表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全テをハ壊スル者  作者: 南十字
四章 邪神の力の解放
69/89

六十九話 破壊の仕方

 戦いは苛烈と言わざるを得ない状況だった。

 フロウズは雷魔法の使い手であり、雷速で放たれる連撃はどれも一撃で戦闘不能になる程の威力である。

 少年は、動き自体は少ないものの、空間を破壊して瞬間移動する為、目にも止まらぬ速さで動いているように錯覚し、結果的に互いに良い戦いをしているように見える。

 だが、その均衡も一瞬のうちに崩れ去る。少年は突然、そこら辺に落ちていた手のひらにも満たない大きさの瓦礫を複数個拾うと、フロウズの攻撃を避けた瞬間にフロウズに向かって投げつけた。投擲程度の速度では雷速にはまるで当たらない。しかし、フロウズが右に避けた時に少年はその動線に瞬間移動をした。速い速度を出している物質は急には止まれない。当然そんな事は理解しているフロウズは、進行方向をズラしてやり過ごそうとした。筈だった。

 気がつけば躓いており、少年に向かって一直線に飛び込んでいた。


「胸、貸してやるよ」


 少年は両腕を開いてフロウズを出迎える。瞬間、全身に流れる超電力。少年の全身から稲妻が無数に走るが、それでもフロウズを両腕で抱きしめ、ミシミシと骨が軋むほど力を入れて押さえ込む。


「ぐぅ…ぐあああああっ!!」


 あまりの激痛に魔法を解いて大きな悲鳴をあげるフロウズ。しかし、少年の力は弱まらず、より強くなっている気もする。


「か…雷魔法…落雷…」


 最後の力を振り絞って魔法を唱える。だが、魔力はまるで発されず、魔法も発動する事は無かった。


「な…ぜ…?」


 阿保ヅラで唖然とするフロウズ。少年は腕の力を維持したままフロウズの顔面に自分の顔をズイィっと近づけた。


「くふふ…魔法が出ねえなぁ?魔力が感じられねえなぁ!そらそうだ!俺がお前の魔力が練られるそばから破壊していってるんだからな!」


 すると、フロウズの表情はみるみるうちに凍りつき、笑えるほどに強張った顔つきになった。


「じゃあな。下っ端」


 そう言いながら腕に力を入れ、フロウズを鯖折りして背骨をへし折った。フロウズの口から気持ちの悪い音がして全身の力が抜けてゆく。脊髄の損傷により下半身は動かないが上半身は生きているらしく、激痛に悶えて泣き喚いている。


「ん〜。辛そうだな。生き延びたいか?」


「ぐぅ…っ!この…ど畜生が!どっちみち助からないだろうが!」


 少年はフロウズの前でしゃがんで目線を下げてやる。


「いいや。助かる方法はある。俺がお前の背骨をへし折った過去を破壊してやればいとも容易く治すことができる」


「な、ならそれを…」


 フロウズが助けを懇願するが、その言葉を遮って少年はフロウズの頭に触れた。


「誰がやるかよ」


 そう言って手に魔力を込めると、まるで高所から地面に落としたスイカのように見事な血の花火が広がった。

 とうとう上半身の力も抜ける。少年は手を服の裾で拭きながら鼻で笑う。


「滑稽だな」


 そう言って立ち去ろうとした時、フロウズの義手からカチカチと機械音がしていることに気がついた。マズイと思った瞬間には時すでに遅し。義手は少年を巻き込み、半径十メートルほどのクレーターを作る威力の爆発を披露した。

 空に昇る真っ黒な煙。その中から現れた少年はどこも怪我をしておらず、圧倒的力量差を見せつけた。


「舐めた真似しやがって。自爆装置付けるくらいなら名乗るなよ」


 愚痴を溢しながら道端に座らせていたナレスを担ぎ、ゆったりとした足取りで戦いの気配のする方向へ歩いてゆく。


「戦いを始めた馬鹿がこっちに居るんだろ?気配は少し違うが、あの骸骨野郎も居るじゃねえか」


 少年は下衆な笑みを浮かべて少し駆け足気味に街門を目指した。

 そして、そんな少年の頭上を何かが通り過ぎた。


「なんだ?人か?」


 足を止めずにそれを観察する。その特徴ある姿に、なんとなく記憶の中に目ぼしい人物を見つけた。


「本屋の店主の吸血鬼か。何やってんだ?こんな所で」


 それは、ポートバレーの本屋で出会った太陽を克服した吸血鬼、ブランシュ・ヴァールハイトだった。

 彼女は血を巧みに操って優雅に空を飛んでいる。声をかけようにも、この戦乱の中だと上空まで届かない気がするので少年は無視を選んだ。



――――――――――――――――――――――――――



 スクレットが操るアンデットドラゴンと竜王が激しい攻防を繰り広げる。それはさながら怪獣バトルであり、矮小な人間などまるで気にも留められずに容易に踏み潰されている。

 竜王は、思っていたよりもアンデットドラゴンが強かったことに腹を立てたのか、唐突にタックルを繰り出し、倒れたところに馬乗りになって至近距離の豪炎ブレスを見舞わせる。アンデットドラゴンも対抗してブレスを吐くと、両者のブレスが拮抗して爆発が起き、周囲の氷の兵士や信者達、アンデット共は皆吹き飛ばされて戦闘不能になっていた。

