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テオンの場合

※テオン視点。




 テオンは道具屋を営む父親と雑貨屋を営む母親を持つ一人息子だ。

 銀灰色の髪は父親譲りだが、顔立ちは母親似らしい。

 だが、人一倍鍛冶仕事に興味を持っていた。


 父親の元には多くの職人が居るから将来的に彼らの誰かが継ぐかもしれない。

 ならば自分は母親の雑貨屋を継ぐべきなのだろう。

 でも、テオンは父親のように鍛冶仕事がしたかった。

 熱い炎をものともせず、一心不乱に道具を作る姿に心躍らされたのだ。

 だから将来的に雑貨屋を継ぐとしても、それまでは思いっきり鍛冶仕事がしたいと。


 道具屋の仕事は至極明解だ。

 鉱石を元に武器から農機具まで作り上げる。

 同時に、手入れや道具の改良もするのだ。

 その為、お客とは長い付き合いの者が多い。


 一方で武器を使う冒険者などもふらりと立ち寄る。

 魔力が込められ、魔法が使えない者、苦手な者でも仕える魔具は一般市民も多く使う。

 道具屋は幅広い客層に支えられてる仕事なのだ。


 そんな中で、店と鼻の先にある王都唯一の牧場主であるロンはソレこそ父の先代からの付き合いである。

 テオンも生まれた時から既に“ロンじぃ”として出会っていた。

 牧場では様々な道具を使う。

 改良を施したり、新たなアイデアで道具が生まれたりする光景はテオンにとってもワクワクするものだった。

 だからか、テオンは魔力を込める魔具ではなく普通の道具作りがしたかった。


 鍛冶職人は、魔具職人と道具職人とに大きく分かれる。

 魔具は才能ある者にしか作れない代物で、職人達の中では選ばれし者として尊敬される。

 だからか、魔具職人になりたい者は多かった。

 道具屋では客層の事もあり、職人は半々ぐらいだ。

 テオンはそんな職人達や事情も幼いながらに知っていて、自分には魔具職人の才能はあるのだろうかと思っていた。

 漠然と、才能があるならば、魔具職人になりたいな、と思えるほどには。


 ただ、あの日を境に、魔具職人への憧れは一掃された。




 今日も今日とて、父親にくっついて鍛冶場へ。

 危ないからと離れた位置で身を乗り出すように職人達の動きを見ていた。

 炎を見て、金属を打つタイミングや力加減などなど。

 見るだけでも勉強になる。

 そうテオンは思っていた。


「テオン!ロンじぃが来たぞ」

「!!?」


 そんな時、行き成り背後から父親に声を掛けられビクッと肩が跳ねた。

 慌てて振り返ると、其処にはテオンが懐いているロンが居て。

 父親と、後は見知らぬ女の子が居た。

 近づいてくる彼らに思わず首を傾げる。


「だれ?」

「ワシの孫じゃよ。カルヴィーじゃ。仲良くしておくれ」


 声を掛けると、ロンが笑みを浮かべながら教えてくれた。

 どうやらロンの孫らしい。

 自分より少し年上だろうか。


「よろしくね。テオン」

「…う、うん!よろしく…!」


 ニコリと笑顔を浮べる女の子は、カルヴィーと言うらしい。

 年は一つ上。

 群青の濃い色合いの髪に目が行く。

 自分の、銀灰色の髪色とは対照的な目立つ色だった。

 自分が座ってる椅子の上で身をずらすと、判ってくれたのかカルヴィーは直ぐに座ってくれた。

 大人用の椅子だから子供二人座っても十分ゆっくりだ。


「テオンは何してるの?」

「しょくにんさんみてる!」

「そっか」


 また視線を職人に戻すと、横からそう尋ねられて。

 素直に答えたら、少し笑みを零したようだ。


「あれ!」

「好きなの?」


 職人さんを指差すと小首を傾げるように聞かれた。

 それに元気よく頷くと、またそっか、と返される。

 もしかして、小さい子がただただ見てるだけだと思われたかな、とテオンの脳裏に過ぎった時。

 父親が色々と説明してくれた。

 テオンが鍛冶仕事が好きでよく見てること、もう少し大きくなったら自ら作り出すのではないかということ。

 確かに、許可が出れば直ぐにでも作りたいと思っているから、父親の言う事は強ち外れではない。


「カルヴィーちゃんはりょうりするの?」

「うん、するよー。簡単なものばかりだけどね」

「すごいね」

「そうかな」


 あはは、と笑う彼女に僅かばかりの尊敬の念を向ける。

 一つしか違わないのに凄く大人な気がして。

 凄いなと思った。

