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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第116話 森に選ばれる者

「……ほうほう、これはまた。ずいぶんと」


 エルフたちの住むエーテリアス魔導王国。

 その大通りにある聖樹商会の建物で、俺たちは取引を行っていた。

 こちらが差し出した大袋にいっぱいの魔石を見て、会頭のルーファムさんは顔をほころばせる。


「最近、街の住民が新たに増えまして。彼らが積極的にダンジョン攻略を進めておるのです」


 サルマトさんがそう言うと、ルーファムさんは納得したように頷いた。

 落ち着いた様子だが、かなり機嫌がいい。

 これだけの魔石を売ればどれだけの利益が出るのか、目算しているのだろう。


「それは良いことで。ご希望はいつもの通り、食料品と布ですかな?」

「ええ。食料は肉類を中心に、布は質よりも量を優先で」

「かしこまりました。しかし、これだけの量となるといささか余りますな」


 顎を撫でながら、どうしたものかと思案するルーファムさん。

 魔導王国でも有数の規模を誇るらしい聖樹商会を率いる彼でも、これだけの魔石の対価となる物資を手配するのは大変らしい。

 まぁ、俺たちが値の張る魔導具でも輸入すれば話は違うんだろうが……。

 それに関しては、うちの方がいい品を作れるようになってるからな。

 あとは本でも買えるといいのだが、それについては国から規制されてるらしい。


「では、余った分の対価は情報でいただけないでしょうか?」

「……魔導技術の資料などはお渡しできませんよ。既に散々、危ない橋は渡っておりますから」


 窓の外をちらりと一瞥しながら、あらかじめ釘を刺してくるルーファムさん。

 ……あー、そりゃあの飛行船はな。

 借りパクしたエルフの飛行船を勝手に分解して作ったようなもんだし。

 それを黙認するだけでも、ルーファムさんには結構なリスクがあるはずだ。

 いざとなったら、知らぬ存ぜぬを通すつもりだとは思うけど。

 そのために俺たちも、飛行船の存在を直接彼には明かしてないわけだし。


「そうではなく、人に関する情報が欲しいのです」

「それならば、リフォルスの方が適正ではありませんか? 人材に関しては、あの者の方が顔が広いはずです」


 リフォルスさんというのは、イスヴァールに出入りしているエルフの行商人だ。

 主に街の宣伝などをお願いしていて、彼のおかげで街へ来てくれたというエルフも数多くいる。


「人と言っても、移民についてのことではないのです。これだけ言えば、ある程度は察していただけると思いますが……。このほど、我が街に豚人族の一団が来まして」

「先ほど言っていた、新たに増えた街の住民ですか」

「ええ。そしてその中には豚人王がおりまして。現在、彼の王を我々の街で保護しているような状態となっています」


 そう言うと、サルマトさんは俺の顔を見た。

 すかさず俺は深い頷きを返し、彼の言葉を肯定する。

 形式的なやり取りではあるが、事が大きいだけに領主の確認というものが重要なのだろう。

 話を聞いたルーファムさんの方も、たちまち神妙な面持ちをする。


「それで、今回は領主殿も来られていたわけですか。ご所望の情報というのは……王に関することですか」

「はい。わずかでも、何か話せることはありませんか?」

「ううむ……」


 ルーファムさんは深々とため息をついた。

 そしてテーブルに置いてあった紅茶を口に含み、そのまま腕組みをして黙る。

 何とも重苦しい沈黙がその場を満たした。

 やはり、王に関する事項は禁忌なのか……?

 額に嫌な汗が浮いてきたところで、ルーファムさんがぽつりと言う。


「王を決めるのは我々ではなく森です。それだけが、私の唯一知っていることです」

「我々ではなく、森?」

「はい。そして王に関することはできるだけ話してはならないというのが、この国の法となっております」


 我々ではなく、森……。

 かなり重要なヒントのようだけど、これだけだと何のことだかわからないな。

 やはり豚人王と関係性を深めて、本人から情報を聞き出すのが一番か。

 しかしそうなると、例のあのロンとかいう執事が口出ししてきそうだ。


「……んん?」


 ここでブーンと耳障りな虫の羽音が聞こえてきた。

 見れば、ずいぶんと大きなハエが円を描くように俺の周りを飛び回っている。

 ……こんな時に邪魔だなぁ。

 すぐさま潰そうとするが、ハエはひらりひらりと手をかわした。

 割と図体がでかいくせに、妙にすばしっこいな!


「おや? 虫ですかな?」

「ええ、すいません。騒いじゃって」

「妙ですな。この場所は虫よけの術式が施されているはず……」

「ヴィクトル様、失礼」


 ここで、マキナが素早くハエを掴んだ。

 そして手を広げると、手のひらの上に転がっている死骸をしきりに観察する。


「これはイメラルダ殿の虫かと。腹に魔法陣が刻まれています。」

「じゃあ、マキナについてきたのか?」

「ええ。……おや、ツヴァイの方も虫が騒ぎだしたようです」


 イメラルダというのは、マキナを危険視して監視している古代の錬金術師さんだ。

 ここ最近はおとなしくしていたはずだが、いったい何だろう?

 俺たちがはてと首を傾げると、マキナは言う。


「もしかすると、我々に何かを伝えようとしているのかもしれません。イメラルダ殿は虫を使った監視網をあちこちに構築しておりますので」


 これはもしや、街に何かが起きつつあるのか?

 差し迫る危機を感じて、俺はたちまち顔をこわばらせるのだった。

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