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全テをハ壊スル者  作者: 南十字
四章 邪神の力の解放
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七十一話 異界の創造と勝利

大変遅くなりました。すみません

 世界と言う箱庭を管理して数万年が経ち、ある時時間は起きた。やっと世界が安定し、動植物及び人間の種が確立した時に、ベリアルの妹である天使四人のうち一人が世界に向かってとあるものを投げ入れた。ベリアルはそれを見た瞬間に咄嗟にその天使を突き飛ばしたが、時すでに遅く、それは世界に投げ込まれてしまった。


「貴方!何したかわかってるの!?神様がせっかく私達に管理を託したこの尊い世界を貴方は…!」


 すかさずに妹を叱るがどうも反省の色は見えず、後から他の妹達が集まって来た。その内の一人、ラファエルが倒れている天使の近くにしゃがみ込む。


「ベリアルがミカエルを虐めた。ミカエル。大丈夫?」


「うぅ…痛いよ…世界を眺めていた時にベリアルが思い切り突き飛ばしたんだ」


「それは大変だ。すぐに神様に報告しなくては」


 ラファエルはそう言って立ち上がり、踵を返して立ち去ろうとした。そんな光景を前に、ベリアルは立ち尽くしていた。あまりにもお粗末で下手っぴな()()が目の前で行われて、かつ妹全員が自分を陥れようとしている事実が受け入れられなかった。

 それからは散々であった。父である創造神は考えた顔をしながら妹の一人に連れられてベリアルの前にやってくると、床に無様に項垂れる姿を目にした瞬間にうすら笑みを浮かべてからしゃがみ込んだ。


『君には先に生まれた身として後輩を健全に導いて欲しかったのだが…教育を間違えたかな?』


 神はそう言いながらも、後ろで笑うラファエルをちらりと横目で見た。その瞬間、ベリアルは理解した。父はベリアルが妹達に陥れられているのをわかっても尚、彼女らに乗ってあげたのだ。

 それから神はベリアルに呪いをかけた。それはベリアルが最も愛する人間を傷つけなければ死んでしまう、血を欲するという内容の呪いである。更に、実験と称して太陽光を弱点としたり、銀が特効となるような体質にしたりとやりたい放題であった。


『それじゃあ頑張りたまえ。私の卑しい失敗作よ』


 そして神はベリアルを地上へと堕天させたのだ。遠くなる父の後ろにはこれでもかと晴れた笑顔を浮かべる妹達。その走馬灯は奇跡的に今の落下している状況と繋がるのだった。



――――――――――――――――――――――――――



 スクレットの頭部が吹き飛ばされた時、その直後にネールナルはミカエルの背後に回っていた。いつのまにか氷魔法で創り出した人の丈程ある槍を風魔法で打ち出す。


「騎士のくせに小癪な手を使うね」


 ミカエルは振り向きながら手を払い、ファンネルを操って槍の軌道を逸らして逃れた。


「騎士は民を守る役職だ。たとえ鬼畜な手であってもそれを使うのは当然だ」


 ネールナルは予め創り出した幾つかの氷の礫を風の渦に巻き込んで放つ。礫を巻き込んだ風の渦はミカエルに向かって真っ直ぐに突き進み、ミカエルを覆い隠してしまった。


「……」


 その様を見ていたネールナルだが、その表情からは油断は一切見られない。すると、やはりと言うべきか、風の渦が急に四散して消滅して中から無傷のミカエルが姿を現す。

 だが、想定に想定を重ねて、ネールナルは策を幾つも用意していた。


「君たちは無力だよ…」


 そこまで言った所でミカエルの言葉は途切れた。なぜなら、下から強烈な衝撃を喰らって吹っ飛んだからである。


(視界外からの攻撃…なぜ気がつかなかった…?)


 困惑する中で上空を見ると、腐食した死体の塊が打ち上がっていた。恐らくこれにぶち当てられたのだろう。


(純粋な死体を射出しただけだから察知できなかったのか…!)


 ミカエルは魔力だけでなく、魂までも察知することができる。だが、魂も抜けた肉塊を魔力強化も無しに投げれば察知は微弱にしか反応しない。


「やってくれたな…アンデット!」


 すぐに体勢を立て直そうとした瞬間、ミカエルの胸から下が突然凍りついた。


「『氷魔法•氷裏威ッ戴(ひょうりいったい)』秘技はまだ続いている」


 ネールナルはそう言いながらミカエルの身体から手を離した。次第に全身が凍りついたミカエルは、重量に従って自由落下していった。


「地上は貴方の領域です。目覚めて下さい」


 それはブランシュに向けられた言葉だった。地に落ちたブランシュは自身が生み出した血溜まりを利用して即座に回復し、落下してくるミカエルを見据えた。


「血に飢えし凶弾よ。大敵を撃ち貫け。『血液魔法•血の散弾(ブラッドショット)』」


 そう魔法を唱えると自らの前方に血液が集まり、ミカエルが落下して真正面に来るタイミングを見計らって発射した。血液はさながら散弾銃の様に拡散し、ミカエルの腹に吸い込まれていった。だが、それらが風穴を開けることは無かった。

