツパーティーで。
気がつけば、クランを作るところまで来ていた。
リサは、ユノという人物を全面的に信用しているわけではない。
実力はある。
だが気まぐれで、身勝手で、いい加減。
挙げ句の果てには、リサのことさえ平気で利用してくる。
――ろくでもない女だ。
ただし。
彼女の勘だけは、この世界で一番、信用に足る。
リサは、ふと空を見上げた。
夜空に、小さな星が、静かに輝いていた。




