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全テをハ壊スル者  作者: 南十字
三章 平和を探して
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四十五話 ギルド登録

 この街には立派な壁や門は無く、簡素な柵があるだけだ。だが、この街のある谷の地形が外敵を寄せづらくなっている為、人々は安心して暮らすことができる。


「取り敢えず、俺達はギルドまで行くが、お前らも付いてくるか?」


 街を歩きながら、カーターがそう聞いてきた。


「私達は先に宿を取るので、ギルドの前で別れます」


 霊華はそう話しながら藤也とアンに視線をやる。藤也とアンはそれを理解したのか、二人でコクリと頷いた。


「そろそろギルドが近づいてきましたよ」


 キャシーが建物を指差してそう言う。その建物は丁字路の正面に建っており、全体的に大きく作られている。大きな入り口に、大きな窓、横幅が広くなっており、屋根も他の建物より高い。


「アレがギルド…凄いデカい」


「そうですね。ギルドは、人に仕事を斡旋する場所。当然多くの人が集まります。それも多種多様な。なので、他の建物よりも広く作られているんですよ」


「へぇーそうなんだ」


 ブランの説明に、確かにとアンも腑に落ちたのか感心した顔になる。


「私達はここで」


「あぁ、俺達もしばらくこの街にいるから、何かあれば頼ってくれよ」


 霊華達はカーター達の視線を背に受けながら、人混みの中に消えていった。


「凄え人だったな。あの嬢ちゃん」


 カーターがそう呟く。


「そうね。あんな見た目でも強いし、弟子も持ってるし」


「その上傲らないんだぜ。俺にゃ無理だな」


 キャシーとガットも霊華の姿を思い浮かべてそう言う。一行は幾らかの時間、霊華の消えていった人混みを眺め、名残惜しそうにしながらギルドに入って行った。



 冒険者一行と別れ、三人に戻った。一緒に旅をしていたときは少し鬱陶しいと感じたこともあったが、早くもあの騒がしさが恋しくなってしまった。

 ギルドのある通りから一本、隣の通りに行くと、冒険者をターゲットとした宿屋が多く立ち並ぶ。その中の一つの宿に、藤也達は居た。


「こんにちは!少しの間部屋を借りたいのですがありますか?」


 アンの声が宿のフロントに響く。

 街に来てまずする事は宿の確保だ。休息は何よりも大切な事である。短期間しか居ないのであっても、安心して休めない宿であってはならない。霊華がよく品定めして入ったこの宿は、朝食しか用意してくれない代わりに値段が安い。かつ、近くに飲食店や雑貨屋がある為、比較的楽に生活できるだろう。


「こんにちは。部屋ならあるよ。外の看板に書いてある通り朝食しか出ないけど良いかい?」


「はい!大丈夫です!」


 藤也達は部屋を一つだけ借りた。できる事なら二部屋借りたいが、金銭的余裕がない。霊華の持っていた金を使う筈だったが、古すぎて使えないらしく、藤也が教会から貰っていた金を使った。

 受付に数日分の宿泊料を渡し、鍵を受け取る。

 部屋は三人で生活するには丁度良いくらいの広さで、雰囲気も悪く無い。


「じゃあ、まずギルドに行くか」


「「はい!」」


 返事をした二人は、霊華の後ろを興奮気味に歩く。ギルドはすぐそこなので数分で着いた。

 ギルドの開けっ放しの扉を(くぐ)ると、沢山の冒険者が談笑する広間が広がる。冒険者達は女二人と男一人と言う比較的珍しい組み合わせからか、チラリと一瞥するが直ぐに興味を失って談笑に戻る。

