2ともだち
首を守るというのは、パラジットからの攻撃から一番守らなくてはならない場所だからだ。パラジットは普通の人間より狂暴的で力も一般人より強い。HIがそうさせているからである。そして攻撃してくる者に牙を向ける時首に噛みついていく。そしてその傷口から新たに寄生させるのである。戦闘になった時の基本中の基本の教えだった。
三人は防護服に着替えると、上からコートと羽織って任務に出る。支度が整ったミコトは三上を睨んだ。
「いいですか、くれぐれも僕たちの足を引っ張らないでくださいね」
「はい!もちろんでありますっ」
三上はびしっと敬礼をする。ふざけているのかまじめに言っているのかわからず、嫌味が通らなかったことに呆れてミコトはため息をついた。
「そういえばパラジットって自我を保てる人と保てない人がいるじゃないですか。保てない人はわかりますけど、自我を保てる人って結局どうなっちゃうんでしょうか」
「僕は結局殺されることになることを知ってますよ、自我を保てるパラジットは自分が強くなっていることにうぬぼれて気に入らないことに対しては殺人を犯しますから」
「ひえええ、怖いっすね…やっぱりパラジットなんて刑務所に送ったほうが一番ですね」
「……そうですね」
張り詰めた雰囲気にしびれを切らした下浦は大きく咳ばらいをした。
「まあまあ、二人ともそこまでで!ちゃんと防護服に着替えれたか?とくに三上は初任務だし、ちゃんと重装備しないとだめだからな」
「はい!対パラジット武器と仮面も準備オッケーです。いつでも戦えます」
「よし、念のため復習だ、対パラジット武器と仮面の効果を言ってみろ」
「はい先輩!」
三上は再び敬礼すると先に対パラジットを手に持った。形は水鉄砲のようだが立派な対パラジット武器である。
「これは対パラジット武器、麻酔銃ですね。射程距離は10メートル麻酔が効くのは約五秒、もう一つは浄土銃。これはどうにも手をほどこせないパラジットを安楽死させるものです。うなじに撃てばいいんですよね!」
ガチャと銃口を構えてミコトみ向ける。三上本人は悪意などないがミコトはついに真顔になってしまった。二人に振り回されているような下浦はちらりとミコトを見た後仮面を手にとり三上に差し出した。
「この仮面はパラジットフェイスですね。パラジットの遺体の顔をかたどってパラジットの身体能力向上の能力が宿っている仮面です。これを顔に装備することで僕たちHI捜査官の身体能力も上がりパラジットと対等に戦闘ができます!」
「またこれがHI警察捜査官のシンボルでもあります」
そう横入したのはミコトだった。自分の仮面を眺めながらそう言葉にした。HI警察の捜査官は木彫りで型どられたパラジットフェエイスは自分たちがHI警察だと言うことを見せるシンボルでもあった。
仮面の模様は各々好きにデザインできるがミコトは初めて仮面を受け取った時から何も装飾をほどこさなかった。真っ白なままである。
「さあ、復習も終わったことですし任務に出ますよ」
「はい!」
「おう!」
三人はHI警察署を出ると会議で言われたA区域に向かう。そこにはミコトも心当たりがあるパラジットが待っていた。
ミコトの顔が曇る。
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「ここらへんはHI見かけませんね、どこかに潜んでいるんでしょうか」
三上はきょろきょろと辺りを見渡した。場所は人通りが少ないカフェが並ぶ道通り。テラスでコーヒーを飲みながらデスクワークをしている人やベンチで日をあびている人もいた。一見その場でパラジットが潜んでいるとは思えないが、HI捜査官はそれを見分ける力を持っている。
パラジットを見つけるコツは影にいる人をよく見ることである。視える者であるHI捜査官はパラジットの目をよく見る。
パラジットが影に入ると目がグリーンに変わるのだ。それを確実に突き止めればパラジットと断定して保護に向かう。
「この時間帯でパラジットと思われる人物はなかなか絞れないな」
下浦も影のある場所を捜索しながら呟く。時刻はまだ午前十時。平日、学生は勉学に励んでおり人通りも少ないとありパラジットを探すのは難しい。しかしこの区域にパラジットがいると言う報告があった。
「先輩先輩」
「なんだ?」
ヒソヒソッと三上は下浦に小声で声をかけた。少し離れた所にいるミコトを見ながら三上は言った。
「先輩はもちろんHIが視えているんですよね?でも神威先輩はHIが視えないっていう噂を聞きました。…それって本当なんですか?」
「え?ああ、そうだけど…よくその情報知っているな。そのことはHI捜査官でもわずかの人しか知らないんだが…」
「学校で噂あったんです、捜査官の中に一人だけHIが視えない捜査官がいるって。誰かは僕も知らなかったんですけど、その人は仮面に何も装飾をほどこしていないって言うことが最近話題で、いやまさかって思ってたんですよ」
あーっと下浦は深いため息をつく。しかし下浦も何故HIが視えないミコトがHI捜査官になっているのは知らない。ただミコトは勘でパラジットを見分けれるらしい。そんなあやふやな理由でと思うが、HI対策本部の本部長から直々に入社を許可されている。実際ミコトも一度もその勘でパラジットを見間違えたことはない。
「本当に視えてないんですかね」
「視えてないみたいだ。二年も一緒にいるが、HIが視えないのに「ここにHIがいるのでしょう」って言っていて驚いた、まるで幽霊が視れない霊感の強い人みたいだ」
「ナイス例え方です!」
ここに来て三上はびしっと敬礼をした。三上はとりあえず敬礼するのが癖のようだ。下浦ももう慣れたようでうんうんと頷く。ここは最年長の自分がしっかりせねばと下浦は思っていた。
ピコンと突然二人のスマホからメッセージが届いた。相手はミコトからである。
『今からパラジットに会うから、モブになって監視しててください』
「パラジットに会う!?」




