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第30話 共闘

「まずいぞ……!! このままじゃ皆殺しだ!」

「まさか、香水の効き目が切れたのか?」

「わからん!」


 混乱するエルフたち。

 一方、俺も何が起きたのかよくわからなかった。

 車の屋根が吹き飛ばされたが、モンスターの姿はまったく見えなかったのだ。


「マキナ、どう!?」

「いえ、私の眼にもそれらしきものは……。熱源反応もないですね」

「……恐らくゴースト種でしょう。厄介ですよ、奴らは姿が見えないうえに魔力を介さない攻撃をすべて無効化します」


 深刻な顔でアリシアさんはそう告げた。

 げげ、面倒なものが出てきちゃったな……!

 魔力を介さない攻撃となると、魔法か魔力を用いた武技以外は無効ってことか。

 これだとうちのゴーレムたちはマキナも含めてほぼ無力だな。


「エルフたち! ここは協力して奴を倒そうと思うが、どうだ!」

「……こちらにメリットはあるのか?」

「私の武器はミスリル製だ、魔力を通せばやつを切れるだろう! それとこちらのミーシャは炎の上級魔法が使える!」

「やむを得ん、いいだろう!」


 ここで、エルフとの間に臨時の協力体制が築かれた。

 アリシアさんとミーシャさんは俺に頭を下げると、すぐに車から飛び出していく。

 俺たちも車に乗っていては身動きが取れないので、ゆっくりと地面に降りた。

 

「しかし厄介だな。これでは全く敵が見えない!」

「ヤバいし、魔力探査も使えないし!」

「霧のせいだ! この沼を覆う霧は魔力を含んでいるのだ!」

「ひょっとしてそれ、魔法の威力も下がっちゃう?」

「ああ、半減する!」

「マジ!?」


 それで、魔法を得意とするエルフたちも大いに慌てていたという訳か。

 道理で凶暴なモンスターと恐れられるわけだ、対策がめちゃくちゃ難しいぞ。

 さっき香水とか言ってたけど、ここを通るエルフたちはこいつらをそもそも寄せ付けないようにしてるのかもな。


「……来ますっ!!」


 再びマキナが声を張り上げた。

 それと同時に、近くに立っていたタロス型の胴体が斜めに真っ二つになる。

 おいおい、おっそろしい切れ味だぞ……!?

 その切り口は、さながら鏡のように滑らかだった。


「左だ!!」


 アリシアさんがそう叫んだ瞬間、沼地が割れた。

 俺たちは全力で左へ飛びのくとどうにかその一撃を回避する。

 まるで透明の刃物が飛んできているかのようだ。

 アリシアさんやマキナは直前で空気の流れを読んでいるようだが、俺たちにはほとんど何も感じることができない。


「これじゃ、攻撃なんて当てられないし!」

「範囲攻撃とかできないんですか?」

「この霧の中では無理だな!」


 俺の質問に対して、悔しげな顔で告げるエルフ。

 それに同調するようにミーシャさんもまた頷いた。

 

「霧さえなければ……」

「何とかしてみましょう」


 ここで、マキナが思わぬ言葉を発した。

 何とかって、いったいどうするんだ?

 俺が困惑するのをよそに、マキナは先ほど切り捨てられた車の屋根を手にした。

 彼女はそれをがっしりと掴むと、そのままブンブンと振り回し始める。


「うおっ!?」

「風が……!」


 薄い木の板で出来た屋根を扇のように使い、風を送り始めるマキナ。

 レベル五百二十の圧倒的な力に物を言わせて、目にもとまらぬ速度で腕を振る。

 ――ブォンッ!!

 豪快な風切り音が響き、やがて周囲に風が吹き始めた。

 風邪はみるみるうちに強まっていき、大きな渦を巻き始める。

 すごいな、上級魔法並みの威力じゃないか……!

 そして――。


「霧が……かき消されていく……!!」


 吹き荒れる風によって、周囲を漂っていた霧が晴れていった。

 すると車から少し離れたところに、何か陽炎のようなものが見える。

 先ほどまでは霧に紛れてしまっていて、見ることが出来なかったのだが……。

 どうやらあれが、俺たちを襲っていたゴースト種の正体のようだ。


「見えた! ブレイズシャドウだ!!」

「撃てっ!!」


 魔力を込めた矢を次々と放つエルフたち。

 半透明の何かはそれをスルスルと回避しながら、こちらへ接近してくる。

 だが、霧さえなければこっちの物。

 待ってましたとばかりに、ミーシャさんが魔法を放つ。


「ファイアーショット!!」


 小型の炎球が次々とミーシャさんの手のひらから放たれた。

 密集して迫る炎を回避しきれず、ブレイズシャドウの身体が燃え上がる。

 ――ギェエエッ!!

 金属的な、およそ生物のものとは思えない叫びが響いた。

 だがそれに負けじと、今度はアリシアさんが駆ける。


「剣よ、閃け!! ホーリースラッシュ!!」


 ミスリルの刃が光を纏う。

 一閃。

 放たれた斬撃は蠢く半透明の影を両断した。

 ――ギェエエエエエエエッ!!!!

 先ほどとは比べ物にならないほどの断末魔が響き、黒い靄が噴出する。

 そして、どこからともなく現れた魔石がごろりと転がった。

 流石に大蛇様ほどの大きさはないが、かなりの大きさだ。


「……倒したのか?」

「まさか、力技で霧を吹き飛ばすとは。何という力だ……」


 驚くエルフたちをよそに、マキナは持っていた屋根を地面に置いた。

 そして転がっていた魔石を拾い上げると、興味深そうに観察する。


「レベル百五十程度はあったようですね。なかなかに厄介な相手でした」


 そう言うと、マキナは改めてエルフたちの方を見た。

 彼らのレベルはざっと見たところ四十前後と言ったところか。

 恐らく、普通に戦っていればブレイズシャドウには勝てなかったはずだ。

 彼らもそれがわかるゆえに、思いっきり渋い顔をしながらも言う。


「……わかった。我々の国まで案内しよう。ただ少し人数が多すぎるな、車に乗っているメンバーだけで来てくれ」

「わかりました、それで構いません」


 こうして、俺たちのことを警戒しながらも案内するエルフたち。

 そしてしばらく進んだところで――。


「あれが我らのエーテリアス魔導王国だ」

「おおぉ……!!」


 巨大な城壁を有する都市とその背後にそびえる巨大な樹木が、俺たちの目に飛び込んできたのだった――。


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