ヘタレ主人公のステキな兄貴 きっかけ
ヘタレ主人公の兄貴より。別名「ヘタレの作り方」
弟のことが知りたいって?いいぞ、何でも話してやる。
あいつはな、顔はいいしテニスは天才的だし、頭もいい。勉強としては暗記をサボるから成績は並みだが、テニスの時に流れを読んで相手の隙を作るとか、頭がよくないと出来ないからな。
体型は細マッチョってやつだな。俺はがっしり筋肉がつくのに、あいつはどんなけ鍛えても細身のまんまなんだよな。
モテそうだろ?人生勝ち組!って思うよな?
なのになんであんななのかって?そいつはな、ちっさいころの女運のなさが原因だよ。
幼稚園の頃は、男女関係なしに遊ぶだろ、ふつう。
あいつもそうで、中でも二人の女の子がいっつもあいつにまとわりついてた。
あのころは人見知りなとこがあって、かまいに来てくれる二人が嬉しかったんだろうな。二人ともにしょっちゅう「大好き!」って言ってたんだ。
当時小学2年生だった俺は、それを見て教えてやったんだ。女には、どっちか一人にしか大好きって言っちゃいけないんだぞって。二人に言うのは浮気っていうんだってな。前日にテレビで見たことを自慢したかったってのもあった。
そしたら、そのあと仲良くしてた二人に「どっちか一人なんて選べないからもう好きって言わない!」って宣言したらしくてさ。幼稚園児にして修羅場だよ。
二人の女が毎日あいつの目の前で喧嘩するの。昨日まで仲良くしてたのに、急に「おんなじ格好しないで!」とか言い合い出すんだもんな。殴りあいの喧嘩もあったらしい。
あいつ、それを見続けて女の恐怖を知ったらしくてな。女の子を見ると泣いて逃げ出して、人前でろくにしゃべれもしなくなって。
やばいってんでうちの両親があいつをテニス教室に放り込んだんだ。
なんでテニスか?あれなら教師に教わる以外、壁と向き合ってればいいだろ?あとは自然にチームメイトと仲良くなっていけばいい。そんなつもりだったんだけど、あいつ、会話しないためにってだけでふらふらになっても壁打ちなんかの基礎練習すんだぜ!おかげでまぁ、強くなるわ強くなるわ。
元々の才能もあって、あっという間に天才テニス少年になってたよ。
あ、だからあいつ、未だに嫌なことや逃げたいことがあるとひたすらテニスの壁打ちすんだぜ。わかりやすいだろ。
もしも部活でそんな風になってたら、悩みがないかきいてやってくれよな。
悪気はないんです、悪気は。