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第5話 新たな仲間

「あれが……大樹海……」


 旅立ちから三日目の朝。

 緩やかな丘を登りきったところで、目的地のサリエル大樹海が見えてきた。

 流石は、大陸最大の未開拓地というべきか。

 黒々とした森が果てしなく続いていて、見ていると距離感が狂ってきてしまう。

 周囲に人の気配はおよそなく、どこからか奇妙な鳥の声が聞こえてくる。

 

「思った以上に恐ろしい場所ですね」

「こりゃヤバいっしょ。魔力の濃度がすっごいことになってる」


 魔法使いのミーシャさんが、冷や汗をかきながらそう言った。

 俺もなんとなく嫌な気配を感じ取っているが、魔法の専門家からするとさらに恐ろしいことになっているらしい。

 これまでほわんと緩い顔をしていたのが、かなり険しくなっている。


「マキナ、周囲の警戒を怠らないでくれ」

「大丈夫です。私がいる限り、マスターには指一本触れさせません」


 そういうと、マキナは深々と頭を下げた。

 こうしている間に俺たちは車を降りて、いよいよ森の中へと入っていく。


「……あ! そう言えば、アリシアさんたちはどこまで護衛してくれるんですか?」


 暁の剣との契約は、サリエル大樹海までの護衛だったはずだ。

 だったら、そろそろお別れしなくてはならないのではなかろうか。

 そう思ってアリシアさんに声をかけると、彼女は何やら考え込み始める。


「そのことについてなのですが。……ヴィクトル様、私を雇う気はありませんか?」

「え?」

「何となく察しがついていると思われますが、私はもともと騎士の出です。いま冒険者をしているのも、名を売っていずれは仕官するのが目的でした」


 なるほど、装備の良さから何となく察していたがやはりそうだったか。

 騎士となることを目指して冒険者をしている人は多いからね。

 流石に伯爵家クラスではありえないが、下級貴族にはありがちな話だ。


「正直、凄いありがたいけど……。俺なんかでいいの? マジでなにもないよ?」

「私はヴィクトル様に可能性を感じていますから」

「今回の仕事が終われば、うちの実家ともつながりができる。ひょっとしたら、そっちで仕官できるかもよ?」

「シュタイン家の本家よりも、ヴィクトル様の部下になりたいのです」


 そういうと、アリシアさんは俺との距離を詰めてきた。

 改めてみると……この人、凄い美人さんだな。

 すぐに別れると思ったのであまり意識していなかったが、金髪碧眼で整った顔立ちは俺が丹精込めて作ったマキナにも負けないほどだ。

 

「ちょっと、リーダー本気?」

「ああ。あのとんでもないゴーレムの数々を見ただろう? ヴィクトル様は間違いなくこの魔境に都市を築くぞ」

「うーん、リーダーがそういうなら……。この際だし、私もヴィクトル様の部下にしてもらおうかな!」


 そういうと、笑顔を浮かべて俺に許可を求めてくるミーシャさん。

 彼女も優秀な魔法使いだし、特に断る理由はない。

 俺はすぐさま頷きを返す。


「やった! よろしくね、ヴィクトル様!」

「うーん、俺っちは宮仕えって柄じゃねえからな。わりいけど、ここまでだ」

「そう言って、ヘンリーは女遊びが出来ないのが嫌なだけだろ」

「んだよガンズ! お前だって残る気はないだろ?」

「いや、俺は残るぞ。マキナさんがいるからな」


 そう言うと、ガンズさんは俺の横にいるマキナへと目線を向けた。

 ……ま、まさかマキナのことが好きなのか?

 それはダメだ、マキナはマスターである俺のものだからな!

 彼女の身体は俺の汗と涙の結晶、何人たりとも渡しはしない!


「マキナは渡せないよ!」

「……いや、修行相手をして欲しいだけなのだが」

「修行相手?」

「ああ。マキナさんは間違いなく俺が見た中で最強の存在だ。だからたまにでいい、俺の鍛錬に付き合ってほしいのだ!」


 いきなり頭を下げて頼み込んでくるガンズさん。

 まあ、そう言うことなら別に構わないだろう。

 マキナの方を向くと、彼女もまた構わないとばかりに頷く。


「問題ありません。ガンズ様の戦闘力向上はマスターを守るために有益と考えます」

「おお、ありがたい!」

「……なんだよ、俺以外は全員が残るのか。じゃあ、伯爵家への報告と報酬の受け取りは俺がすることになるかね」

「任せた。一人で帰らせることになって済まない」

「なに、俺一人の方がかえって身軽さ」


 一人だけ、街に帰ることを選択したヘンリーさん。

 彼は身を翻すと、そのままタタタッと走り去ってしまった。

 風魔法でも使っているのか、つむじ風のようだ。

 あれならば一人でも問題はなさそうだな。


「では改めて……。アリシア・ハーネイです。よろしくお願いいたします」

「ミーシャです。よろしくお願いしまーす!」

「ガンズだ。よろしく頼む」


 三者三様の挨拶をしながら、アリシアさんたちは深く頭を下げた。

 俺は少し緊張しながらも、軽く咳払いをして挨拶を返す。


「こちらこそ。これからこの大樹海を開拓するヴィクトル・シュタインだ。みんな、しばらくは大変な生活になるだろうけど頑張ろう!」


 俺の声に合わせて、背後のゴーレムたちもガチャガチャと音を立てた。

 マキナもまた黙って拳を突き上げている。

 自分たちもいるぞという無言でアピールしているようだ。


「もちろんゴーレムたちのことも忘れてないよ。特にマキナ、君には期待している」

「ありがとうございます。マスターの期待に応えるため、全力で務めさせていただきます」


 恭しくお辞儀をするマキナ。

 よし、これでいよいよ本格的な開拓生活の始まりってわけだな。


「とりあえず、前の開拓団の拠点があった場所へ行こう。そこに着いたら、まずは家の建築から始めようか」

「おおーー!!」


 こうして俺たちは一路、サリエル大樹海の奥地へと向かっていくのだった。


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