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異世界高校生なんかに負けない!!  作者: わらららびもち
1/1

ビッグビー

「ギィィィ!!!」


突然、背後の草むらから飛び出してきた生物めがけて俺は鳴き声を頼りにその方向へ弾を放った。


「ギィ......。」


20センチ程度のバッタが頭に弾を受けて絶命した。


このバッタは弾丸バッタといい、体よりも大きな脚を使って勢いよく飛び出すことが特徴だ。普段はその跳躍力を天敵から逃げるために使うというかなり臆病な虫である。


しかし、自分たちのエサ場に踏み込んだ相手には一転して凶暴になり、先ほどのように敵意むき出しの鳴き声とともに大ジャンプを繰り出すというわけだ。


と、ここまで聞けば弾丸バッタが殺人昆虫のように聞こえてくるかもしれないが、実際は大した脅威ではない。


お得意のジャンプも生身の人間ならよろめくぐらいはするだろうが、俺のように装備を整えた者ならせいぜい当たった音がするくらいだ。もちろん当たればの話だが。



鳴き声の数からあと5匹ほどの弾丸バッタが俺のことを狙っているだろう。今いる草むらは、俺の腰くらいの高さまで生い茂っていて、やはり奴らの姿は見えないが、俺の経験と勘がそう言っているから、そうなのだ。


俺はパチンコに弾をつがえて、次のジャンプに備えた......。



その後も危なげなく弾丸バッタを対処し、そろそろ帰ろうかと思っ―――


「うわぁぁぁ!!」


......。思っていると草むらの向こうにある森の入り口あたりから、人間の叫び声が聞こえた。俺が急いで声の方へ向かい、何とか声の主の姿が見える距離まで着くと、そこには冒険者ギルドの男性職員のような、きっちりとした、しかし見慣れない制服を着た若い男がしりもちをついて何かに怯えた様子でいた。


なぜギルドの職員がこの森にいるのか、なぜ叫び声をあげたのか、わからないことだらけだったが、すぐに二つ目の疑問は解消された。


「カチカチカチカチ!!!!!」


怯える男性職員の目線の先には、体長1メートルほどの大きな蜂、ビッグビーが臨戦態勢に入っていた。


ビッグビーとは、その名の通り大きな蜂型の魔物であるが、争いは好まない。もし敵が近づいてきても攻撃はせず、カチカチと大きな音を立てて威嚇するだけである。


しかし、そのビッグビーが今にも男性職員を襲おうとしている。おそらく男性職員が威嚇を聞いてしりもちをつき、その場から離れられなかったのが原因だろう。


こうなると非常に厄介である。ビッグビーは威嚇をしても逃げない生物を害のあるものとして認識し、その強力な牙や鋭い針を突き立てようと接近してくる。


俺は、ビッグビーが動き出すとほぼ同時にパチンコの玉を相手の頭に向けて放った。しかし、相手が飛んでいたことあり、弾はビッグビーの腹部をかすめただけだった。


「カチカチカチ!!!!」


これにより男性職員の死が残念ながらも確定したかに思われたが、ビッグビーは、俺を新たな敵と認識したようで、ご丁寧にもカチカチと大きな音で威嚇し直し始めた。退くなら今しかない!


「逃げるぞ!!」


すぐさま俺は、うずくまる男性の腕を引っ張り、その場を離れた。ちなみに、ビッグビーはその威嚇音が大きいほどメスにモテるらしい。先ほどの個体は、距離が少し離れるだけで威嚇音が聞こえなくなったため、いわゆる非モテの個体に分類されるだろう。あれっ、なんか親近感湧いてきた......。



とかなんとか考えているうちに俺がもともといた草むらも過ぎ、町まで戻ってくることができた。ここまでくればひとまず安全だろう。だが、逃げる間ずっと騒いでいた男性はまだパニック状態のようだ。


「おい!!なんで無視するんだ!?あれは何なんだ!?ここはどこなんだ!?」


男性の正気を失ったような質問に俺は冷静に答える。


「落ち着け。ここはもう町だ。クギノキに帰ってきたんだ。だからもう安全だ。とりあえず、おれの家まで行こう。」


「まて!!誰なんだアンタは!!クギノキってどこだよ!!」


......。だめだ、こっちまでおかしくなりそうだ......。




あれから日が落ちるまでの数時間が経過し、やっと男性は落ち着いた。男性はケンタという名前で、ギルドの職員ではなくコウコウセイという職業らしい。授業を受けていて、気が付いたらあの状況だったという......。


まぁ、よく分からないが要するにまだ混乱しているのだろう。俺は、その後も、もしかしたら異世界に来たのかもしれないなどの話をいくつかテキトーに聞いた後、ケンタにご飯を作り、親父の部屋のベッドで眠ってもらった......いや、俺だって疲れているんだから自分のベッドで寝たっていいだろ別に。ケンタもさすがに疲れていたのかすぐによく眠った。


店から帰ってきた親父にもこの話をしたが、同じように、混乱状態という結論になった。明日は俺の誕生日だ。親父からも何か話があるらしいし、早く寝よう。親父の、「おっ!?ベッドが使われている!?」という声を最後に聞いて俺はぐっすり眠った。








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