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比較的最近更新した短編のまとめ場所

つま先立ちじゃ足りない距離

作者: リィズ・ブランディシュカ



 うちの中学には超小さい先輩がいる。

 

 小学生低学年かってくらいの。


 だからチビ先輩なんて呼ばれて、皆から親しまれていた。


 でも、本人的にはそんなあだ名は不満なようで「不敬だ! 俺は先輩だぞ! 皆してチビチビ言いやがって」と、いつも怒っている。


 私は、そんなところも小さくい可愛さに掛け算してると思うんだけど、武士の情けで言わないでおく。


「実際にチビだから仕方がないじゃないですか」


 だから、私は後輩として彼をなだめるのだ。






 私とチビ先輩は図書委員。


 だから、毎週当番として図書室の手伝いをする。


 やる事はシンプルで、貸出しの事務作業と、本の整理整頓。


 学生だから、あんまり難しい事はしていない。


 他の所はどうだか知らないけど、うちの委員会は先生がしっかりしてるから、その影響もあるかな。


 そんなわけで、私は今チビ先輩と一緒に本を並べているところだ。


 返却された本をチェック。


 破れとか汚れがないかよく見た後に、本棚へ戻しておく。


「く、くそおおおお」


 そんな事を繰り返していると、チビ先輩はつま先立ちでプルプル。


 上の段に手が届かないようだ。


 この学校の図書室の棚はちょうど手が届きそうで届かない場所にあるから。


 図書室の奥にある、踏み台を持ってくるのが面倒だなって時は、チビ先輩がよくこうなってる。


 その姿がとてもかわいらしいから、ずっと眺めていたくなるけど、さすがに可哀想だよね。


 というわけで。


「はい、これで良い?」


 私が代わりに本をしまってあげたのでした。


 チビ先輩は悔しそうにしながらも、


「た、助かった」


 と呟く。

 

 ああ、本当にかわいいな。


 撫で繰り回したくなる。


 でも、さすがに先輩にそんな事をする勇気はない。


 大人になったら、一つや二つの年齢差は小さいのかもしれないけど。


 私たちはまだまだ子供。


 私にとっては、先輩ってもっと手を伸ばしづらい、上の所にいる存在なんだよね。


 つま先立ちぐらいじゃ手が届きそうにない。


 チビ先輩は見た目は子供っぽいけど、勉強もできるし、プライドより皆の事を考えて行動できる。


 とても尊敬できる人だから。


 なんて考えていたら、どこかの本棚に入れた本が、何かの拍子で落ちてきた。


 誰かが適当に入れたらしい。






 私は悲鳴も上げられずに、目をつぶって硬直。


 置物の様になってしまった。


 急な事で、避けるなんて思いつかなかったから。


 でも、チビ先輩が「まったく仕方ないな」って助けてくれたんだ。


 近くで作業していたチビ先輩が、踏み台にのって私の頭に直撃しそうだった本をキャッチ。


 いつもより高い目線から見下ろしてくる、チビ先輩を見て、ちょっとだけ胸が高鳴っちゃったかも。


「ありがとう、先輩」


 だから私は、つま先立ちになって先輩の頭をなでなで。


 思わず反射的にやっちゃった。


「チビって言うな」

「あ、ごめん」


 いつも通り怒るチビ先輩は可愛いけど、でもやっぱり男の子でたまにカッコいい所もある。


「あーあ、もっと背のびねーかな。いつまでもチビのままじゃ、かっこ悪ぃじゃねーか」


 私はそのままでも十分カッコいいと思うけど、それを伝える勇気はなかった。


 だから、ちょっとだけ背伸びをして「いまのままでも十分だと思います」って精一杯の誉め言葉を伝えるしかできない。


 チビ先輩は「俺は十分じゃない」だって。


 いつか、そんな事しなくても、思った事を伝えられると良いのにな。



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