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小説ω

9000万のあたま

作者: 七宝

 この国には今、2つの民族が存在している。

 1つはこの国が出来るずっと前から住んでいたトル族。もう1つがここ十数年のうちに次々と入り込んできた、オールドヤンキーウンコスワリ星人(通称オヤウ人)だ。


 オヤウ人はこの国を乗っ取ろうとしている。そう訴える人間が多かった。

 実際オヤウ人はトル族を殺したり、暴行をしたり、物を壊したりとやりたい放題なのだ。しかも、国は罪を犯したオヤウ人を裁こうとしない。これはオヤウ人の故郷であるオールドヤンキーウンコスワリ星との摩擦を生みたくないという国の考えであると言われている。


 現在、この国の人口の4%がオヤウ人になっていた。このまま行けば、100年後には国民の半数以上がオヤウ人となり、この国はオヤウ国となってしまうだろう。


 国は頼りにならない、話が通じることもない、かといって暴力で止めればこちらが裁かれる。


 そんな八方塞がりの状況で、この歴史的な事件は起こった。


 ソミャポ駅前で堂々と女子高生を犯すオヤウ人の後頭部を、トル族の若い男が後ろからハンマーで叩き割ったのだ。


 男は憎しみを込めて、何度も何度も後頭部を叩いた。

 3年前、この男の恋人はオヤウ人に強姦された挙句殺されたのだ。しかし、犯人はシラを切り通し、無能な裁判官は無罪を言い渡した。

 その惨劇がまた起ころうとしていたのを、彼は止めたのだ。


 その場には彼を通報する者はいなかった。

 男はハンマーを手放すと、叩き割った頭の中に手を突っ込み、何かを取り出して周りに見せた。


 ピンポン玉ほどの大きさの、血にまみれたなにかだった。


 騒ぎを聞いて駆けつけたオヤウ人が通報した警察が来る前に、男は逃げた。


 翌日、SNSに巨大なダイヤモンドを片手に持った犯人の男の写真とともに、ある文章がアップされた。


『俺は昨日ソミャポ駅でオヤウ人を殺した男だ。頭をカチ割った後、手を突っ込んでダイヤを取り出した。鑑定してもらったところ9000万円の値がついた』


 この投稿はすぐに拡散され、ニュースになった。


 当然そのような話を信じる者はごく少数だったのだが、それでも0人ではなかった。


 その数人が、事件を起こしたのだ。全員が全員「本当にダイヤが出てきた。売れた」と証言した。


 彼らは最初の男とは全く接点がなく、年齢もばらばらだったため、口裏を合わせているわけではないとする意見も上がるようになった。


 それから、度々事件が起こった。

 ダイヤが取れたという者もいれば、取れないというケースも出てきた。彼らはずっと刑務所で「嘘つき」と叫び続けたものの、刑務官に「うるさい!」とビンタされて大人しくなった。


 また、国内大手の宝石店の声明によると、これまでにそのような大きさのダイヤが持ち込まれたことはないとのことだった。


 これについても、「犯罪者なんだから大手に売るわけないだろ」「裏の業者が買ってるんだ」「外国に売ってる」「そんなことよりも焼肉のタレをジュースとして売ってみてはどうか」などの声が上がり、その結果翌年ほとんどの国民が高血圧による脳出血でこの世を去った。


 生き残ったのはオヤウ人を殺して捕まった犯罪者たちと、オヤウ人に略奪を繰り返された結果焼肉ジュースを買うことすら叶わなかった貧困層の者たちだけだった。


 彼らは最後のオヤウ人が死んだ際、「(うん)()っ!」と叫んだという。

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