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入舸沙月の妖隠避録  作者: 朝倉春彦
弐章:禁忌を恐れた日
75/300

75.キリが無いのであれば、強引にでも区切りをつけた方が良い。

キリが無いのであれば、強引にでも区切りを付けた方が良い。

終わりが無い物に何時までも付き合ってられるほど、私は出来る人間じゃない。

短く区切って次に進むのが性に合ってるんだ。


「どこに隠れてたんダ。コノ連中」


ヤマシロの言葉と共に聞こえてきた足音は、すぐに倉庫の外に大きく聞こえてきた。

ぞろぞろと集まる武装した鬼。

オレンジ色の光が差し込んだ部屋の中、彼らの体が妖しい影を描く。


「ゼッタイ、イキテ、カエサナイ」


ヤマシロはそう言いつつも、集まりだした鬼の中に紛れていった。

一番、図体もデカく、すばしっこい鬼だというのに、彼はまだ、何も仕掛けてこない。


「ハッ、悪代官カ。所詮、蕎麦シカ打てない鈍らか」


ヒュッと刀の血を、タンバの血を拭う。

そして、その切先を、私達を囲んだ鬼達の方へ向けた。


「モウイイ」


右手で刀を持ち、左手を鞘に当てる。

その左手を、すっと右手の袖に入れて、取り出したのは"赤紙の呪符"。

横に居たモトの、息を呑む音がハッキリと聞こえた。


「別に、私達はココをどうこうしようって気は無いんダ。見つけられれば勝ちサ」


呪符に念を込める。

薄黒い靄を放つ呪符。

周囲の鬼達は騒めきたつ。

やがて、小柄な鬼が雄たけびと共に突貫してきた。


一閃。


金棒を振り落ろす隙も与えない。

真っ二つに"千切れた"胴体。

即座に金色の光に包み込まれて"隠される"。


事の切欠には、この一瞬があれば十分だった。

手元の、薄黒い靄を纏った呪符を手から放す。


ヒラヒラと舞い降り、それが床に付く前に蹴りだして一歩前へ。

モトも遅れず付いてくる。

その先に鬼が2体、共に、私達の姿を見据えて恐怖していた。


構えた鬼。

背後で派手な爆発音。

鬼に何もさせずに斬り捨てる。


「流石に、アンタ方、数が多すぎるノヨ」


一言。

そう言って背後へ、見向きもせずに足を蹴飛ばす。

右手には血濡れた刀、左手でモトの腕を掴みあげた。


「うぉ!」

「ゴメン」


黒い靄が起こした爆発。

それは床に大穴を開けていた。


オレンジ色の光が差し込まぬ闇へ、躊躇することなく飛び込んでいく。

今の私は妖も同然、闇が"本領"だ。


落ち際、オマケに"真っ赤な靄を纏った"、"赤紙の呪符"をもう一枚。

頭上に投げ、ヒラヒラと舞ったそれは、やがて強烈な音と閃光をまき散らした。


耳と目を一瞬失い、その間、少しの間の浮遊感。

耳も目も戻ってきて、飛び込んだ先を見やれば、足元には何も無い、ただの床が見えた。


着地。

ちょっと遅れて降って来たモトを抱える。

そのまま周囲を見回せば、私の目はほんの少しだけ伏せられた。


「人だ!」

「ああ!助けてくれ!」

「おい!そこの人!おい!」


周囲に聞こえるのは、妖の声じゃない。

落ちた先、そこも、どうやら倉庫の様で、小さな窓からオレンジ色の光が差し込んでいた。

声量は徐々に増して行き、靄と埃が晴れていくにつれて、周囲の光景が鮮明になっていく。


「ナルホド、上は"運び人"の表の顔だったわけだ。マダ、ちゃんとした荷だったし」


穴の上から聞こえる喧騒を他所に、倉庫の四隅に所狭しと並んだ"ケージ"に目を向ける。

"現実"で言えば、その中に猿やら動物が押し込まれているであろう光景。

"異境"のそれには、小汚い人間が押し込められていた。


「うっ…」


酷い空気。

一瞬のうちに気分を害したモトに肩を貸す。

吐かないだけでも褒めてやろう。


「聞いてんのか!早く!奴等が来る!」

「いや…子供だぞ。あれも人じゃないんじゃ…」

「"男の方は"人だろ!女は化け物だが」


外野の声に、ほんの少し奥歯を噛み締める。

口角を吊り上げつつ、呪符を取り出すと、モトの首筋に貼り付けた。


「出よう。騒ぎを起こせば、奴等も暴れない」

「あ、ああ…うっ…えええ」


青褪めたモトの顔。

幾分かマシになったが、辛いものは辛いだろう。

助けを乞う人の声、その視界の中には、声も出せず、固くなって動かない者も居た。


「壁デモ打ち抜いて」

「やめろ!その先は隣家。狭いんだ。距離」

「チッ…出口はどこサ」

「え?あっ、見当たら、ない?」


もう一度舌打ち。

周囲を見回しても、牢屋が積み重ねられた倉庫から抜け出す道は見当たらない。

その最中、"外野"の声は更に高まっていった。


「無視するんじゃねぇ!早く開けろや!」

「化け物め、必ず殺してやらぁ!」

「おい!無視してねぇでこっち向け!」

「狐女!ソイツも攫ってきたんだろ。テメェ、タダで済むと思うな!」


檻の中の"動物"には、小汚いのに混じって、"素が汚い"連中もいるらしい。


「人に化けて攫いってるんだろ」

「俺等と違って、そのガキ、女々しいな。テメェの趣味はソイツか?え?」

「男!その女に食われた感想でも言ってみろよ?」


ガタガタと揺れる牢屋。

肩を貸したモトの顔色は徐々に元の色を取り戻す。

その横で、私の脳は、沸騰寸前。


「女狐、お前は、人じゃねぇ!人に化けた、紛いもんだ!くそったれ!」


誰のものかも分からない声に、私の中で何かが切れる。


「アア、ワタシ、ヒト、ジャナイ。イマダケネ!」

「アア、ソイツ、ヒト、ジャナイ。コノサキモ…」


ボソッと呟いた声、その声に、何者かの声が被さった。

刹那、ギターの音色と共に、空を斬る様な音が耳に届く。


「!…沙月!後ろだ!…」


お読み頂きありがとうございます!

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よろしくお願いします_(._.)_

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