読めるものなら読んでみろ
その石板は、南米の密林の奥、年代もわからぬ謎の遺跡の地下から発掘された。
黒曜石で出来た石板には、一面にビッチリと不気味な文字が刻まれていた。字面は以下のようなものだった。
『φ(゜Д゜ )(゜∀゜≡(゜∀゜≡゜∀゜)≡゜∀゜)・*:.。(゜∀゜)゜・*:.。. ゜〓(━(━(-( ( (゜∀゜) ) )-)━)━)』
その地の集落の伝説では、この石板を読むことが出来た者には、全宇宙の秘密が授けられると言伝えられていた。
世界中から名だたる言語学者、考古学者達が集って、石板の内容を解読しようとしたが、全ては徒労に終わった。
いかなる民族、文明の遺した文字にも類似していないその石板の文字は、果たして人類が記した物かどうかも疑わしいという結論に達しようとしていた。
学会では既に石板の解読は絶望視されたが、一人だけ諦めない男がいた。
「この石板の解読こそが、我が学者生命を賭すにふさわしい。ヒエログリフ解読に比肩する偉業だ!」
日本の言語学者、大月教授は黒い石板を睨みつけて、そう心に誓ったのである。
以来十数年、教授は学者人生の全てを石板の解読に注力した。だが彼の尽力も虚しく解読は一向に進まなかった。
憔悴した教授は、徐々に精神の均衡を失い、やがて魔術や薬物、幻視の類で石板を解読しようと試みるまでに追い詰められていった。
そして、ある日、ついに!
「くきゃーはははー! わかった! 読めた! 解読できたぞ黒崎くん! ついに宇宙の秘密を解き明かしたぞ!」
大月教授は目から歓喜の涙を流し、ヒステリックな笑いを上げながら、助手の黒崎くんにそう告げたのである。
「お、おめでとうございます教授。石板には何と?」
完全に常軌を逸した目で狂ったように笑い続ける教授に、黒崎くんが恐る恐るそう尋ねると、
「よかろう、心して聞き給え!」
教授は石板を頭上に掲げ、記された文字を高らかに読み上げ始めた。
「φ(゜Д゜ )(゜∀゜≡(゜∀゜≡゜∀゜)≡゜∀゜)・*:.。(゜∀゜)゜・*:.。. ゜〓(━(━(-( ( (゜∀゜) ) )-)━)━)……」