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全テをハ壊スル者  作者: 南十字
二章 力を求めて
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十九話 黒鎧の守護者

 黒い魔力が爆ぜ、洞穴が崩壊する。

 土煙が晴れると、巨大な岩が辺りに散乱しており、生命反応は無いかのように思えた。

 しかし、瓦礫の山から、岩を退けて少年が現れた。


「……」


 少年は無言で辺りを見回し、小瓶を眺める巨大騎士を見つけると、ニヤリと笑って走り出す。巨大騎士は走っている少年に気がつくと、驚愕の表情を浮かべる。

 少年は地面を蹴って跳びあがり、巨大騎士に蹴りを放つ。騎士はそれを左手で防ぎ、右腕を振って反撃する。少年は攻撃を避け、巨大騎士と距離を取る。

 少年と巨大騎士は睨み合い、互いに次の手を思案する。しかし、巨大騎士は警戒を緩めて話しかけてきた。


「器よ。名はなんと言う」


「俺か?俺の名はディース…ディース•ヘラー•アンラック」


「そうか。神の器ディースよ。我名はシュッツァー•ガード。守護者(ガーディアン)である」


 名を名乗ったシュッツァーは大剣を両手で持ち、脇構えで静止する。


「貴様を器と捉えず、敵として扱おう。行くぞディース」


 シュッツァーは地を蹴り、物凄い勢いで少年に接近する。下段から大剣を振り上げると、斬撃が地面を切り裂きながら少年に迫る。

 少年は横に避け、そのままシュッツァーに肉薄する。右手に短剣を握り、左手はいつでも破壊の力を使えるように開いている。

 シュッツァーは切り上げた勢いを回転に利用して足元を拳で穿つ。

 少年はその拳が到達する前にシュッツァーの懐に入り込み、プレートを破壊する。プレートに手のひら大の穴が空く。


「小癪なぁ!」


 シュッツァーは魔力を放出して辺りに衝撃波を放つ。少年はそれに巻き込まれて空中に弾かれる。


「ぬぅっ!」


 シュッツァーは放物線を描く少年を見るや否や、すぐに落下地点を予測してタックルをする。


「ぐあっ!」


 少年は呻き声を上げながら水平方向に弾き飛ばされ、木にぶつかって倒れる。


「ぃ…痛っ…てぇなぁぁぁ!」


 少年は自らを鼓舞するように声を荒らげながら立ち上がり、猛スピードでシュッツァーに肉薄する。

 シュッツァーは少年を切り裂こうと横薙ぎに大剣を振るう。

 少年はそれを跳んで避け、シュッツァーを真っ直ぐ見据える。


「貴様は学習が出来ないのか!!打ち落としてくれるわ!」


 シュッツァーはそう言って左手を振り上げる。


「俺はそんなに馬鹿じゃない」


 少年はそう返すと、右手に持った短剣を投げる。


「!?」


 その短剣は、鎧の破壊されて無防備になった箇所に真っ直ぐと吸い込まれるように突き刺さる。筈だった。

 短剣はシュッツァーに当たると、甲高い金属音をあげて弾かれる。


「多少は頭を使った様だが無駄だ。死ねぇい!」


 シュッツァーは振り上げた拳をそのまま振り下ろし、少年を地面に打ち落とす。


「誰が鎧だけだと言った」


 シュッツァーは土煙の向こうにいる少年を見ながらそう呟き、鎧の壊れた箇所をさする。

 そこには、ジャラジャラと音を立てる鎖帷子が着込まれていた。



 シュッツァーは少年が死んだとみて、踵を返して立ち去ろうとする。

 しかし、左手に違和感を感じてそこに目をやる。


「っ!?」


 なんと、左手の鎧が()()されていたのだ。

 シュッツァーが土煙上がる場所に目をやると、その直後に少年が土煙の中から肉薄してくる。

 驚き、呆気に取られたシュッツァーの反応が僅かに遅れる。

 これを好機とみた少年は露出した鎖帷子を破壊し、すぐにもう片方の手で肉体を破壊する。


「ッ!」


 シュッツァーは痛みに反応しながらも、少年を振り払おうとする。

 少年はバックステップでそれを避け、短剣を取りに走る。短剣を拾った少年は、短剣を構えてシュッツァーを睨む。


「その耐久力、神の影響か」


「知らねぇよ。根性だボケ」


 少年はそう言って地面を蹴る。シュッツァーは向かって来る少年に複数の魔弾を放つ。少年は前方から襲って来る魔弾を避けつつ、いつのまにか拾っていた石をシュッツァーに投げつける。


「無意味だとわからないのか?」


 シュッツァーは小石を煩わしそうにしながらも、大剣を振るって少年に攻撃をする。少年は大剣を避けるが、シュッツァーは大剣の勢いを利用して蹴りや拳を放ち、流れる様な連撃を見舞わせる。

