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領地のすべてをゴーレムで自動化した俺、サボっていると言われて追放されたので魔境をチート技術で開拓します!  作者: キミマロ


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第12話 小さな来訪者たち

「……何だこりゃ?」


 警報を発したゴーレムの元へ行くと、そこには何とも奇妙な光景が広がっていた。

 柵の外に大きな葉が置かれ、そこに果物がどっさりと置いてあったのである。

 その量ときたら、大人一人では運びきれないぐらいだ。

 明らかに人為的なものだけど、誰がいったい何のために?

 

「この不審物を見て、警報を発したようですね」


 平伏しているタロス型を見ながら、マキナが言う。

 なるほど、確かにこれは不審物ではある。

 何か妙なことがあったらすぐに連絡するよう命じてあるので、間違いじゃない。

 とはいえ、ちょっと拍子抜けな感じだ。

 戦闘を覚悟していたが、特にそうなる気配はなさそうだ。


「亜人族のいたずらか?」

「でも、果物を置いておくだけなんてよくわからないや」

「ひょっとすると、毒が仕込まれているのでは」


 果物を手にして、アリシアさんが真剣な顔でそう言った。

 こんないかにも怪しい方法で、毒物を渡そうとする考えがよくわからないが……。

 ゴブリンやオークなどの亜人族は、あまり頭が良くない。

 ひょっとすると、こんな雑過ぎる罠で俺たちが騙されると思ったのかもしれない。


「処分しておきましょう」

「ああ。念のため、ちょっと村から離れたところがいいな。エビルアイヴィーとか混じってたら大変だ」


 エビルアイヴィーというのは、最悪の雑草とも呼ばれる侵略性植物である。

 こいつが一本生えただけで畑が丸ごとダメになってしまう。

 見たところすべて普通っぽい果物しかないが、そういった類のものが混じってる可能性がなくはない。


「では……」


 さっそく、果物の山を持ち上げようとするマキナ。

 するとここで、どこからか声が聞こえてくる。


「んん……。いま、誰かダメって言った?」

「聞こえたね。ちょっと子どもっぽい感じだった」

「おいおい……! 面白くなってきたじゃねえか……!」


 背中の戦斧を抜き、構えを取るガンズさん。

 それに合わせて、アリシアさんたちも戦闘態勢を取った。

 俺は彼らの邪魔にならないよう、すぐに近くにいたタロスの後ろへと避難した。

 マキナもまた果物を置き、ナイフを取り出す。

 嫌な緊張感が周囲に満ちた。

 戦いになれない俺は、たまらず冷や汗を流す。

 そして――。

 

「……そこ! 誰かいるし!」


 真っ先に声を発したのはミーシャであった。

 彼女はすぐさま、近くの茂みに向かってファイアーボールを放つ。

 ――ボゥッ!!

 瞬く間に茂みが焼き尽くされ、中から白い何かが次々と飛び出してくる。

 驚いた、こんな近くにいたなんて。

 全く気配を感じなかったぞ……!


「何者!!」

「わっ!」


 すかさずアリシアさんが距離を詰め、切っ先を突き付けた。

 ……犬型の人?

 飛び出してきた二体の白い何かは、毛皮に覆われた犬のような姿をしていた。

 だが犬と比べると手足が長く、その顔つきはどことなく人間っぽい。

 おまけに服を着ていて、犬人とでも言いたくなるような姿だ。

 ……こんな種族、俺も初めて見るな。

 アリシアさんに剣を突き付けられ、怯える彼らに俺はゆっくりと声をかける。


「えっと、言葉は分かる?」

「わ、わかるよ」

「君たちは誰?」

「僕はコボルトのポポル。こっちは弟のロプルだよ」

「コボルト?」


 参ったな、聞いたことすらない種族名だ。

 俺が困ったように首を傾げると、すかさずマキナが言う。


「資料で読んだことがあります。穏やかな性質をした亜人の一種ですが、それが災いをして既に滅びた種だったかと」

「滅んでないよ! ラバーニャ帝国にやられたけど、生き残りがこの大樹海に逃げ込んだんだ!」

「その辺はひとまず置いといて。あの果物を置いたのは君たちだよね?」

「そうだよ! この間のお詫びがしたくて」


 この間のお詫び?

 いったい何のことだろうか、そもそもこの子たちとは会ったことすらないし。

 そう思っていると、ミーシャさんが言う。


「もしかして、ボア肉を持ってったのってこの子たちなんじゃない?」

「ああ、そういうことか!」

「ご、ごめんなさい! どうしても、我慢できなくて……」


 そう言うと、ロプルは申し訳なさそうに頭を下げた。

 ……驚いたな、あの事件の犯人がこんな小さな子たちだったなんて。

 俺たちが戸惑っていると、ポポルも深々と頭を下げて言う。


「ロプルを許してやってください! 僕たち、最近はあんまりお肉を食べてなくて……。それで、焼肉の臭いを嗅いでつい……」

「その果物は、森で採ってきた美味しい果物です! それで何とか、お肉の代わりにしてください!」

「…………とのことですが。ヴィクトル様、どうしますか?」


 剣を突き付けていたアリシアさんが、心底困ったような顔で俺に尋ねてきた。

 彼女としても、このような事態は完全に想定外なのだろう。

 ハの字になった眉から困惑の色がはっきりと伺えた。

 俺はとっさにミーシャさんとガンズさんに目をやるが、彼らもまた困った顔をしている。


「この村の領主はヴィクトル様だ。俺たちはその判断に従う」

「あたしも、判断は全部任せるよ」

「…………いったん、この子たちをお客様として村に入れよう。そこから先は詳しい話を聞いてから対応する」


 俺がそう言うと、すぐさまアリシアさんが剣を引いた。

 彼女はポポルたちのことを警戒しつつも、いったん剣を鞘に納める。

 ミーシャさんとガンズさんも、それに合わせて武器をしまった。


「では、私はお茶の準備をしてまいります」

「うん、頼んだよ」


 こうして俺たちの村は、初めて外からの来客を迎えるのだった。

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