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全テをハ壊スル者  作者: 南十字
五章 無法大陸
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九十話 新時代の始まり

アニメ見てたら少しやる気出ました。

次の投稿はいつになることやら(他人事)

 天変地異に人々が混乱し、嘆き悲しみが世界を包み込む。影響は火山が噴火したその大陸に限らず、海を隔て裏側に存在する国にも及んだ。火山灰は陽光を遮り、南国の島々ですら雪がチラつく。一方で火山の付近は灼熱の地獄と化し、地中より噴出した莫大な量の魔力を求めて魔獣が日々闘争を繰り広げている。人間が住むことができる土地はごく僅かになってしまった。しかし、不謹慎にもこの状況を喜ぶ者が各地に居た。


「はっはっは!今までは国に抑えつけられて細々と事業を拡大していたが…これからは無法の時代!力あるものが地位を得る暴力の世界になる!!」


 あるものは壊滅した小国を占領し、無法国家を作り上げた。


「信じる者は救われる…えぇ、神は私たちをいずれ救ってくれます…なんて、思考を放棄して金を差し出してくる哀れな愚図共め。精々私の養分になれば良いのだ。」


 あるものは不安を利用して弱者から金銭を搾り取る。


「この力があれば…!あの、あの男と思う存分殺し合える!魔法の真髄を!もう一度この目に!」


 あるもの…黄泉の帝王スクレットはマグマから溢れ出る魔力をその身に蓄える。時代は転換点を迎えたのだ。



―――――――――――――――――――――――

 天使ラファエルとの戦いから五ヶ月が経過した。戦いの後、女神の国へと帰還したまでは良かったが、それからが問題だった。噴火した火山と連動して各地の火山や断層が活動を始め、街は壊滅状態となり被災者の対応のために教会は大慌てである。


「随分と景色が変わっちまったな」


 霊華が窓の外を見る。分厚くドス黒い雲が仄かに赤く染まる。教国の至る所が割れ、そこからマグマが溢れ出てきたのだ。お陰で国土の半分ほどの面積が焼かれてしまった。五ヶ月経った今でも地震と新たな地割れが発生し、ジワジワと国が蝕まれているのだ。


「えぇ、あんなに美しかった街並みも、あんなに幸せそうだった信者達も、今では暗い顔をしています」


 口端をキュッと閉めて眉間に皺を寄せるパグラス。彼は現在の教国で事実上の指導者として身を置いている。前任の神官長達は災害によって死亡したり、離教して出ていってしまったりしたため、今は彼が神官長代理として指導を任されているのである。


「元々、この宗教は女神様非公認の宗教であり、ただ、貴方様を応援する為の集団だった。謂わば、ただの同好会のようなものだったと言い伝えられています」


「そうだな…」


 霊華はため息をついてソファに深く腰かける。


「それがこの大陸一大きな宗教になるとは…なんとも滑稽な…失礼しました。すごい話ですよね」


「いや、いいんだ。間違いじゃない」


「…この世界の状況では、神に縋る者はより依存し、神を疑う者はすぐに立ち去ってしまい、信者数も全盛期の二十分の一以下になってしまいました。最初に出ていった神官長はあろうことか邪神教に入信し、女神様に反旗を翻しました。なんとも嘆かわしいことです」


 パグラスは目頭を押さえてやれやれと首を振る。重苦しい空気が漂う中、霊華の隣に座っていた藤也が口を開いた。


「師匠、話は変わりますが…これからの活動方針はどうしますか?みんな傷も癒えて随分動けるようになっています」


「そろそろか…これからの方針だが、邪神教の痕跡を追い、天使を討伐する。少年…ディースの話によると、天使はあの一体だけではないとのことだ。既に一体は撃破されているが、少なくとももう一体はいる。もしかしたら、あの強さのやつが何体も現れる可能性がある」


「一体一体が今の師匠を上回る強さ…正直厳しいですね」


 ラファエル相手にあれほど苦戦して撃退しか出来なかった。現状の最高戦力は霊華であるが、全盛期から衰えに衰え、今では外部からの魔力供給が無ければただの少女と変わらないほどの弱体化である。


