何%
100%濃厚果汁のオレンジジュースが咽喉を心地よく滑り落ちてゆく。
「ぷはあ!」
沖田君と土方君、斎藤君も美味しそうに飲んでいて、和やかな光景だ。私の胸に射す翳りはあるものの、やはり彼らと共にいるのは心楽しいことなのだ。蚊取り線香を焚いた縁側で、果実の恵みを頂く。風鈴も下げた。チリーンと鳴る音が耳に快い。このジュースは果汁100%。
では沖田君は何%なんだろうと私は考える。
暮れなずむ頃、ジュースを飲む沖田君の顔はあどけない。彼がたった二十七の年月しか生きられなかったことを思うと、私の胸は塞ぐ。
「ご亭主。お代わりを頂いてもよろしいですか」
「もちろん」
私は妻に頼み、ジュースをもう一杯、注いでもらった。
「陰陽師の小僧は何と言ってた?」
唐突に土方君が言うものだから、むせてしまう。
どうして解ったんだろう。
「呪術の気配がする」
ああ、前にも似たようなことを言ってたね。
沖田君のいるところで私は鷹雪君の言葉を言い出しにくくて沈黙する。
しかしそれで薄々、察しはついたらしい。
「総司を消すってか」
凄みのある笑みを土方君が浮かべる。斎藤君から感じられる殺気。
「何とか説得するから。鷹雪君に手出ししないでくれ」
「後の禍根となりそうな芽は、摘んでおくべきです」
「斎藤君」
無敵の剣と称えられた猛者が、鷹雪君を「排除」すべき対象と見ていること、鷹雪君もまた同じであるだろうことが、私の胸にどうしようもなく不安を掻き立てる。
「彼への手出しは私が許さないよ」
「――――しかし火の粉が身に降りかかる場合は振り払うべきかと」
「私が何とか言ってみるから。鷹雪君を斬らないでくれ」
陰陽師として、鷹雪君の腕前がどれ程のものか私は知らない。しかし私の目に映る鷹雪君はまだ年端もいかない少年であり、対して斎藤君は猛禽類の如きであった。
「まあまあ、飲んで飲んで」
私は紙パックを持ってきて斎藤君のコップにジュースを注ぐ。接待をしている気分だ。斎藤君はオレンジの水面をしばらく注視していたが、勢いよくそれを飲み干した。





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