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寝る子
夢の中。
沖田君がいる。丸くなって、薄い真珠色の膜のようなものに包まれて、眠っている。周囲には微細な泡がある。水中に、彼は眠っているのだ。
ああ、そんなところにいたのか。
彼は刀の大小を後生大事のように抱いている。私の胸がなぜか締めつけられる。
あどけない寝顔は、胎児にも似ていたかもしれない。
緑と青と白が混ざった不思議な空間で私は直感した。
あれが、沖田君の本体なのだと。
私は次の土曜日、寺に出向いた。竹林に佇む寺は今日も清澄としている。
鷹雪君が庭先で犬と遊んでいた。それは年相応の子供らしい笑顔で、私は安堵を覚えた。私に気付くと笑みを消す。
「何か用か」
住職がこれを聴いて渋面になり、鷹雪君を注意しようとするのを、私は目線で制した。
「沖田君の夢を見た。彼は水の中で眠っていた」
鷹雪君の目が面白そうに光る。
「あんた、見たのか。あれを」
茣蓙の敷かれた一室で、住職が冷えた緑茶を私と鷹雪君に出してくれる。
咽喉が渇いていた私は、有り難くそれを頂戴した。
「あれを起こしてやる必要がある」
「どうやって」
「あんたが膜を破るんだ」
「……それをすると沖田君はどうなる?」
「今いる、沖田総司か?」
問いに私は頷く。ふ、と鷹雪君が笑う。
「消えるよ」





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