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全テをハ壊スル者  作者: 南十字
四章 邪神の力の解放
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七十話 共闘

 遅くなって大変申し訳ございませんでした。

 年末の前にインフルエンザに罹り、更に年末年始の多忙で小説に気が向いきませんでした。

 なお、先日の石川県の大地震の被害には遭っておりません。被災された方々が安心して過ごせるように、日常が少しでも早く取り戻せる様に願います。

 莫大な量の魔力が周囲を威圧する。ブランシュが両の手のひらを合わせて広げると、血液が糸を引いて伸びた後に糸の一本一本から幾つもの鋭い棘が放たれた。


「甘いね」


 ミカエルは剣を一振りすると、前方に光の十字架が五本、剣のような切先を相手に向けて放たれる。光の十字架は血液の棘を浄化しながら直線的に飛んでくる。ブランシュは半身になって避けながら凝縮した血液を高速回転させて発射する。


「『旋血』」


 回転する血液は安心力で薄暗く広がり、刃のように対象を切り裂く。その切れ味は痛みを与えない程である。だが、それも当たらなければ意味が無い。ミカエルが光のレーザーで血液の刃を貫き一瞬で蒸発して無に帰した。


「やっぱり甘い。君は堕天してから何をしてたんだい?力を失ったとは言え、それでも屈強な身体だ。それなのにこんな規模の小さな戦い、飽き飽きしちゃうよ」


「そうか。刺激をお望みなのだな」


 ブランシュはさも不機嫌な表情でそう言い返すと、血液を手のひらから垂らし始める。


「あははっ!笑うしか無いですね!」


「どんな物量だよ!」


 スクレットとネールナルは戦いの行方を地上で見守っていたため、空から降ってくる膨大な量の血液の被害者となる。空を覆うかのように頭上から降ってくる血液を、片方は氷で固めて回避し、もう片方は死体の傘を作って猶予を生み出す。


「チッ!直撃は回避したがそれでもっ!」


「血の津波とは粋ですね〜!」


 ネールナルが血の津波から流れる横で、スクレットは血液の波を骨で作り上げた板で波乗りをしていた。


「大変そうですね!先程は共闘していましたが、それも仕方なく。あの天使は吸血鬼が相手している、貴方に相手する暇ができましたよ!」


 そう言いながら魔力を放つと、ネールナルの前方の地面から腐敗した死体の腕が生えてきた。


「っ!?」


 ネールナルはスクレットと血液に気を取られ、死角からの悪戯に気がつかなかった。足首を取られると転んでしまうのは当然のことであり、ネールナルは濁流に飲み込まれた。


「あはは!哀れ哀れ!でもこれだけじゃあ…」


 だが、血液が凍結しはじめ、砕けると同時にネールナルが飛び出す。


「死ぬわけありませんか!」


「死ねたら良いのだがな。『氷魔法・クレバス』」


 剣を下段から振り上げると血液が直線状に凍り、スクレットの足元まで凍りついた。直後、巨大な亀裂が走って落下する。


「落ちるのは私の方ですか!」


 スクレットは怖けずに落下しながら魔法を使い、腐った巨大な鷹の死体を操って自分を掴ませて飛び立つ。


「今宵の天気は、曇り時々血液(あめ)でございます」


 そう言って笑みを浮かべた瞬間、スクレットの乗る鷹に血液の棘がぶっ刺さった。あまりにも棘が大きいため、刺さった後に二つに分かれて落下する。


「な…っ!なんですかコレは!?」


 スクレットは落下しながら周囲の状況を見ていた。血液の津波が通った後には湖のような血溜まりができ、どうやらブランシュが自在に操って物体を沈めている様だった。


「くっ…沈む!」


 足を取られ、膝丈まで飲み込まれるネールナルだったが、氷で血液を固めて操るのを妨害し、そのまま風魔法で脱出することができた。


「これは…地獄か?」


 ネールナルもスクレットと同じように空中から様子を確認できたが、骸骨やゾンビ、信者や氷の兵士が踠き苦しみながら沈む様子は地獄以外の何ものでもなく、言葉では到底表すことができない恐怖心のような何かに駆られた。


『血液か。悪趣味だが利用してやろう』


 アンデットドラゴンと相対していた龍王は血液の湖の性質をいち早く理解すると、アンデットドラゴンがブレスを吐こうと溜めをつくった瞬間にその頭部を鷲掴みにして地面に叩きつけた。


『グアァァァァ』


 掠れた声で叫ぶアンデットドラゴンは身体の側面から徐々に血に飲まれていき、とうとう羽と頭の一部のみが露出するだけになってしまった。


『次はお前だ。黄泉の帝王』


 龍王は心の臓から震えるほどに恐ろしい目でスクレットを睨め付ける。鷹を壊されて落下していたスクレットは別の死体を出して血液の底無しの湖の上を渡って難を逃れたようだ。


