手出し無用
その晩、夢に鷹雪君が訪れた。純白の狩衣姿。いつかと同じ牡丹灯籠を提げている。水のせせらぎ、どこか懐かしい闇の気配。
開口一番、鷹雪君は言った。
「沖田総司を調伏する」
「待ってくれ、それは困る」
「危うく殺されかけただろう」
「どうして知ってるんだい?」
「あんたたちのことは監視してる」
鷹雪君がそう言って手を伸べると、ひらひらと白い蝶がどこから舞い込んできて、鷹雪君の手に留まる。そうか。式神か。そんなことも可能なのか。
「沖田君に手出しは許さない」
「……あんたはもう、さんなんじゃないんだぞ」
「それでもだ」
「あれは本物じゃない。真正は獣に近い」
「それでもだ」
妻とお茶を飲み、お菓子を食べてお喋りし、私とビールを飲んで白い髭を作る。そんな沖田君を失う訳には行かない。鷹雪君は眉根を寄せた。
「あんたに反対されると、俺の術も効きが悪くなる」
「え。そうなの?」
鷹雪君が大真面目な表情で頷く。
「あんたは存在そのものが呪術に近い。あんたの意志が望まないことを俺が呪術で成そうとすれば、事象の反発が起きる。多少の無理を押せば、それもやぶさかではないけど」
何だか大層な話だけれど、私には都合が良い。
「彼に手出ししないでくれ。大事なんだよ」
そう言うと、鷹雪君はちらりと憐れむような目を見せて、否とも応とも言わず沈黙した。





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