 ミカエルは着弾の瞬間にファンネルで弾を防いだ。そして、氷を砕いて脱出したのだ。


「これはヒヤッとしたね。愛機も壊されたし、不愉快だ」


 ミカエルは苛立ちを露骨に表現しながら、ボコボコに散弾の跡がついたファンネルを雑に投げ捨てる。


「もう遊ばない。目的はただ一つ、器の回収だ。連れてきた人間は器に殺された様だし、こっちも余裕が無くなったよ」


 そう言いながら両手を大きく広げて手首を上に返すと、突然地響きが皆を襲う。


『これは…っ!』


 龍王は回避行動を取ろうと大きく羽ばたくだが、身体が持ち上がった瞬間に儚くも地面から伸びてきた何かに打ち上げられてしまう。そして、それはネールナル達も同じだった。


「『天地創造•神の理•異界天象』」


 ミカエルが放つその力は、異界の物体を再現して出現させるものである。本来は異界の恵みを下界に分け与える夢の様な力であり、今までも新たな技術や様式をこの世界にもたらすことができた。だが、今回は別であり、その構造物は周囲に存在する有象無象を巻き込みながら空高く伸びた。全てが生え揃ったその光景は…さながら日本の都会の景色の様である。


「地上の民達よ。私が今恵んだものは異界の構造物、『ビル』である。天にそびえるその姿は、これからの世界の盛り上がりを表しているだろう」


 天使の言葉はとても皮肉めいており、声の感じも人を小馬鹿にしているようである。ネールナルはビルに持ち上げられて屋上の室外機の上に倒れながらそれを聞いていた。


(全身が痛い…今まで蓄積されたダメージも含めて身体がイカれている…)


 ネールナルの頭の中には敗北の二文字がハッキリと浮かんでいた。諦めていたその時、一棟のビルが爆発し、ポッキリと二つに折れる。


「良い加減にしろ!その力は民が困難に直面した時に行使するものだ!決して民を脅かすものではない!」


 土煙の隙間から激昂したブランシュが見える。ブランシュは落下したビルの上半分を血液の池に沈めると、血を操って力任せにぶん投げた。それは真っ直ぐミカエルに飛んでいく。ミカエルは手を前に伸ばすと、『劫火』を生み出してビルを融解させた。そしてそれだけでは飽き足らず、天から火を降り注ごうとする。だが、それは龍王の手によって阻まれる。龍王は天使に鞭の様な尾を叩きつけ、ビルの壁面へと吹き飛ばす。


『天使と言えど鬱陶しい。我の邪魔はしないでもらいたい』


 龍王はそう言い放ち、顎門を大きく開けて火炎ブレスを見舞わせた。劫火のそれに負けずとも劣らない火力を見せるが、天使はなんと炎の中で剣をぶん投げた。剣は龍王の顎門目掛けて炎の中を真っ直ぐ突き進む。鉄をも溶かす灼熱だが、特別な素材で作られているのか、赤熱するだけに止まっている。龍王は間一髪で避け、横から回り込んでミカエルを鋭い爪で切り裂く。

 だが、そこにミカエルは居らず、コンクリートが砕ける感触だけがあった。ミカエルは龍王の背後に回っており、自らの周りに何本かの剣で円陣を作っている。


「『操剣魔法•果敢剣霖(かかんけんりん)』」


 その魔法を言い終わるか否かのタイミングで、ミカエルの腹から血液の光線が生えてきた。勿論、生えてきたわけでは無いが、さながらその様に見えたのだ。

 ぎこちない動きで後ろを見ると、血液魔法を放つブランシュが凄まじい形相で睨んでいた。


「この…天使である僕に…!」


 ミカエルに対する恨みを言いたかったのだろうが、多対一の争いではそれは果たせなかった。


「『風氷魔法•フリードウィンド』」


 ネールナルの放つ魔法により、カチコチに凍りついたミカエル。そして氷を砕く暇も与える事なく肉薄し、剣で真っ二つに切り裂いた。


「『風氷魔法•氷裂(ひょうれつ)』」


 瞬間的に氷全体にヒビが入り、粉々に砕け散った。そこには天使の姿は跡形も残っていなかった。

 読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字などがありましたら教えて頂ければ幸いです。

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