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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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閑話 その頃の伯爵領3

 ヴィクトルに代わって、ヴィーゼルがアルファドの統治者となっておよそ三か月。

 かつて伯爵領内で最も住みやすいと言われていた街は、急速に変わりつつあった。

 引継ぎがなされなかったことに加え、グレイス商会が用意した人材が劣悪だったことによってありとあらゆる仕事が停滞。

 さらに極めて安い給料で雇われた役人たちにモラルはなく、そこら中で賄賂が横行するようになった。

 加えて最悪だったのが、グレイス商会に上手く言い包められたヴィーゼルにはそれを是正する気もなければ能力もなかったことである。


「クッソ、足元を見おって……!!」


 アルファドの街に拠点を構える交易商、サルマト商会。

 その会頭であるサルマトは、怒りに拳を震わせていた。

 街道で山賊の被害に遭ったため、すぐ騎士団に山賊討伐を依頼したのだが……。

 あろうことか、手当を貰わねば動けないと言われたのである。

 求められた額はなんと金貨五枚。

 一般的な使用人の給金の数か月分に及ぶ額である。

 サルマト商会としても、はした金とは言えない額だ。


「そもそも街道の治安維持は騎士団の仕事であろうが! その上、山賊討伐に金を取ろうとはどういう了見だ!」

「落ち着いてくださいませ、旦那様。あまりお怒りになられると体に障りますぞ」


 そう言って、冷たい水を差し出す老執事。

 サルマトはそれを受け取ると、一気に飲み干した。

 そして気分を落ち着かせるべく、ゆっくりと息を吐く。


「……いずれにしても、連中の強欲さには困ったものだ」

「噂によれば、ヴィーゼル様とラポルトは大きな商談を逃したとか。その腹いせもあるかもしれません」

「確か、白の塔の賢者がヴィクトル様の残したゴーレムを買い取りたいと申し出たという話だったか?」


 くず鉄屋に売り払ったゴーレムを買い戻すべく、ヴィーゼルとグレイス商会が街中の商人に大慌てで呼びかけをしたことは今でも語り草だった。

 結局、ヴィーゼルが手を回す頃にはほとんどのゴーレムは分解されてしまっていたそうだが。


「聞いた話ですが、あの時に賢者殿が申し出た買値は一体につきなんと金貨百枚とか」

「ほぉ、それは豪気な! 連中が腹を立てるのも無理はないな」

「ええ。私もあのゴーレムたちがそれほどの値打ち物とは思いませんでした」


 つい数か月ほど前までは、街を当たり前のようにゴーレムたちが歩いていた。

 あれらがまさか、金貨百枚の値が付くほどの価値があるものだったとは。

 身近にあっただけに、サルマトたちにとっては逆に信じることが難しかった。

 流石にヴィーゼルのようなくず鉄とまでは認識していなかったが、せいぜい金貨数枚程度のものだと思っていたのだ。


「ヴィクトル様が追放されたのは、サリエル大樹海だったか?」

「はい。実はそのことで、お耳に入れておきたい話がございまして」

「ほう?」

「ゴーレムを買いそびれた賢者殿が、大樹海に赴こうとしているようなのです。そのために今、優れた冒険者を集めているようで」


 ゴーレムのことを調べたい賢者が製作者に会おうとするのは当然の流れだろう。

 賢者の優れた魔法があれば、大樹海へ行くことも不可能ではあるまい。

 とはいえ問題は、ヴィクトルが生きているかどうかだ。

 強大なモンスターの多く住むあの魔境で、普通の人間が数か月も生存できるとは思えない。

 当然ながらそのことは賢者もわかっているはずなので、何かしら目算があっての行動だろうとは推測できるのだが……。

 

「ヴィクトル殿の生死について、賢者殿は何か知っているのか?」

「確実というわけではもちろんないのですが……」

「言ってみろ」

「大樹海までヴィクトル様を護衛した冒険者パーティがいるのですが、その一部が依頼完了後も残って護衛をしているようなのですよ。何でも、ヴィクトル様の家臣となったとか」


 老執事がそこまで言ったところで、サルマトの顔つきが変わった。

 彼はすぐさま執事に対して聞き返す。


「そのパーティの名は?」

「暁の剣でございます」

「あの者たちか……。残ったのは誰と誰だ?」

「弓使いのヘンリーを除いた全員です。今回の情報も、一人で帰ってきたヘンリーがもたらしたもののようですね」

「そうか……」


 腕組みをして、考え込み始めるサルマト。

 何度か護衛依頼を出したことがあるため、暁の剣の実力はおおよそ把握している。

 特にリーダーのアリシアはかなりの凄腕で、剣士として名が通っていた。

 彼女たちならば、ひょっとするとヴィクトルを守りながら大樹海でも生き延びているかもしれない。

 加えて、ヴィクトル本人も街から大量のゴーレムを持ち出している。

 これはもしかすると……。


「賭けてみる価値はありそうだな。さっそく支度をしてくれ」

「わかりました」


 そう言うと、老執事はサッと冒険者カードを差し出した。

 続いて、部屋の壁に飾ってあった巨大なハンマーを手渡す。

 それを受け取ったサルマトは、感触を確かめるようにぶんッと振り回した。


「よし! 久しぶりに腕がなるな!!」


 すっかり上機嫌になりながら、冒険者ギルドへの道を歩き始めたサルマト。

 かつてモンスターの蔓延る交易路を自ら切り開き、一代で富を築き上げた男。

 それが十年ぶりに武器を握り、商人から冒険者へと戻った瞬間であった。

 

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― 新着の感想 ―
流石に武器を握るのが10年ぶりじゃ賢者の求める優秀な冒険者ってのは無理じゃね?
[良い点] うーんこれは自力で街道の盗賊殲滅出来そうな強者
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