 聞かれるままに道具の作り方などを説明する。

 すると、やっぱりというか、牧場で使う農耕具をメインに興味があるようだ。


「テオン凄いね。よく知ってるね」

「うん、べんきょうしてるから」

「そっか。いつか、テオンが作った道具を使う時がくるかもね」


 何ともなしにふと零した彼女の言葉を聞いて、テオンは少し困惑した。

 カルヴィーは牧場主の孫なのだから、将来的には牧場を継ぐ可能性が高い。

 ならば使うのは農耕具がメインの普通の道具。

 魔具も使うかもしれないが、仕事ではまず使わないだろう。

 アレは、冒険者や、一般市民であれば単純魔法が使えない者、若しくは苦手な者が使う為のもの。

 だから、あえて選ばない限り、カルヴィーが将来、自分の作った道具を使う事は無い。

 可能性は低い。

 それに気づいたテオンは幼いながらに嫌だな、と思ってしまった。


「テオン?どうかした?」

「え…あ、うん…」


 思わず、肩を落として落ち込むと、カルヴィーは小首を傾げた。

 困った表情に慌てて否定しなおす。


「な、なんでもないよ!ちゃんと道具つくれるようになるのかなっておもっただけだから…」

「そっか。まぁ、簡単じゃないもんね。でもテオンならきっと大丈夫だよ」


 はっきりと言い放った言葉にはどこか確信めいたものが感じられた。

 それが何なのかは判らないけれど、でも、そう言われて不安だった何かが飛んだ気がした。


「もうすこし大きくなったらすこしずつしゅぎょうしていくんだ」

「頑張ってね。そしたら、私が使う農耕具作ってくれたらいいな」

「うん!!がんばるね!」


 絶対にカルヴィーちゃんが使う農耕具、僕が作るから、と念押しするように言うと。

 彼女は目を丸くしてそして笑った。

 楽しみにしてる、と。


「まぐはどうせさいのうがないとつくれないし、カルヴィーちゃんが使う道具をがんばってつくるね」

「はは、頼もしいね。畑仕事でも動物達の世話でも道具は大事だからね」

「ぼくじょうつぐの?」

「勿論」


 カルヴィーの言葉にふと問えば、当たり前だといわんばかりに頷かれた。

 やっぱり凄いと思う。


「テオンも道具屋継ぐんでしょ?あ、でも、そうすると雑貨屋の跡取りが居ない?」

「……うん、ぼくひとりだし…」

「うーん…まぁでも、まだまだ先の話だしね。それに、何だったらテオンのお嫁さんに雑貨屋やってもらえばいいんだよ」

「!!?」


 予期せぬ言葉に思わず声が出なかった。

 確かにそうなのだが、でも、それをカルヴィーに言われて少しショックを受けている自分が居た。

 何でショックなのかは判らないけれど、でも何故か悲しい気分になった。

 絞り出すように、そうだね…と返すのが精一杯で。

 その後、何を話したかはあまり覚えてなくて、そのままお別れの時間になってしまった。


「もう少し大きくなったら牧場にも遊びに来て欲しいな」

「ぜったいにいく!」


 もっと話したかったけれど、ロンも忙しいし、勿論父親も忙しい。

 だから、今日はこれでお別れだ。

 近所にはあまり子供が居ない。

 歳が近いといえば、動物屋のオルトだろうか。

 今度カルヴィーのこと聞いてみよう、と密かに思いつつ。

 この後母親の営む雑貨屋に行くというのでそれを見送った。

 本当は案内がてら一緒に行く手もあったのだが、少しでも勉強して早く道具を作れるようになりたくて。

 テオンはぐっと言葉を飲み込んだのだ。


「はやくじぶんでつくれるようにならなくちゃ…!」


 鍛冶職人には一朝一夕でなれるものではない。

 日々の修行は元より、自分の感性なども磨く必要がある。

 この日を境に、テオンはより一層職人達を観察するようになった。

 だが、見るのは一般の道具を作る職人達。

 今までは魔具職人の方も同様に見ていたが、自分はこっちではないとあまり見なくなった。


「テオン、農耕具作りに興味が出たのか?」

「うん、と、そういうわけじゃないけど……でも、カルヴィーちゃんにつくるってやくそくしたから」


 だからみてるの、と父親に零せば、何かを感じ取ったのか、父親は何も言わずに仕事に戻っていく。

 幼心に何かを決めたというのを判ってくれたのかもしれない。

 まだまだ幼い自分がもどかしい。

 早く大きくなりたい、そう切に願った。



難産でした。遅くなりましたー。

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