帰還
見れば土方君、沖田君に斎藤君も奇妙な顔をしている。
彼らの中でも変革が起こっているのだと私は確信した。土方君がさんなんさんに詫びた。ただそれだけで、さんなんさんを周る事象は変わった。さんなんさんは切腹しなかった。新政府軍と戦いながら会津まで行き、そこで病症を重くして、戦線離脱、最期は京都で紗々女と我が子と共に過ごした。
怒涛の如くそんな記憶が押し寄せる。
次々と死んでいく同胞を見送りながら私は生き、安穏と死んだ。
妻子に看取られ、畳の上で。
妻に逢いたいと思った。無性に。
散乱した記憶を、妻に逢うことで収束させたい。
私は箸を置いた。
もう良いだろう、と胸中で誰にともなく呟く。歴史は変わった。少なくとも、さんなんさんに関する歴史は。時代には大きな変化を及ぼさなかったかもしれないが、私には一大事だ。
闇の中、16の数字が見える。
ケーキの上に立つ蝋燭。
私の前に妻がいる。
「ああ、びっくりした。貴方。一瞬、消えたように見えたわよ」
「……ただいま」
「え?」
どうやら妻には、私たちがほんの一瞬、消えたように見えただけらしい。赤く燃える蝋燭の数字に、見てきた京の町の炎を思い出す。私の中で再編された記憶がまだしっくりと馴染んでいない。
鷹雪君は蝋燭の火を吹き消した。
妻の長閑な拍手の音。
部屋が明るくなり、ケーキがくっきり見える。その後、私たちは口数少なくケーキを食べた。それぞれに思うところがあったのだ。





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