大部屋の片隅で(カイル視点)
カイルは安宿の大部屋の一角で横になっていた。
ユウとリシアにはすっかり迷惑をかけてしまった。
せめてもの罪滅ぼしにと、角兎と薬草を二人に渡そう――
そんなことを考えたのが間違いだった。
「……俺の見栄っ張り……」
北の街道沿いの平原で小さな角兎を狩れば良かったのに、
“どうせ渡すならいいものを”と、南のステム平原へ足を伸ばしたのだ。
ステム平原の南端、ラクナ山地寄りの草原には、
北側よりはるかに大きく角の発達した角兎が生息している。
カイルはそれを狩りに行って、手酷くやられた。
貴重なポーションも使い果たし、
常宿にしている宿を借りる金銭的余裕もなく、
こうして大部屋の雑魚寝を余儀なくされている。
ようやく動けるようになったのは、つい昨日のことだ。
カイルは昨日のことを思い返した。
二人のことが気になって訪れたギルド。
そこでは、ある噂話でもちきりだった。
“久しぶりに出た大型ルーキー”の話で。
持ち前の人懐っこさで周りの冒険者に聞き込みをして、
カイルは耳を疑った。
――ラクナ山地を越えてきた。
――ステム南端の大型角兎を多数討伐した。
――その新人が納品した素材には、ラクナ山地最大の脅威ともされる
鋼鉄の蜘蛛アイアンタランチュラ
人ほどの大きさの大蟷螂レッサーエンプサ
そして巨大な百足グランセンティピートまで含まれていた。
その上オオトカゲ、モアを討伐してその秘石すら持ってきたのだという。
自分にはほとんど縁のない話だった。
たまにいる、そういう“規格外の新人”。
カイルはため息をつきつつ、ギルドを出ようとした――そのとき。
「しっかし綺麗だったよなー、あの銀髪銀眼の魔術師」
カイルが話を聞いていた相手の相棒が鼻で笑う。
「やめとけって。あの優男の兄ちゃん、どこかの貴族筋だろ。
あんなヤバそうな魔術師、そうそういねえよ。
あの歳で冒険者になろうなんて、もともと相当の手練れだぜ。
手ぇ出したら即お陀仏だ」
銀髪銀眼の魔術師に、優男のルーキー。
その組み合わせでカイルの頭に浮かんだのは――
ユウとリシアしかいなかった。
行こうとする足を止め、
カイルは二人について詳しく聞いた。
聞けば聞くほど、間違いない。
彼らだ。




