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絆創膏
土方君が鬼のような形相でやってきた。すごく怖い。
無言で沖田君を殴りつける。私が止める間もなかった。妻が何事かと心配そうに私たちを見ている。夕飯の準備で、私と沖田君の立ち回りは見ていなかったらしい。
「お前の気が一瞬、激しく淀んだ。――――さんなんさんに斬りかかったのか」
「土方君、良いんだよ。怪我もないんだから」
「いいや、良くねえ。総司。お前が抑え込んでおけねえのなら、俺にも考えがあるぞ」
「土方さん……」
沖田君は悄然としていて、見るからに可哀そうである。先程、私は加減せずに掌底を叩き込んだ。通常であれば臓器にダメージがあってもおかしくないところ、沖田君が幽霊だから無事でいるのだ。しかし土方君に殴られたのは、とても痛そうだった。
「ご亭主、申し訳ありません」
「良いんだよ」
土方君が舌打ちする。
「さんなんさんは、昔も今も総司に甘い」
私は苦笑した。
「弟分だからね」
そう言う土方君も、沖田君にかなり甘いほうだったと思う。
恐る恐る見ていた妻が、救急箱を持ってきた。
「何だか知らないけど、喧嘩は良くないわよ」
沖田君の切れた口の端に絆創膏を貼る。幽霊相手って忘れてないかな。
土方君は不機嫌そうにむっつり黙ったまま、沖田君もすっかりしょげて、夏の宵の空気はどこか剣呑だった。





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