表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/136

インスタントラーメン

 家に帰った私を出迎えたのは、妻ではなく沖田君だった。

 それもなぜかフリルつきのエプロンを、羽織の上から着ている。いつもは妻が使っているものだ。


「お帰りなさい」

「……ただいま」

「奥方は、婦人会の寄合とやらがあるそうで」


 ああ、そう言えば言っていたな、そんなこと。だからと言ってそれが沖田君のエプロン姿に帰結する理由が解らないが。

 沖田君が私の疑問を察したように言う。


「奥方がこれを着て料理をするようにと」


 うん、遊んでるな。どうせ写メでも撮ったんだろう。芽依子のスマートフォンにはばっちり沖田君が写っていた。これも一種の心霊写真かと思いながら、私は科学技術に感心したものだ。


「先にお食べになりますか、お風呂にされますか」


 新婚さんごっこか。とりあえず私は、この状態の沖田君を一人にするのは心配だったので、風呂はあとにすることとした。それにしても妻も、作り置きのおかずくらい用意しておいてくれれば良かったのに。完璧に状況を楽しんでるだろう。


「因みに何を作る積りなんだい」


 沖田君の白皙の美貌が、すわ池田屋に討ち入りとばかりにきりりと引き締まる。


「いんすたんとらーめん、なるものです」



 結果として沖田君は羽織の袖を燃やしそうになったり、卵を殻と共に盛大に鍋の中に投入しようとしたりの迷走した活躍振りを披露してくれた。フォローする私は、醤油ラーメンらしき物が出来上がった時には疲労困憊だった。

 これだけは、と武士の情けか妻がタッパーに詰めておいてくれた茹でた小松菜をラーメンに入れると、一応はそれなりに見栄えがする一品となった。私は沖田君のエプロンを脱がせて(泣く子も黙る沖田総司がいつまでもこんなのを着ていてはいけない)、テーブルに向い合せに着くとビールとラーメンに舌鼓を打った。余り大したことは喋らなかったが、たまには男二人で食べるのも良いもんだと思った。私に早く息子が出来ていたら、こんな感じだったのかもしれない。




ご感想など頂けますと、今後の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