表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/51

45話 大学合格後・・・

 1月中旬になり僕と柚の大学受験が始まった。僕と柚はセンター試験と地方入試の併用だ。どちらの試験でもメリットとデメリットがある。だから僕と柚はそれぞれのメリットを生かせるように、センター試験と地方入試を併用して受験することにした。



 僕と柚の最低目標は一流私立大学の円城寺大学だが、上は某一流私立大学まで幅広く受験する予定だ。できれば、僕と柚も1つでも上の一流私立大学に合格したいと考えて、予備校の講師とも相談して、受験日を作成して、願書を出して、1月中旬から始まる入試に取り組んだ。



 1月中旬から2月にかけて僕と柚は同じ大学に願書を送っているため、2人で試験を受けるために毎回、待ち合わせをして試験会場へ向かい、試験を受ける日々が続いた。



 2月中旬に合格発表の通知が届き始めた。一流私立大学の円城寺大学は2人共に合格だった。他にも、もっと上位の某有名私立大学にも、2人共に合格していた。僕と柚は某有名私立大学に入学することになり、手続きを進めた。



 俊輔と夏希は無理だと思っていた一流私立大学の円城寺大学に2人共合格していた。2人は奇跡が起こったと言って喜んでいる。僕達の受験戦争はこうして幕を閉じた。











 大学合格祝いをマスターと明日香さんがしてくれることになり、僕と柚は久しぶりに喫茶店へ訪れていた。夏希と俊輔ももちろん後から来る。マスターと明日香さんは僕達用のイチゴのホールケーキを特別に用意してくれていた。



 柚のお気に入りの喫茶店の一番奥の窓際の4人がけの席へ2人座って、マスターにモカを頼んで俊輔と夏希の2人を待った。ほどなくして俊輔と夏希も喫茶店に到着して僕達の対面の席に座る。



 マスターがにこにこしてホールケーキを持ってきてくれた。そして明日香さんが嬉しそうにホールケーキにナイフを入れて、取り分けてくれる。



「皆、大学進学おめでとう。この1年よく頑張ったね。冬からのラストスパートお疲れ様。柚ちゃんと圭太くんは某有名私立大学、俊輔くんと夏希ちゃんは私立円城寺大学、全員が希望大学に合格できて本当に良かった。本当におめでとう」


「私も皆と知り合ったのは遅かったけど、皆を応援していたし、全員、合格したこと、とても嬉しいの。細やかだけどお祝いさせてね。本当に大学合格おめでとう」



 マスターと明日香さんは自分のことのように喜んでくれ、嬉しそうに微笑んでくれている。



 僕達は口々に「ありがとうございます」とお礼を言って、ホールケーキを食べ、それぞれに飲み物を飲んで、和やかに喜びを分かち合った。



 喫茶店での合格お祝い会が終わり、俊輔と夏希の提案で繁華街へカラオケに行こうということになった。4人で線路下の通路を渡り、繁華街へと歩いていく。



 繁華街の横には2車線の車道があり、車がひっきりなしに行き来している。繁華街の中央にある交差点で1人の母親と女の子が手を繋いで、交差点の信号が切り替わるのを待っていた。女の子は母親と一緒に外出していることがとても嬉しいのだろう。右手に赤い風船を持ってニコニコ顔で母親を見ている。とても微笑ましい。



 女の子が喜んで何かを母親に話しかけている。母親にしがみつこうとした瞬間に赤い風船が手から離れ、空中へ飛んでいく。風船はフラフラと空中に舞い上がり、空高くは飛ばずに車が走っている上を飛んでいく。



 女の子は風船が手から離れたことに気づいて、車道に1歩ずつ歩いていく。僕はそれを見て女の子が車に引かれると思った。とっさに体が動く。自分が気が付いた時には必死に女の子に向けて走っていた。行き交う車からは大きなクラクションが鳴らされる。クラクションの大きな音でビックリした女の子と母親がその場で硬直してしまう。



 僕は我を忘れて走った。僕は車道に出て女の子の手を掴むと、その場で女の子を抱え込んで母親の所まで走る。女の子は僕の腕の中で泣きじゃくっていたが、どこにも怪我はなかった。



 母親は我にかえり、女の子を抱きかかえるとその場に崩れ落ちる。その目には涙が溜まっていた。僕はお母さんの手を取って、その場で母親を支える。母親はヨロヨロしていたが、しっかりと女の子を抱きしめていた。