「おや!先輩様、お手柔らかにお願いしますよ」


 スクレットも受けて立つ気だったのだろう、飛行能力のあるアンデットの群れを呼び寄せて臨戦態勢となる。しかし、ミカエルによって邪魔されてしまった。


「『劫火』」


 その一言で地上は炎の海と化した。空から大量に降る火炎はネールナルもスクレットも、ブランシュや龍王にも襲いかかった。


「っ!『氷魔法・スノードーム』」


 ネールナルは頭上に氷の屋根を創り出して防いでいるが、スクレットはなぜか一見何もせずに堂々と立っている。


「フフフ…魔力の密度を上げれば身体を守る事も容易い」


 どうやら、密度を上げた魔力を身体の周りに纏って防御しているようだ。


「コレなら動きを阻害されずに動けますね」


 スクレットは頭上のミカエルを睨むと大きく跳躍し、天使の僅か上へと飛び出す。空に手を掲げると、ミカエルの頭上で死体が集まり、逆さの円錐状の塊ができあがった。


「『アンデット解放・羅華天(らっかてん)』」


 手を振り下ろすのと同時にその塊はミカエルを襲う。しかし、ミカエルはノールックで劫火を死体の塊にぶつけて爆発させてしまう。

 辺りに飛び散る腐肉。だが、スクレットにはまだ策があるようで、悪戯な笑みは未だに顔に張り付いたままだ。


「『アンデット集結・死者の逆さ十字(クルシファイド)』」


 握り潰すように手を握ると飛び散った腐肉が再度集結し、逆さ十字となってミカエルを磔にして晒し上げた。


「吸血鬼さん。今が狙い目ですよ」


「フン、好かないがよくやってくれた。『タナトス・アクティノボロー』」


 不機嫌そうにしながらも、ブランシュはミカエルに向かって血液のレーザーを放つ。血液のレーザーはミカエルの脳天を撃ち抜く軌道で突き進んだ。だが、その直前に割って入った障害によって塞がれてしまった。


「これは…なんだ?」


 目の前で浮遊する異質な物体。魔法が当然のものとなったこの異世界では明らかに不自然である(くろがね)の浮遊する物体。いわゆるファンネルとも呼ばれるそれは、ブランシュの放った血液のレーザーを受け止めるだけで無く、吸収してお返しとばかりにレーザーを四方八方に乱射した。


「『血液魔法』!!」


 ブランシュはすぐさま魔法を唱えて防御体勢に入ろうとするが、一足遅かった。レーザーはブランシュを滅茶苦茶に貫き、更に流れ弾が辺りの全てに襲いかかった。

 各自防御体勢に入るが、レーザーの威力は元の魔法を超えており、岩石をも余裕で貫くそれを防ぐことは容易では無かった。


「…やっぱりこの道具は優秀だね。魔法と科学の結晶だから当たり前か」


 ミカエルは目の前の惨状を満足そうに見下ろし、鉄のファンネルを愛おしそうに撫でた。


「だからね。君にはサンドバッグになって貰いたいんだ」


 ミカエルが振り返る。それと同時にいつの間にか致命傷を治癒させていたブランシュが背後から血液の大剣で切りかかった。だが、刃がミカエルを両断することは無く、頭をファンネルで打ち砕かれて力無く落下した。


「吸血鬼の特徴は異常な生命力。それはお前が天使の頃からの特性」


 頭を失った状態でそんな言葉が聞こえているかは定かでは無い。だが、ブランシュの魂は遥か昔の出来事を走馬灯の様に思い出していた。



――――――――――――――――――――――――――



 あれは、数万年単位の遥か昔の事である。ブランシュは当時、ベリアルと言う名を授かって一番初めにこの世に生まれ落ちた。


『可愛い私の天使達よ。この世界を維持するのには私一人では手が足りない。君たちの力が必要だ』


 生まれた瞬間にベリアルは自分のすべきことを理解した。神の寵愛の下、自分を創った神の為にその手伝いを一生をかけてすることを。

 神はベリアルの他に更に四体の天使を創った。彼らは手を取り合い、同じく生まれたての世界に少しずつ手を加え始めた。


『基礎世界の物理法則に更に魔法を追加したよ。この力は全てのエネルギーに効率良く変換できる優れものだ。そして、その力を全ての生命に与えた』


 神はそう言いながら世界に立つ生物の一体、人間を指差した。人間は長い年月をかけて魔力を研究し、それを活用して文明を作り上げる。

 天使ベリアルはそんな健気な人間を愛おしそうに眺めて鼻歌を歌った。

 そんなご機嫌なベリアルを、他の天使達は決して快く思ってはいなかった。一番初めに生まれて最も神に愛された彼女は他の天使の嫉妬の対象であり、可愛い妹達が自分を陥れて堕天させるとは本人は知る由も無かった。

 読んで頂きありがとうございます。

今月は忙しく、投稿が途絶える事があるかも知れません。寛大な御心で待って頂けると幸いです。

誤字脱字などがありましたら教えて頂ければ幸いです。

評価や感想などもお待ちしてます。


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