5歳~2
牧場の入り口に三人で向かうと、いつもの様子で彼らが立っていた。
少し早足で向かうと、こちらに気づいたらしい三人がそれぞれ挨拶を零す。
「カルヴィー、誕生日おめでとう」
三人からも祝われて、有り難うと礼を言う。
言葉もそこそこに早速、という形で母屋へと入った。
「よう来たね。まぁゆっくりしていきなさい」
「はい。失礼します」
「「お邪魔します」」
中には祖父が居て、五人の姿を見て顔を綻ばせる。
どうやら私にこうして誕生日を祝ってくれる友達が居るのが嬉しいらしい。
全員男の子っていう所が何とも言いがたいが。
女の子の友達ぐらい作るべきか。
いや、近所に同年代の女の子が居ないのだから仕方ないだろう。
居ればさすがに親友とまではいかなくてもそれなりに話が出来る友達を作る自信はあるのだが。
「じゃぁ、ちゃっちゃっと料理仕上げるし、ちょっと待っててね」
今日の主役である筈の私が料理を用意するって可笑しい気がする。
とはいえ。
料理が得意な人間が皆無なので仕方が無い。
ケーキだけは祖父が前日に用意してくれていたのでそれを出すだけだ。
前日と彼らが来る前に準備していた料理を手際よく仕上げていく。
「まあ、こんなもんか」
庶民、貴族という違いはあれど、所詮は子供。
子供好きするメニューは大体同じである。
ハンバーグとから揚げ、スパゲッティ。
サラダには卵プディングを乗せて私特性のドレッシング。
後はスープとオムライスだ。
祖父には白ご飯も用意した。
「ほい、お待たせー」
大きくは無いテーブルに一杯並べて。
改めて誕生日おめでとうと祝われた。
そして、お待ちかねのプレゼントだ。
「今年も楽しみにしてたんだよね~」
思わず顔が緩む。
幾つになっても貰える物は嬉しい。
それが自分のためにと用意してくれたものならなおさら。
「じゃあ、僕からねー!今年は髪留めにしてみたんだ。上手く出来たんだよ!」
「髪留め!?しかも手作り!!」
テオンがポケットから出したのは小さな手のひらに乗るぐらいの髪留め。バレッタだった。
お洒落に無頓着なカルヴィーは基本的にそういった物は自分で買わない。
その為それを選んだらしい。
何かしら必要な時に付けられるように、という配慮だった。
「凄い細工が細かい!さすがテオン!この石は?」
「焼付けは職人さんに頼んだんだけど、細工は僕がしたんだよ!石はね、お父さんに採掘しに行ってもらったんだ。エメラルドと翡翠だって!」
「おぅ!?意外とちゃんとした石だった!!」
エメラルドと翡翠って、お値段的に大丈夫か!?と心配になったが其処は異世界。
前世の時とは価値観が違う。
テオンが言ったように、鉱山で採ろうと思えば採掘可能なのだ。
その為、結構庶民の間でも出回っている。
勿論サイズや色合いによっては国宝級の代物になるのだが。
「有り難う、大事にするね!」
楕円形の形で鋼か銀か判らないがそういう素材にエメラルドと翡翠が埋め込まれていた。
サイズはそんなに大きくは無いが、見事な左右対称で配置された図案は綺麗なものだ。
唯一懸念なのは、私の髪色がものすっごい原色の群青色だということ。
金髪や銀髪のように色素が薄い色ならエメラルドや翡翠の翠が映えただろうに、と小さく残念がった。
「次、俺な。お前がずっと欲しがってた“ゴールドの卵”だ。親父の仕事手伝って漸く1個分けてもらったんだからな!」
「おぉっ!!!あの卵!!?マジで!!?有り難う!!!やった!!」
「「「??」」」
次にプレゼントをくれたのはオルト。
手のひらにすっぽりと隠れるぐらいの大きさの卵。
“ゴールドの卵”という名前だけ見たら、金の卵だと思うだろう。
しかし、見た目は唯の卵。
とはいえ、この国に一般的に流通している卵に比べたらかなり小さい。
私からすればこれが一般的な卵なのだが。
「えらい小さい卵だな」