「あぁ、こんな状態で申し訳ない」


 霊華の謝罪に藤也は慌てて訂正しようとするが、事実は事実であり、どんな言葉も綺麗事にしかならないと諦めておずおずと引いてしまった。


「まあこうやって話していても進まない。講堂に主戦力を集めてくれ。今後のことを取り決める」


 数分後、講堂に猛者達が集合した。

 つい最近A級にランクアップし、その風魔法で霊華と共闘した魔法剣士、ナレス・デンルーナ。

 竜人族の若き戦士であり、水魔法と地面魔法の二つの魔法を得意とする。未だその本当の実力は秘められている。テティス・ドラゴニール。

 砂鯨の子であり、成長の途中の可能性の塊。得意の地面魔法は攻撃だけでなく、止血にも使える心優しき少女。アン。

 異世界からの召喚者かつ勇者の器。手にする武器は斬ることに特化した日本刀。霊華とテティスの修行により、ラファエルに対抗しうる実力を持つ。桐崎 藤也。

 遥か昔、邪智暴虐の魔王を討ち滅ぼし、現人神として祀り上げられている麗しの女神。操る火炎は魔力を燃やし、自らの力とする。女神・霊華。

 これらのメンバーを中心に、教国のギルド支部から参戦したギルド支部長、ガルド・バン・ギビフス、ギルドの冒険者の中でB級以上のベテラン達。

 これらのメンバーで会議が始まった。


「まず、私からこれからの方針を話させてもらいます」


 女神である霊華が立ち上がる。


「この大陸…いや、この世界は未曾有の災害により壊滅状態、法など存在せず自称国家の集団が多く発足しています。しかし、それらは前時代の国に抑圧されていた社会のはぐれ者がここぞとばかりに台頭しただけのものです。女神として、彼らを見逃すことはできません。しかし、それ以上に邪神教の影響が大きく、この大災害の元凶ともなった天使、ラファエルを討伐しなければ再度同じような災害が起こるでしょう。

 そこで、私達は大きく三つのグループに分かれて行動をしようと考えてます。まず、この国に残り被災者を保護しつつ国防にあたるグループ。次に、各国を巡り、治安維持をしつつ、救済の手を差し伸べるグループ。最後に、邪神教の痕跡を辿り、天使を討伐するグループです。人員については話し合いで決めます」


 霊華の説明が終えると、ギルドから来た冒険者達が互いに目配せし合い、何か言いたげな様子だった。すると、冒険者を代表してか、教国のギルドの支部長であるガルドがスッと挙手した。


「発言失礼します。ギルド支部長のガルドと申します。女神様、説明ありがとうございます。一通り理解しての意見なのですが、この活動をする上で私達ギルドにメリットがあるようには見受けられないのですが?もしや、無償で助けてくれと言う意味でしょうか?」


「…そうですね。私達教会も国の復興、被災者の保護などで物資は枯渇。報酬に回せるお金や物質などはありません」


 パグラスがそう説明すると、冒険者達が一斉に騒ぎ出した。


『俺たち冒険者を舐めているのか?』


『話になんねえな。慈善事業とは違うんだよ』


『あーあ。やってらんない』


 災害が起きる前に同じようなことをしても、帰ってくる反応は変わらないだろう。至極当然の反応である。


「あー静粛に。確かに、一見ギルドに利益はないように見えるでしょう。しかし、見方を変えるとどうでしょうか?活動の一つである治安維持をしつつ被災者支援を行うことは、今の世界でギルドの信用を得ることに繋がります。国が国として機能しない中で、世界に根を張り巡らせるギルドという組織が人々を救い安然を取り戻すことができれば、ギルドは世界機関として新時代の法治組織の地位を確立できるでしょう」


 なんとも詭弁である。しかし、絶対に無いとは言えない微妙なラインが冒険者達を揺さぶる。暫し思案していたガルドは、霊華をじっと見つめる。


「…神官長殿、この活動に際して教会から支援物資は出ますかね?」


「えぇ、報奨金などは出せませんが、救済の為とあれば支援は糸目をつけません」


 それを聞くとこくりと頷き、笑顔で手を差し出した。


「女神様、私共ギルドはこの活動に参加させていただきます」


「助かります。貴方の腹の底はどうあれ、人々を救済できることに変わりありません。お互いに協力し、世界に平和をもたらしましょう」


 2人はぎゅっと熱い握手を交わした。それを見ていた冒険者はなんのことかわかっていない者や、大体理解した者、何が何でも反対しようと不満げな者と様々な反応を示していた。


「では、治安維持は冒険者の皆々様に一任しましょう。残った国防と邪神教についてですが、私とアンはこの国に残り国防をします。藤也、少年、ナレス、テティスの四人は邪神教を追ってください」


「わかりました。師匠、必ずや成果を持って帰ります」


「くれぐれも無理はしないように」


 こうして会議は無事終結した。ギルドの行動は迅速であり、教国支部から全世界のギルドに治安維持に尽力する旨が周知された。ギルドは一枚岩の組織では無いが、殆どのギルドで治安維持と被災者支援が進められた。

 邪神教捜索班である四人は翌々日、旅立ちの一歩を踏み出したのだった。

 読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字などがありましたら教えて頂ければ幸いです。

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