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行方不明の冒険者

リベル・オルムに帰還した次の日。

誰よりも遅く起きてきたユノは、開口一番こう言った。


「ガゼフの野郎が、帰ってきてないらしい」


寝起きで気怠げに少し乱れた髪をかきあながら告げた名は


ガゼフ。

鐡のくろがねのつめに所属する中級冒険者だ。


ギルドに街道の件を報告するため出かけようとしていた僕らは、足をとめた。


昨日、遅くまで酒場で飲んでいたらしいユノが冒険者仲間から聞いた話らしい。


もう一週間近く、ガゼフたちはダンジョンから帰還していないのだと。


正直、僕としては――帰ろうが帰らなかろうがどうでもいい。

もちろん「帰ってくるな」と願うほど嫌いではないけれど……

いや、嫌いは嫌いだけど、死んでしまえとか怪我をしろと思うほど腐ってはいない。


ただ、興味がないというのが本音だった。


「ガゼフなんてどーでも良いよ。

 それに、冒険者が一週間くらいダンジョンに潜るなんて珍しくもないでしょ?」


カイルも同じ気持ちのようで、心底どうでもよさそうに言った。

実際、長い時は一ヶ月以上潜り続けるパーティもいる。

一週間など珍しくもない。


けれど――


今回、ユノが持ってきた情報は、聞き捨てならないものだった。


---


「やつら、俺たちが平原の調査に行ったあと……

 風見の迷宮で起こった“異変”の調査をギルドで請け負ったらしい」


「風見の迷宮の……異変?」


テーブルで報告資料をまとめていたリサが、勢いよく立ち上がった。


ユノは頷き、続ける。


「なんでも、風見の迷宮で洞窟狼ケイプウルフの“変種”が出たらしくてな。

 その調査だってよ」


「変種……」


ユノは肩をすくめる。


「どんなのかまでは知らねぇが……

 ガゼフはアレでも中級上位の“疾強風級”だ。

 風見の迷宮なんざ、お使いレベルだろうよ。

 それが一週間も帰って来てないってなりゃあ……」


ガゼフの性格に難はあるが、実力は確かだ。

中級以上の実力が必須の蒼鉱の坑洞をメインに、

難度の高い深緑の迷い森にも、浅層とはいえ何度も挑戦して帰還している。


そんなパーティが“風見の迷宮ごとき”で一週間も帰らないとなれば、

事故か、それとも――帰れない何かがある、もしくは帰れなくなるほどの何かが居たと考えるのが自然だった。


---


「まあ、ぶっちゃけガゼフなんかどうでも良いが……

 リサ的には気になるんじゃないかってな」


少し面白がっている節のあるユノとは対照的に、

リサは眉を寄せ、俯いて真剣に何かを考えていた。


数秒後、リサは勢いよく顔を上げる。


「ユノ、すぐ潜る準備して!

 ユウ、リシア、ガキンチョ。

 あんたたちはどうする?」


どうする――つまり“一緒に来るか”ということだ。


カイルとリシアを見ると、

二人とも何か考え込んでいるようだった。

強疾風級の冒険者が消息を絶った。

気にはなる。

だが、ついていくとなれば話は別だ。


僕の視線に気づいたリシアが、小さく頷いた。


「ユノア様、リサリエル様もご一緒であれば、

 ある程度の事態には対処できましょう。

 ユウさえよろしければ、リシアもご一緒いたします」


頼ってばかりはいられない――けれど、

正直、僕とカイルだけでついて行っても足手まといになるだけだ。


僕は決意してリサに向き直った。


「リサ、お願いだ。僕らも連れてって」


「じゃあ決まりね!」


リサが高らかに宣言し、

ユノはなぜか満足げに笑っていた。




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