「ありがとうございます」


「危なかったですね。女の子が無事でよかった。これからは気を付けてくださいね」



 信号が変わる。母親と女の子は僕に礼を言って、信号を渡っていった。俊輔、夏希、柚が僕に追いついてくる。



「圭太、危ないことするなよ。圭太が車に引かれるかと思ったぞ」


「でも、圭太のおかげで女の子が無事だったんだし、恰好良かったわよ、圭太」



 俊輔と夏希は僕が元気なのを見て喜んで微笑んでいる。柚の顔を見ると顔色が青くなっている。



「圭太、自分の体を大切にして。普通の体じゃないのよ。女の子が無事だったのは嬉しいけど、圭太に何かあったら、私、どうしたらいいかわらかないよ」



 柚がそう言って僕の胸の中へ飛び込んできた。僕は柚の体を抱きしめる。ずいぶん心配させてしまったようだ。柚に悪いことをしてしまった。



「ゴメン。もうこれからは走らないから。ゴメン」



 柚の背中を優しくなでる。すると僕の腕の中で柚が「うん」と頷いた。その時だった、胸がいきなりドクンと波打つ。視界が段々と霞んで暗くなっていく。呼吸が苦しい。僕はいきなり襲ってきた苦しみの中、僕は道路に倒れた。







◆柚side







 私を包んでくれていた圭太の手が緩んだ。そして圭太が体を横向きにして道路へ倒れこんでいく。ドサという音と共に圭太が道路に倒れた。道路に倒れこんでいる圭太の背に手をまわして、圭太を上半身だけ起こして、俊輔が大きな声で「圭太!圭太!大丈夫か!」と叫んでいる。



 夏希はその場で両手を口に当てて硬直している。圭太は苦しそうに顔を歪めている。私はスマホを取り出してすぐに119へ連絡し、救急車を呼ぶ。



 たぶん女の子を助けようと一瞬だけ咄嗟に急激な運動をしたために、圭太は心筋症の発作を起こしたのだろうと私は思った。でもどう対処していいのかわからない。とにかく救急車を待つしかない。私は圭太の両手を握って「目を覚まして!圭太ー!」と大声で叫ぶけど、圭太は苦しく歪んだ顔をしたまま、目を覚まさない。



 5分後に救急車が道路に止まる。救急車の中から3人の救急隊員が降りてくる。2人が搬送用ベッドを圭太の横まで運んできて、圭太の体を2人で持ち上げて搬送用ベッドに寝かせる。



 救急隊員の1人がやって来る。



「君達は彼の友達かい?彼は何か病気でも患っているのかな?詳しく知っている人がいれば教えてほしい。それと1人救急車に同乗してほしいんだけどいいかな?」



「彼は心筋症を患っていました。さっき、いきなり走ったから発作が起きたんだと思います。私が救急車に同乗します。私は広瀬柚と言います。彼の彼女です。お願いします。私を同乗させてください」



 私と救急隊員の話を聞いていた俊輔が「心筋症、そんな話、俺達聞いてないぞ」と呟いた。夏希は顔を青くして「ウソでしょ」と呟く。2人にはゴメンだけど、説明している暇なんてない。



「後で説明はちゃんとするから。今は圭太を病院に運ぶことが大事だから、私、行くね。2人にはちゃんと後から連絡するから」



 私はそう言って救急車へ乗り込んだ。すぐに救急車の後ろのドアが閉まる。圭太はシャツのボタンを外されて心電図の端子を体に張られている。そして指先には酸素を図る装置が差さっている。腕には血圧を測る検査機が巻かれる。



「彼の主治医は巽総合医療病院です。早く救急車を走らせてください」



 救急車が赤色灯を回して、サイレンを鳴らして、走り始める。



 救急隊員の1人が圭太の素性、病状、今までの様子、倒れた時の様子を私に問いかけてくる。私はできるだけ冷静に答えようと努めて、圭太のことを話していく。



 もう1人の救急隊員が巽総合医療病院へ連絡している。受け入れてもらえるか確認しているようだ。



「巽医療総合病院で受け入れ準備、大丈夫だそうです。これから巽医療総合病院へ向かいます」



 私はそれを聞いて少し安堵した。すると救急隊員の1人が心電図を見て大声を出す。私も心電図を見ると今まで動いていた心電図が1本の線になっている。心肺停止状態なったことを直感する。




「圭太ー!死んだらヤダー!圭太ー!圭太ー!」




 暴れ始めた私を1人の救急隊員が抑え込む。もう1人の救急隊員が圭太のシャツを大きく開けさすと胸骨圧迫を行って、圭太を蘇生させようと試みる。



「落ち着いて、あなたが暴れたら、彼氏の命が危ない。我々に任せてください。あなたはそこに座っていなさい」



 救急隊員の1人が私にそう言いながら除細動器の準備を進めていく。そして圭太の体に除細動器のパッドを貼る。もう1人の救急隊員が胸骨圧迫をやめて、圭太の体の上から降りる。「電気ショックいきます」と言って、除細動器のボタンを押す。圭太の体がビクと痙攣する。しかし心電図には変化がない。




「圭太ー!圭太ー!圭太ー!死なないでー!」




 救急隊員が電圧を操作してもう一度除細動器のスイッチをオンにする。すると心電図に変化が現れて、心臓が鼓動を取り戻した。




「圭太ー!圭太ー!圭太ー!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