フォルトの言葉に知らないらしいローレスとエリオットも頷く。
その三人に私はドヤ顔で説明した。
「この“ゴールドの卵”は、この国では珍しい“ゴールド”っていう鶏の卵なの。親鳥でも身体が小さくて繁殖力も少ないし、何より身体が小さい所為で一般的に好まれないらしいのね」
「でもすっげぇ美味いんだぜ、この卵。量は少ないけどな!」
「中の黄身が黄金色でね、濃厚なんだよね。だから“ゴールド”って名前がついたらしいよ」
「この街でもオルトの家ぐらいだもんね、取り扱ってるの」
「そうそう。でも増やすのが大変でなー」
はぁ、と肩を竦めたオルトに意味が判らないのだろう、坊ちゃん三人は首を傾げた。
それに答えたのはテオンで。
「普通の鶏と違って、卵を産む間隔が遅いんです。普通の鶏なら毎日産むけど、この“ゴールド”種は一週間に1個なんだよね」
「本当か!?そんな小さいのにか!?」
「そうらしいよ。だから一般的に流通しないんだって。オルトの所も増やす為と王宮にしか卸さないらしいよ」
「城でこんな卵出てたか?」
第三王子であるローレスが改めて首を傾げた。
見覚えが無いのだろう。
ソレは仕方ない。
「卵のまま出るわけないじゃん。それにサイズも小さいし、出すなら調理して出してるはずだから何の卵を使ってるかなんて判らないと思うよ」
「あー…なるほど。そういう事か。確かに卵料理自体はあるが、調理してあってサイズまでは判らないな」
「そういうこと。でも味が濃厚だから普通の卵よりは美味しい料理のはずだよ」
このゴールド種はウチの牧場には居ない。
祖父曰く、昔は居たそうだが、途中で途絶えてしまったそうだ。
新たに増やしても良かったが、生産効率を考えて止めた。
その為ウチの牧場には居なかったわけだが、私がオルトの牧場で目を付けたわけだ。
前世での普通の卵のサイズで、味はウコッケイのような濃厚さがある。
欲しがらないはずが無い。
とはいえ、簡単に分けてもらうわけにはいかず、誕生日プレゼントとして孵化予定の卵を譲ってもらったと言う訳だ。
「孵化箱に入れてまずは雛を孵さないと」
「そのまま増やすのか?」
「上手くいければね」
ローレスの疑問にそう答えて、最初に入っていた孵化箱にそのまま戻した。
上手くいけば一週間以内に孵化するはずである。
ゴールド種の雛は雪のような真っ白い羽毛なのだそうだ。
そして、大人になると黄色がかった綺麗な羽毛へと変化する。
綺麗な羽毛は飾りとしても好まれ、装飾品加工に回されるらしい。
そういった意味でも非常に楽しみだ。
「さてと。最後は三人のプレゼントだね~!今年はどんなの?」
貴族な彼らはそもそもの価値観が違う。
何が言いたいかというと、放っとくとどえらい高値のプレゼントを用意しかねないのだ。
去年、何が良いかと聞かれて冗談でお出かけ用の服が良い、と言ったら専属デザイナーを連れてきて大事になった。
しかも三人が三人ともそれぞれの家のお抱えを連れて来たのだからもう変な笑いが出た。
服だけでなく帽子から装飾品、靴まで文字通り全身コーディネートされるところだったのだからたまったものじゃない。
寸での所で祖父に止めてもらえて全身コーディネート×三人分はなくなったが、それでも三人分の服を用意されてしまった。
そこで考えたのが、彼らには三人でワンセット用意してもらおう、という案で。
多少三人で揉めた所もあったものの、上手く折り合いをつけて妥協してくれたらしい。
そこからの今年だ。
「エリオット」
ローレスが横に居るエリオットに声を掛けると。
待ってましたと言わんばかりに収納魔法を披露した。
詠唱魔法の中でもこの収納魔法はハイレベルなものらしく、大人でも中々使う者はいないのだとか。
それを七歳で使えるのだから、エリオットのハイスペック振りがわかるだろう。
呪文を詠唱すると手のひらの上に魔方陣が浮き出る。
