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問題児たち

ユノと呼ばれた冒険者は、

あっという間に絡んできた男たちを退散させてしまった。


それにしても――。


しなやかで引き締まった体躯に、

無駄のない佇まい。


リシアが教えてくれた

“冒険者の理想形”そのものだと、僕は思った。


男たち――ガゼフを睨みつけたとき、

その視線に魔素を乗せていたんじゃないか、とふと思う。


そんな芸当が本当にできるのかどうかは分からない。

だが、できそうだと思わせるほど、

ユノの気配は洗練されていた。


「ありがとうございました」


僕がそう言った瞬間――

その時だった。


酒場の入り口の扉が、

バン!と乱雑に開かれた。


(……奴らが戻ってきたか?)


そう思った僕の視界に、

飛び込んできたのは――

赤毛の小柄な女の子だった。


怒気をはらんだ足音を立てながら、

こちらへどしどしと近づいてくる。


「やっと見つけた!

 あんた、勝手にどこ行ってんのよ!!」


怒鳴りつけた、直後。


僕やユノたちの周りに集まる人々、

酒場のただならぬ雰囲気に、

何かを察したのだろう。


少女は、

手にしていた杖を――

机を叩き割る勢いで“置いた”。


――ドゴッ!!


酒場全体に響きわたる衝撃音。

まるで爆裂魔法でも使ったかのようだった。


少女はそのまま、

周囲をギロリと睨みつける。


野次馬になっていた冒険者たちや客たちが、

一様にたじろいだ。


「面倒事はごめんよ!

 解散、解散!!

 さっさと自分の席に戻りなさい!!」


その声の迫力と威圧感は、

ユノの静かな威圧とは、

また違う意味で危険だった。


十数人の冒険者たちは、

蜘蛛の子を散らすように四方八方へ逃げていく。


彼らはなるべく僕たちの方を見ないようにして、

それぞれの席へと戻っていった。


ユノは片肘をつき、

やれやれといった様子で呟く。


「相変わらず騒がしいな、リサ……」


少女――リサは、

すぐさまユノへ振り返り、

腰に手を当てて眉を吊り上げた。


「ユノ!!

 また面倒事?!

 あんたね!

 ほんっっっとうに!

 ちょっとは大人しくしてなさいよね!!」


ユノは、深くため息をついた。


「おい待て。

 今のどこが俺のせいだよ。

 それに、お前の方がよっぽどうるせーよ」


「どうせ誰か殴ったんでしょ!!?」


「殴ってねぇし!!!」


二人の言い合いの声が、

酒場中に響きわたる。


さきほどまで沈黙していた冒険者たちは、


「ああ……いつものだ……」


とでも言いたげに、

そそくさと店を後にしていった。


酒場の店主も困った顔をしていたが、

関わりたくないのか、

見向きもせずに後片付けを始める。


僕とカイルは、その様子を眺めながら、

どうしていいか分からず、

リシアの方を見た。


リシアは、

パンを食べ終え、

食後の紅茶を優雅に口にしていたが、

僕たちの視線に気づくと、


「たいへん、仲がおよろしいことですね」


と、穏やかに言った。


そのあまりの温度差に、

僕とカイルは思わず顔を見合わせた。




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