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全テをハ壊スル者  作者: 南十字
二章 力を求めて
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三十二話 崩れ去る黄金

「はぁぁぁっ!」


 ナレスが、剣でクルーを切りつける。風魔法も使い、周囲の物もまとめて木っ端にする勢いだ。しかし、目の前に黄金が現れ、攻撃が防がれてしまった。さらに、その黄金はナレスを飲み込もうとする。


「くっそ!」


 ナレスは前方に突風を起こし、その推進力で攻撃を避けた。そこに入れ替わる様に少年が飛び込む。黄金を破壊し、続けてクルーに手を伸ばす。

 クルーに触れようとした瞬間、クルーが黄金に変わる。


「チッ!」


 少年は舌打ちをしてその黄金を破壊した。

 ナレスは消えたクルーを探して辺りを見回す。クルーは街の中心上空に移動しており、力を溜めている様にも見える。


「このままじゃ…少年!アイツを止めるよ!」


 ナレスは後ろを振り返って少年にそう言う。だが、そこに少年は居らず、少年は既にクルーを止めようとしていた。


「もーっ!一人で行かないでっ!」


 風魔法の推進力でグンッと急加速して少年を追いかける。少年は先にクルーと接触しており、蛇の様にうねる黄金の群れが少年を襲う。

 不規則な動きに翻弄され、苦戦する。そんな少年に助太刀するため、黄金の群れに突撃する。少年に攻撃が当たらない様に少年を左手で抱きしめ、右手で剣を振って無数の鎌鼬を発生させる。

 黄金の群れが弾け飛び、辺りに飛び散って付近のものを黄金化させる。


「しまった!黄金は全部が感染するの!?」


 ナレスは黄金を弾き飛ばした事を後悔し、クルーに対して怒りの目を向ける。

 少年はそれに気がつき、ため息を一つ吐いてクルーに肉薄する。


「お前は何をしたいんだ?」


 クルーの攻撃を捌きながらクルーに目的を問う。


『簡単な事だ。俺は注目を浴びたいのだ』


 クルーは、一見すると表情は変わっていないが、憎たらしく、人を見下す様な声色で話す。


『注目を浴びれば、人々は俺を見下す事は無い。俺は頂点に立ちたいのだ』


 クルーはそう言いながら、黄金の攻撃に耐えている少年を指差す。


『黄金の傀儡よ。この者を捕まえろ』


 すると、街の至る所から黄金でできた人形が現れる。フラフラとした動きでゆっくりと歩む姿は、まるでゾンビの様だ。

 黄金の傀儡は少年の下に集まり、互いを足場にしながら上に上にと目指してゆく。


「なんて…醜いの」


 ナレスはその光景に口を押さえて唖然とする。よく見てみると、その人形は皆、黄金でできた服の様な物を見に纏っていた。


「もしかして…!この()達は!?」


「なんて悪趣味なことをしやがる…っ!」


 二人は嫌悪の視線をクルーに向け、クルーに肉薄する。二人は憤怒の勢いで苛烈な攻撃を見舞わせるが、クルーは器用に黄金を動かして防ぐ。


「邪魔だぁぁぁっ!」


 少年は、クルーに攻撃を加えられないことにイラついた様子で怒号とも取れる様な声を吐く。


「埒が明かねえ!畳み掛けるぞ!」


「待って少年!後ろ…!」


 ナレスの言葉に振り向くと、すぐそこに黄金の傀儡が居た。傀儡達は、少年を捕らえようと両手を広げて掴みかかってくる。少年は捕まってしまったが、すぐに傀儡を破壊し難を逃れる。がしかし、難を逃れてすぐの少年の背筋に嫌な汗が流れる。何かを感じ、それを止めようとクルーを破壊しようとした。ナレスも同様に、黄金の間を縫って風の弾を放つ。

 その瞬間、クルーが溜めていた力を解放するかの様に身体を大きく広げた。


『黄金魔法•極地•【黄金郷(エルドラド)】』


 黄金色の魔力の衝撃波が放たれ、少年とナレスは弾き飛ばされてしまい、攻撃もかき消されてしまった。

 衝撃波が通過した場所は次第に黄金に侵食され、何もかもが黄金と化す。それは二人も例外ではなく、身体の末端部から徐々に侵食が始まる。


『堕ちろ。』


 クルーは冷たい声色でそう言い放ち、自分の周りに黄金を再生して滝の様に落とす。少年も巻き込まれ、ナレス諸共落下してしまう。

 少年は黄金に溺れてしまい、必死にもがき、手当たり次第に黄金を破壊してゆく。

 やがて黄金の勢いも止まり、少年は黄金の中から脱出する。


「死ぬかと思った…この力が無かったら俺もあんな像になっていたのか」


 少年は黄金になった人を見ながらそう呟く。黄金と化した自分の姿を想像し、思わず身震いをする。そして、それを頭に浮かべた瞬間、ナレスのことを思い出す。


「ナレス!!」


 ナレスは黄金に対する抵抗手段も無く、一度黄金に触れてしまえばもう終わりである。

 少年はナレスを探すために黄金を破壊しながら進む。似たような像の中に、一体だけ剣を持った像があった。


「ナレス…!」


 少年はその姿を見て恐怖と絶望に苛まれる。


「クソがァ!」


 地面を叩き、絶叫する。多分、一人ではクルーに勝てない。例え勝てたとしても、一緒に戦ったナレスに情ができてしまっており、それを失った少年はまた自暴自棄になるだろう。

