フレンチトースト
暑い。
暑くて溶けそうだ。休日であることを良いことに思い切り朝寝をした私は、寝汗を掻いて起きた。
「おはよう」
「おはよう」
妻の笑顔に挨拶を返す。今日の朝はフレンチトーストの生クリーム添えらしい。悪くない。私はシャワーを浴びてさっぱりしてフレンチトーストを食べた。噛み締めると卵と牛乳の味がじゅわあ、と口中に広がって堪らない。生クリームを食べてコーヒーを飲み、私は考える。
昨日、妻が言ったこと。
〝あの、野試合の時から〟
あれではまるで、妻が近藤さんの襲名披露の為の野試合に、妻がいたかのような口振りだ。まさか妻も新撰組隊士の生まれ変わりだったのだろうか。その縁に引き寄せられ、私と結婚したのだろうか。妻に問い質してみても、そんなこと言ったかしらときょとんとした顔をされた。記憶にない――――。フレンチトーストを頬張りながら、私は思案する。まあ、でもあれだ。そんなに大した問題じゃないよね。だって妻が誰の生まれ変わりだろうが、妻は妻だもの。
「おはようございます」
ふわり、と沖田君が縁側に舞い降りる。土方君、斎藤君も一緒だ。三人揃い踏み。
「おふぁほう」
もぐもぐとフレンチトーストを咀嚼しながら、行儀悪く私は沖田君たちに言う。イケメン三人組、といった風情で、やっぱり三人揃うと壮観である。今日の沖田君に変わったところは見受けられない。良かった。私はコーヒーをごくごく飲んで、食事を終わらせる。
「土御門晴雄に逢いました」
「へ?」
斎藤君の意外な発言にびっくりする。
「あちらは転生を済ませたようですが、俺の夢に入ってきました」
「――――晴雄さん、何て?」
「不肖の子孫が迷惑を掛ける、と」
「ああ」
気遣いの人である。
「それから、どうしても抜き差しならない事態になったら、自分を頼るようにと」
「ふうん」
頼もしい言葉だ。晴雄さんの言うことなら、鷹雪君も聴くかもしれない。夏のギラギラした太陽が縁側まで照りつける。矮小な人の営みを、太陽は素知らぬ風で君臨する。誰一人も失えないと思う私の願望まで白日に晒すようだ。





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