 少年はそれを必死で避けるが、とうとう攻撃が当たり、少年は吹き飛ばされる。

 だが、少年もただでは起き上がらない。先程攻撃をしてきた足の鎧を破壊していた。


「小癪な真似をっ!」


 シュッツァーは怒り、大きな魔弾を放つ。


「ッ!」


 少年が立ち上がると目の前に魔弾が迫ってきており、避けても被弾してしまう。咄嗟に手を前に出して受けとめる。


「ぐあぁぁぁっ!」


 少年の腕はミシミシと軋み、激痛に思わず悲鳴をあげてしまう。かなりの質量を持った闇属性の魔弾。少年の腕は今にも折れてしまいそうだった。


「ぐうぅぅっ!」


 しかし、少年は魔弾を破壊して消し去ろうとする。僅かに破壊される魔弾。だがそれもすぐに周りの魔力が補填して跡が消えてしまう。

 少年は諦めない。壊しては戻り、壊しては戻り。魔弾は僅かにその体積を縮めていき、やっとその全てが無くなった。


「ハァ、ハァ…やってやったぞ…」


 息を切らした少年だが、シュッツァーは大人気なく追撃をする。大剣を振り下ろし、少年を両断しようとする。少年はすぐさま避け、通り過ぎさまに鎧を破壊する。


「ええい!チマチマとっ!」


 大剣を大きく振り回すが、少年には当たらない。振り抜いた大剣の重さで、大きな隙ができる。少年はこの隙に肉薄し、シュッツァーの露出した皮膚に短剣を突き立てる。


「ぬうぅぅっ!」


 少年を殴り飛ばそうとするシュッツァーだが、そこにはもう少年は居なかった。


「俺はここだ!間抜けがァ!」


 少年はシュッツァーの頭によじ登り、兜を破壊してゆく。


「壊れろ壊れろ壊れろ壊れろっ!」


 やがて兜は無くなり、シュッツァーの頭部が露出する。


「離れろ!」


 シュッツァーは少年を振り落とす。

 着地した少年は、その顔を見て呆気に取られる。


「驚いたかディースよ。私は男では無い。女だ」


 突然の出来事に、少年は固まる。

 今まで男と思って戦っていた相手が、美しい女性であったのだ。

 そんな少年を見ながら、シュッツァーは続ける。


「こんな女は見たことが無いだろう。女だから手加減でもしてくれるのか?」


 シュッツァーは真面目な顔でそう言った。


「いいや、そんなことで容赦はしない。俺はお前を破壊する!」


 やっと思考が追いついた少年は、シュッツァーにそう宣言する。


「そうか。嬉しいぞディース!我はその言葉を望んでいた!」


 大剣を担ぎ、腰を低く構えるシュッツァー。

 鎧はボロボロでもう殆ど意味を成しておらず、その下の鎖帷子も破壊されてぶら下がっていた。

 だからと言ってシュッツァーの闘志が消える訳では無い。尚も燃えるシュッツァーの闘志は、魔力となって辺りに威圧感を与える。


「いざ尋常に、勝負!」


 その掛け声を合図に、両者は交差する。一方は大剣を、一方は短剣を握り。

 残心する二人。勝負はもう付いていた。

 少年の手には短剣は無く、シュッツァーの胸に深々と刺さっていた。短剣と言えど、その刃渡りは心臓を容易に貫ける程の長さがある。

 シュッツァーは吐血し、その巨体は地面に倒れる。

 そして…暫しの静寂が訪れる。

 二人の間に一陣の風が吹き抜けた。


「神の…器よ…血を持ってゆくが良い…だが…この先も上手くいくとは限らない…精々頑張るのだな…」


 シュッツァーはそう言い残して天へと旅立った。

 少年はシュッツァーの遺体に歩み寄る。


「貰って行くぞ」


 少年は首飾りを丁寧に外し、瓶の蓋を開ける。開けた途端、血生臭さが鼻腔をくすぐる。

 少年はそれを呷り、無表情でシュッツァーを見下ろす。


「……」


 少年は一言も発さずにシュッツァーの胸に刺さった短剣を引き抜く。

 更に少年は別の物にも手をのばす。


「…コレも貰ってゆく」


 少年がそう言って掴んだのは、シュッツァーが使っていた大剣だった。

 だが、その大剣はシュッツァーが使っていた時よりも小さく、所々ボロボロと崩れていた。


「魔力を使っていたのか…器用な奴だな」


 真っ暗だった大剣は端から崩れてゆく。シュッツァーは魔力を元の大剣に纏わせて自分に合った大きさにしていた。だが、シュッツァーが死んだ今、魔力は原型を保てずに崩壊したのだった。



 魔力が全て剥がれ落ち、元になった大剣が露わになる。

 相変わらず色は黒いが、大きさは少年の背丈程で人間にも使える様になっていた。



 少年はその大剣を担ぎ、踵を返す。

 次の血を求めて、本能のままに歩いて行くのだった。

 読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字などがありましたら教えて頂ければ幸いです。

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