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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第29話 白骨沼の怪

 時は遡り、俺たちがエルフと遭遇する数時間前。

 俺は車の中から、森がみるみるうちに切り開かれていく様子を眺めていた。


「……道を作ってるとは思えない速度だなぁ」


 次々と木を切り倒していくタロス型、総勢百体。

 さらにそのあとを巨大な車輪を持つ車がゆっくりと進んでいく。

 今回の工事のために新しく開発した地ならし用ゴーレムのガイアだ。

 鉄で作られたその車輪は、伐採によって凹凸の出来た地面をあっという間に平らにしてしまった。


「マキナ、あとどのぐらいでエルフ領へ着きそう?」

「ムムルが言うには、あの村からエルフ領までは徒歩で十日ほどの距離だとか。これまでの我々の移動距離からするに、もうすぐエルフ領との境目にある白骨沼に差し掛かるかと」

「もうそんなに来たのか。思った以上に早いや」

「工事と移動はマスターたちが寝ている間も行っておりますので」


 これが、ゴーレムたちのある意味で最大の強みである。

 疲労を知らないため、一日中ぶっ続けで作業を続けられるのだ。

 おかげで道を作りながら進んでいくという無茶苦茶なことをしていても、普通に旅をするのとさほど変わらない所要日数で移動できている。

 もっとも、寝ている間も工事と移動を続けているので俺はちょっと寝不足気味だ。


「しかし、エルフか……。美形が多いって噂に聞くけど、どうなんだろうね?」

「さあ、私にはわかりかねます。ですが、マスターの手で完璧に仕上げられた私の方が彼らよりも美しいことでしょう」

「…………マキナ、なんでそんなに対抗意識あるの?」

「私は完璧な従者でなければならない存在です。美しさという重要な点において、どこの馬の骨とも知れない亜人族に負けるわけにはまいりません」


 静かな口調ながら、強い自負を感じさせる言葉であった。

 ……これは、強いエルフの美女が居たらメイドさんとして雇ってもいいとか考えていた俺の計画が読み取られたのか?

 大樹海に住む屈強な亜人族で、さらに美形が多いことで有名なエルフならば俺の要望を満たすメイド候補がいるかもしれないとか思っていたんだけど……。

 俺が内心で動揺していると、マキナはさらに畳みかけるように言う。


「ですが、多くのメイドに傅かれたいというのもマスターの夢。いずれは私の手でさらなるメイドをご用意させていただきますので、しばしお待ちを。それから性的な接触につきましても、いずれ可能とする方向で――」

「ああ、わかったわかった! それより、俺たちの街の名前って本当に『イスヴァール』でいいのかな?」


 これ以上話していても変な方向に行きそうだったので、俺は話題を切り替えた。

 するとマキナは、はてと首を傾げる。


「何か不都合でも?」

「いや、だってなんか仰々しくない? まだ五百人にも満たない小さな村だよ」

「その名をお選びになられたのは、マスターだったはずですが」


 いやー、あの時はちょっとお酒も入っててノリだったというか。

 ミーシャさんがこの名前を提案してきた時、神話の機械王国から取って来たとか言われてロマンを感じちゃったんだよな。

 それで思わず決定してしまったが、現状だと名前負けしている感が半端ではない。

 せめて一万人……いや、五千人規模の街にはしないとなぁ。


「……ヴィクトル様!! 前方に霧が見えてきました!」


 俺がくだらないことで悩んでいると、先行していたアリシアさんが戻ってきた。

 霧ということは、いよいよ例の白骨沼とやらに近づいてきたのだろう。

 さて、ここからが難所だぞ。

 霧によって方向を見失わないように、まっすぐに道を引き続けなければ。

 そのためにわざわざここまで道を引いて来たというのもある。


「……磁石も効かなくなってまいりましたね。これは想定内ですが」

「よし、測量しつつ進むんだ! とにかく道をまっすぐに!」


 こうして俺たちは、白骨沼へと入っていくのであった――。


――〇●〇――


「初めまして、俺はヴィクトル。この先にある都市、イスヴァールの領主だ」


 マキナによって見つけ出されたエルフたち。

 彼らに対して、俺はどうにか威厳を保ちながら名乗ることが出来た。

 イスヴァールというところで、少し噛みかけたのは秘密だ。


「イスヴァール? 初めて聞く名だな。どこの王の配下だ?」

「いえ、俺たちは六王には属しません。独立した勢力です」

「補足して言うならば、以前あなた方と交流していたコボルト族を糾合してまとめて配下に収めております」


 マキナがそう言うと、エルフたちの態度がにわかに変わった。

 知っている種族の名前が出て、いくらか動揺しているようだ。


「コボルトたちを配下にしただと? だが、連中の住んでいる地域はタイラントスネークの亜種が支配していたはずだが?」

「タイラントスネークとは、全長三十メートルほどの巨大蛇のことでしょうか?」

「ああ。そのとおりだ」

「それならば、我々が駆除いたしました」


 マキナの言葉に、ますますエルフたちは混乱の色を深めた。

 しかし、周囲に立っているタロス型やランスロット型を見回すとやがて納得したように頷く。

 どうやら俺たちに大蛇様を倒すだけの戦力があると納得したらしい。


「……目的はなんだ?」

「交易です」

「それだけの戦力を引き連れてか?」

「この沼は危険地帯だと聞きましたから」

「勝手に道を作ったのは?」

「この沼地はまだエルフ領内ではないと聞いています。道を引くのは自由です」


 マキナがそう答えると、エルフたちは何とも言い難い顔をした。

 この沼地はちょうど、エルフ領とそうでない場所の境界付近に当たる。

 道を敷いてしまっても、彼らに文句を言われる筋合いはなかった。

 そもそも、エルフ領にしても彼らが勝手に主張しているだけのものだし。


「……お前たちのような怪しいものを国に連れていくわけにはいかん」

「そうだ、侵略が目的だろう!」


 ある程度予想はしていたが、思った以上に警戒心が強いな。

 仕方ない、ここは例の手土産を渡して――。


「……危ない!」


 ここで急に、マキナが俺に覆いかぶさってきた。

 直後、車の屋根の部分が吹き飛ばされていく。

 な、なんだ……!?

 俺が動揺していると、エルフたちが叫ぶ。


「ちっ! こんな時に出やがった!!」

「沼の怪物だ!!」


 ムムルさんも語っていた沼の凶暴な魔獣。

 それがどうやら、俺たちに牙を剥いたようだ――。

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