出会い2
4月11日 改稿
ユーリに連れられて、父であるエイス・アーダルベルト=フェルトの執務室に入った。
入ると同時にユーリの腕からピョコンと飛び降りる。
部屋の中を見渡すと、父の他に、レイモンド・シックザール=ベルニコフ宰相を見つけた。腰まである濃い青色の髪は、黒に近く、薄紫の目は笑みを称えている。普段は優しいけど、怒らせると怖い宰相を、グレン達は、レイと呼び慕っている。
その向かいに、アレキサンドル・イーガ=ツェリらしき青年がいた。
「よく来たな。アレク。俺の息子のユーリと娘のグレンだ」
「初めまして。エイス・アーダルベルト=フェルトが第一子、ユーリ・アーダルベルト=フェルトです。この出会いにハクヨウ様の御加護がありますように」
「はじめまして、グレン・アーダルベルト=フェルトです。このであいに、ハクヨウさまのごかごがありますように」
ユーリの真似をしてグレンも挨拶をする。
「これは、これは。ご丁寧な挨拶を。オレは、アレキサンドル・イーガ=ツェリ。王宮騎士、第一騎士隊隊長だ。アレクと呼んでくれ。この出会いにハクヨウ様の御加護がありますように。よろしくな」
笑う笑顔は男らしく、茶色い髪、碧い目にとてもよく似合った。
父の友達にしては、2つ3つ若かった。
それでも、剣に疎いグレンにもわかるほど隙のない態度だった。
導かれるままに、父の膝の上に座る。後ろから抱きしめられ、少し痛いが、楽しそうな雰囲気が伝わってくるので、グレンはそのままにしておいた。
「それにしても、溺愛だな。エイス。国王としての威厳が台無しじゃないか」
父、エイス・アーダルベルト=フェルトは、ハクヨウ王国の国王である。
26と若いながらも、治世は8年を過ぎ、賢帝であると評判らしい。
ハクヨウ王国は、この世界の西にあるアスティア大陸を治める国。風の加護を受けており、風の大賢者が大陸一帯を管理している。
「いいだろ? お前も恋人を見つければいい。そうしたら、わかるだろう」
父の言葉に、アレクは顔をしかめる。
「俺のことは置いといて。姫さんの誕生日は1週間後、だろ? なんで俺に、今日までに帰って来いって言ったんだ? 他の騎士隊もいるし、当日でもよかったんじゃ」
「グレン」
「えっ?」
「グレンってよんでください。ひめさんはなんかいやです。アレクさま」
「俺も、ユーリでいいです」
姫さんと言われるのが嫌で、グレンはそう進言する。ユーリも勢い込んでそう言った。
「そうか。グレン、ユーリ。俺もアレクでいいぞ」
明るく笑うアレクに、隣に座っていたユーリと顔を見合わせて笑いあう。父は少し嫌そうな顔をしていたが渋々頷いた。
「仕方ないな。だが、娘はやらん」
「何言ってるんだよ。グレンは今年3歳だろ? 俺は今年、23歳。20歳も違うの」
「20歳がなんだ。俺の父は、25歳、離れていたけど?」
ヒートアップしていきそうな2人を止めてもらおうと、レイを見上げる。レイは呆れた風にため息を付き静かに話し出す。
「2人とも、いい加減にしないと怒りますよ」
冷たい響きに、エイスとアレクは押し黙る。と同時にグレンは思い出した。父と、レイ、シックザール宰相は幼なじみだったことを。