其処に手を差し入れると中に入れている物が取り出せる、という訳だ。
収納力の限界は判らないらしいのだが、魔力によって変わるらしい。
「はい、今年のプレゼントだよ」
「折角お前の為に用意したんだから、ちゃんと着ろよな」
「はいはい、判ってますって」
「ドレス風のワンピースに揃いのブーツ、後、バックだな」
フォルトの言葉に頷いて、ローレスの説明を聞く。
取り出されたワンピースは淡い水色で、白いフリルがあしらわれていて、よく見れば細かい銀糸で刺繍もされていた。
更に言うなら腰元にある白いリボンがチャームポイントだろうか。
ブーツはベージュ色で上質な革製。黒の紐が編みこまれていて此方もセンスが良い。
最後にバックはこのワンピースに似合うデザインを選んだようだ。
濃い青は私の髪色よりも薄くワンピースの水色よりも濃い色。
丁度塩梅の良い色だと思う。
デザイン的にもちょっとしたショルダーバックのようなもので、使い勝手も良さそうだった。
「今年のも良い感じだね。ローレス様、エリオット様、フォルト様、有り難う!」
「まぁ、普段オーバーオールばかりなんだ、たまにはお洒落しろ」
「あはは!まぁ、たまにはね。と言っても、丁度来週お洒落しなきゃいけないんだけど」
頭を掻きながらあはは、と笑えば、五人がえ!?と同時に顔を向けた。
何気なく告げただけなのにそんな反応をされるとは思ってなかった為少し吃驚する。
ギョッとして、何?と逆に問うた。
「誰かと会うのか?」
「それともお呼ばれしてるとか!?」
「コイツ呼ぶヤツ居るか?」
「居るかもしれないよ?」
「ヴィーちゃん!僕達が知らない人に会うの!?」
「…………」
こいつ等…。
一部を除いてかなり失礼な事を言っている。
とはいえ、たかが牧場主の孫娘。
確かにわざわざお洒落して会おうなどというヤツは居ないだろう。
まぁ、今回は本当に居るのだけれども。
「残念ながら居るんだなー。つっても、私はおまけで、おじいちゃんに付いて行くだけだよ」
肩を竦めてそう説明すると、目に見えて安堵する奴等。
どういう意味なんだろうか。全く。
「シーシード施設にね、おじいちゃんが連れてってくれるんだって。さすがに作業着じゃね…。だから丁度良いなって思ってさ」
此処までを微笑ましげに見守っていた祖父へ確認するように顔を向けると一つ頷いた。
「向こうもこの子を見てみたいと言っていてのぅ。丁度施設見学も兼ねて連れて行こうと思ったんじゃよ」
「という訳。判った?」
私が五人を見回すように言うと。
それぞれ顔を見合わせて、最後、ローレスが少し顔を顰めた。
何で。
「シーシード家には確かオリヴァー兄上と同じ年の嫡子が居ましたよね?」
すると徐に祖父に確認するように告げた。
へー、歳が近い子供が居るのか、と何と無しに思っていると。
「あぁ居るよ。まぁ、その子は末っ子じゃが優秀なようじゃの。カルヴィーもまたこの牧場を継ぐじゃろうし、繋がりは今から作って置いた方が良い」
「なるほど。そういう意味もあるのかぁ」
「向こうは水竜、此方は地竜と飛竜を管理する重要な場所じゃからの。責任は重大じゃぞ?」
「おじいちゃん、行き成りプレッシャー掛けないでよー!」
「ほっほっほ!」
そんな掛け合いをする他所に、ローレス達が顔を見合わせてボソボソと何か話していた。
私には聞こえないようにしているのか何を話しているのか判らない。
でも、まさかだろ?とか無い無い、とかそんな単語が聞こえてくる。
何の話をしているのか気になって聞こうとしたら、テオンが笑顔で料理食べよう!と言ってきた。
そういえば、プレゼントを貰っていてまだ手を付けていなかったんだった。
お腹が空いたのだろう、皆思い思いに食べだす。
お陰で私は聞くタイミングを逃し、仕方なく、箸を手に取った。
基本的に更新は週末になると思います~