 そんな光景を横目に、スクレットとネールナルは天使を相手に共闘していた。


「そろそろ堕天したらどうです?無様にね」


「それに関しては俺も同感だ。死体の癖に良い事言うな」


 二人で軽口を叩いているが、その表情は決して気楽なものでは無く、額には冷や汗が浮かんでいる。それもそのはずであり、目の前の天使にいくら攻撃しても歯が立たず、それどころか簡単に反撃されてしまう。言うなれば、()()()()()()状態であるのだ。


(このままじゃ埒が明かないな。どんなモノでも壊せる力がアレば…)


 ネールナルが少年を思い浮かべながら難儀していると、そろそろ飽きがきたのか、天使が無表情で左手に持つ天秤を空に掲げて魔力を集めだした。


「傾き、吊り合い、真偽を図る、この世の調停を担いし天秤よ。眼前に佇む大逆無道を進む愚者共を裁きたまえ」


 天使は淡々と詠唱を始める。すると、ネールナルとスクレットの胸から魔力の塊が抜け出して、天使が左手に持つ天秤の右側の皿の上に乗っかった。天秤は重量のある物が乗ったかのように右側に傾いた。そして、天使は左側の皿に一つずつ、罪という名の分銅を置き始める。数十個目の分銅が乗った時、天秤は勢いよく左側に傾いた。

 今度は、天秤を下ろして右手に持つ剣を天高く掲げる。


「右手に掲げる剣に集え。正義を持って振るう力は邪悪を祓…」


 そこまで詠唱した所で天使の持つ天秤に攻撃が飛んできた。不意を突かれた天使は天秤を手放してしまい、天秤は魔力となって消えてしまう。


「この魔法は…」


 天使が魔法の飛んできた方を向く。そこには、背中から真っ黒な艶のある蝙蝠の翼を生やして滞空する少女が居た。


「久しぶりだな。ミカエル」


 その少女は殺気を飛ばしながら真顔で天使の名を口にする。すると天使は無表情から憎たらしいものを見たかのような顔になった。


「今更出てきて何をするつもり?裏切り者の吸血鬼が笑わせるね堕天使ベリアル」


「今はその名は使っていない。今は吸血鬼ブランシュ・ヴァールハイトだ。覚えておけ」


 ブランシュがそう言うと、ミカエルは笑いを堪えるような仕草をする。笑いはとうとう決壊し、声をあげて笑い出した。


「あー可笑しい。堕天した罰として受けた呪いで血液しか摂取できず、日の光が射す中を歩けない癖になんでそんなに堂々と名乗れるんだい?」


「呪い…か。私はそんなもの気にしない。太陽は克服したし、血は美味い。何一つ問題は無い」


 ブランシュの反論をミカエルは憎たらしい笑みで返す。


「人が好きなのに血を飲んだんだ」


 その一言にブランシュは固まった。しかし、すぐにハッとしてミカエルを睨みつける。


「そんなに睨まないでよ。…現に事実だ。この世界には吸血鬼が何匹も居る。吸血でしか子孫を残せない呪いのかかった君が始祖なのだから、君が血を吸わないとそれは現れない」


 その瞬間、ミカエルに向かって血のレーザーが放たれた。易々と剣で弾き、余裕のある態度でブランシュを見下す。ブランシュはフーフーと鼻息を荒くして肩を揺らしながらミカエルを必死で睨みつける。


「今は吸血を一ヶ月しなくても暴れない…!それに、直接吸血しなくても魔法を使って最低限の血を貰えば相手を殺すことも吸血鬼にすることも無い!」


 ブランシュは激昂し、魔力を最大まで昂める。両手の人差し指の皮を噛み切り、溢れ出す血を操って剣を二本創り出す。自分の周りに五つの血の球を回転させて戦闘体制に入る。


「お前ら邪神の手足にはとことん後悔させてやる!」


 数千年を超えた神話級の憎しみの籠った強い瞳が互いを見据えた。

 読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字などがありましたら教えて頂ければ幸いです。

評価や感想などもお待ちしてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