ギャル
休日、私の姉の娘である芽依子が遊びに来た。
高校一年だが、ふりふりの洋服がお気に入りで、ばっちりメイクもしている。
そしてどうやら、沖田君が見えるらしい。
「やっば。新撰組のコスプレじゃん。ちょーイケメンなんですけど?」
「…………」
沖田君、初めて見るギャルに目をぱちぱちさせている。写メッて良い? と言われ、何のことやらも解らず頷いていたが、写るんだろうか。
「芽依子ちゃん、ほら、沖田君もこっちに来なさい。お茶にしましょう?」
妻はこの事態をあっさり受け容れている。
「名前まで沖田なんだー。マジウケるしー」
うん。疲れる。今時の若い子、と言うと如何にも年寄じみた言葉になってしまうが、若者のこの日本語を軽視した言葉のノリは何とかならんのか。多分、沖田君には余り通じてないぞ?
そして表面上、にこやかな妻は昨日、近所の奥様方との間で面白くないことがあったらしく、そこはかとなくピリピリとして殺気立っている。さすがに子供の芽依子にまで当たるのは大人げないと考えているのだろう、芽依子には優しい叔母を通している。
ただ、アイシングクッキーに書かれた文字が問題だ。
KILL YOUだのBLOODだの荒んだ心境がありありと表現されているではないか。
クッキーに書く文字じゃないよね?
意味の解らない沖田君と、これまた意味の解らない芽依子(こっちはちょっと問題である)は、気にせずに紅茶と美味しく頂いている。
私はI MISS YOUと書かれたクッキーを齧った。
そしてその言葉を書いた妻の心境を考える。
I MISS YOU
貴方がいなくて寂しい。
妻は一体、誰を思ってこれを書いたのだろう。そしてなぜ芽依子には沖田君が見えるのだろうか。
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