 物珍しく色々な場所を見回す藤也は、沢山居る冒険者達の中に見覚えのある顔ぶれを見つけた。


「あっ!カーターさん!」


「おっ!坊主!また会ったな!」


 藤也が声をかけると、カーターが機嫌良く反応してくれた。人混みを縫うように近づき、カーター達のいる席の横に行く。


「カーターさん。今何してるんですか?」


「今は、無事に街に辿り着けた祝いをしてるんだ。つっても、ただ飲んで食ってしてるだけだがな」


「へぇ」


 話していると、霊華とアンも人混みを縫って来た。


「こんにちは。皆さん」


 霊華は、律儀に頭を下げて挨拶をする。


「あら、さっき別れたばかりじゃない」


「いえ、キャシーさん。一度会っていたとしても、挨拶をするのは礼儀ですよ」


 キャシーと霊華がフフフと上品に笑う。


「話は変わりますが、冒険者登録はどこでやるのか教えてくれませんか?」


 霊華がそう聞くと、カーター達がキョトンとした顔で見合う。


「えっと、どうしたの…?」


「あぁ…いや、なんだ。今まで平然と旅してたから、もう登録していたのかと…」


 ガットの一言に、他の仲間も首を縦にふる。霊華は、フッと微笑んで否定する。


「いえ、今は冒険者ではありませんよ。今は、ね」


 含みのある言い方が引っ掛かった藤也だったが、今は何か聞いてはならない気がして流した。


「そうだったのか。すまない。冒険者登録はあっちのカウンターでできる。なんだったら着いて行ってやるよ」


 カーターがそう言って立ち上がり、カウンターに向かう。その後を三人が着いていく。


「おーい!受付の姉ちゃん!コイツらを冒険者にしてやってくれ」


 カーターがカウンターの奥に向かって声を張り上げると、ギルドの職員が慌てて出てきた。


「はっ、はいっ!冒険者登録ですね!一人当たり大銅貨三枚になります!」


 藤也が巾着から大銅貨を九枚出し、ギルド職員に渡す。ギルド職員は、慌てながら受け取り、テキパキと登録の準備をする。


「で、では!このカードに血を押し当ててくださいっ」


 そう言いながら、鈍色のカードと小さい画鋲のような針を差し出してきた。


「まずは藤也、お前からだ」


 霊華が藤也の背中を押す。藤也は右手に針を持ち、指を見て唾を飲み込む。


(自分で指を刺すなんて…相当根性がいるな…)


 そうやって躊躇っていると、誰かに針を奪われ、プスリと刺される。


「イッた!何!?誰!?」


 血が滲み出る指を押さえながら後ろを向くと、針を持って笑い転げているガットが居た。


「い、いやぁすまん。様子を見にきたら、ビビってたから」


 笑いで震えながらそう言うガットは、すまんと言いながらも本当に謝っている気配はなかった。


「酷いですよ!もぉ!」


 藤也はぶつくさと文句を垂らしながら、カードに指を押し当て、血を付着させる。手を離すと、カードが一瞬虹色に光ったように見えた。そして次の瞬間、カードにみるみるうちに文字が刻まれる。名前、ランク、魔力属性等が刻まれたカードを持ち上げて光にかざすと、ダイヤモンド型のプリズムがカード全体に見える。


「すげぇ…これが俺のギルドカード」


 感慨に耽っていると、ギルド職員がカードの説明を始めた。


「こちらのカードは、名前、ランク、所属チーム、得意魔法属性等がわかります。紛失した場合、再発行に大銅貨五枚がかかります」


「わかりました」


 心ここに在らずと言った感じでカードを眺めながら返事をする。

 次はアンの番らしく、登録はさくさく進んだ。


「へぇ。得意魔法が地面魔法なのか」


 カーターがアンのカードを見ながらそう言った。


「地面魔法?土じゃなくて?」


 藤也が聞くと、アンが鼻を高くして説明する。


「地面魔法ってね、簡単に言えば土以外も使える魔法ってこと。さらさらした砂とか、巨岩とかね」


「へぇー。なんかおんなじに見えるけど違うんだね」


「まあ、土魔法と被るところもあるから、混同されることよくもある。単純に上位互換として見ればいいね」


 アンの魔法に感心していると、視界の端の方で霊華がカウンターに近づくのが見えた。

 すぐに視線をそちらにやると、今まさに指に針を刺しているところだった。躊躇いも無く針を刺すと、滲み出る血をカードに押し当てた。藤也は、今までと同じようにカードの色が変わると思っていた。しかし、どうも様子がおかしい。一向にカードの色が変わらないのだ。


「え?えぇっ!?す、すみません!今変えます!」


 カードに不具合があると思った職員が、慌てて裏からカードを出そうと踵を返した。


「ちょっと待って」


 しかし、それを霊華は止めた。霊華の表情からは、複雑そうな心境が見て取れる。


「取ってくるのは、()()()()()()()()にしてくれ」


「へ?」


 職員は頭が追いつかないのか、少しポカンとした後、困惑したまま裏に行った。


「し、師匠。再発行って、()()言う…」


 藤也が霊華に意図を聞くと、やはり複雑そうな顔で答える。


「ああ、そう言う事だ」


 藤也はそれを聞くと、不安そうな表情を浮かべる。だが、対する霊華は案外平気そうな顔をしている。


「も、持ってきました」


 職員は気まずそうにしながら再発行用のカードを持ってきた。見た目は初回発行の物と変わりは無かった。


「ありがとう」


 霊華はカードを受け取ると、血が止まりかけの指を押し当てる。すると、今度はしっかりと変化が始まった。

 やがて変化は終わり、カードの詳細が明らかとなる。藤也だけで無く、カーターやギルド職員までもが興味津々な様子で覗き込む。


「名前が…焔木延治…誰?それでランクが…Bランク!?」


『ええぇっ!?』


 驚愕の声がギルド内に響き渡った。

 読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字などがありましたら教えて頂ければ幸いです。

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