 少年が悲しみに暮れていると、背後からコツコツと歩く音が聞こえる。


『仲間を失った気分はどうです?よく教えてくださいよ。ねぇ』


 クルーはニヤニヤとがは下卑た笑みを浮かべて少年を煽る。

 少年は憤り、握る拳に力を込めながら顔を上げて振り向こうとする。その瞬間、ナレスの握っている剣に魔力の刃が残っている事に気がついた。薄緑色の刃が、最後の灯火かの様に揺れる。それを見た少年は希望を感じ、笑みをつくる。


「まだ…生きている!!」


 少年はおもむろにナレスに触れると、魔力を使って黄金を破壊する。黄金にヒビが走り、徐々に剥がれ落ちてゆく。黄金が全て剥がれ、ナレスの姿が露わとなる。


『生きているだと!?』


 クルーは死んだと思っていたナレスが生きていた事に驚愕の声を上げる。

 少年は脱力して倒れるナレスを支え、ゆっくりと座らせてやる。


「大丈夫か…?」


 ナレスを労る声は、小鳥の囁きの様に柔らかく、優しいものだった。

 ナレスは荒い呼吸をゆっくりと落ち着かせ、深呼吸をしてから剣を杖の様に使って立ち上がる。


『クソが…!』


 クルーは二人を殺そうと黄金の滝を頭上から落とす。


『やった…!』


 二人を殺せたと、達成感に満ちた表情になるが、すぐに真っ青な顔色になる。


「もう…大丈夫。まだやれるわ」


「よし。次は無いかもしれない。気をつけろ」


「わかったわ」


 二人は黄金の滝の中から無傷で現れ、クルーに殺気立った視線を向ける。

 少年とナレスは呼吸を合わせてクルーに肉薄し、目にも止まらぬ連撃を見舞わせる。


『ぐうぅぅっ!?』


 苛烈な攻撃に、クルーは押され気味になる。


『俺は…この黄金郷の王となるのだっ!!』


 しかし、流石にタダでやられるクルーでは無く、攻撃を黄金で押し返し、周囲に黄金の爆発を起こす。

 二人はひらりとその爆発を避け、舞う様に反撃へと転じる。


「終わりだクソ野郎」


 少年は手のひらをクルーに向け、張り手の様に勢いよく突き出す。


『勝つのは俺だァァァっ!!』


 クルーは激昂し、歪な黄金の壁を生み出し、少年の攻撃を防ぎつつ距離を取ろうとした。


「最後は俺じゃねえよ」


 その言葉が、戦いの中でハッキリとクルーの鼓膜を揺らす。少年が黄金を粉々に破壊すると、その後ろから剣を頭上に構えたナレスが現れた。


「風魔法•世界を巡る薫風(フルヴァン•エテ)


 大剣を振り下ろし、クルーを両断する。それと共に風が吹き、黄金が次第に若草へと変わってゆく。草に包まれた街はまるで、時間の流れによって元に戻ろうとする自然本来の姿の様だった。


『ア…ァ…』


 身体から幾つもの草を生やしたクルーは僅かに呻き声をあげ、次第に栄養を取られて萎んで落ちていってしまった。

 クルーに生えた若葉はクルーの死体を使って盛んに成長し、一本の大木となった。大木はやがて黄色い花を咲かせ、花粉の様なものを放ち始める。

 花粉は街全体を覆う。すると、黄金に侵食されて倒れていた人々が生気を取り戻し、感涙を流した。


「凄い一撃だな」


「魔力を全部使った一撃よ。私オリジナルの魔法なの。すごい…で…しょ…」


 ナレスは疲れからか、足元がふらついてしまう。少年は慌ててナレスを支える。


「私…ずっと貴方に支えられてばっかね…物理的にも…精神的にも…」


 ナレスは笑みを浮かべ、ゆっくりと瞼を閉じて静かな息を立て始めた。


「頑張ったな…偉いぞ」


 少年は、妹を褒める様な優しい言葉をかける。ナレスを抱き上げ、どこか休憩できる場所は無いかと探す。

 空を見ると、いつの間にか晴れており、小春日和の麗かな日差しが街を照らした。

 読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字などがありましたら教えて頂ければ幸いです。

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