出会い
4/11タイトル及び話統合
グレンが響だということに気づいたのは3歳の誕生日を迎える少し前のことだった。
何がきっかけなのかはわからないが、ふと自分の前世を思い出したのだ。
前世、大神響は、平凡で非凡な高校生だった。まあまあの容姿、凄まじい運動神経、素晴らしい頭脳。
だが、響は、独りだった。
両親は揃っていたが、彼らは響に無関心だった。どれだけ賞を取っても、模試で1番になっても、関心を全然向けなかった。学校の友達は、勉強にしか興味がなくそこでも独りだった。
そして、学校からの帰り道。道路に飛び出してきた少年を助けて響は死んだ。
そして今、グレン・アーダルベルト=フェルトとして生きている。
男から女になったのは誰の差し金かは知らないが。
とても晴れた日だった。庭で遊んでいたグレンは、兄に呼ばれて振り向いた。
「ユーリにいさま? な~に?」
響の記憶を持つが、肉体的には2歳のグレンは行動も幼くなっている。響は、その口調に内心笑いながらも嬉しくて仕方なかった。
響の時には感じなかった愛情を感じ、とても充実した日々を送っていた。
「お客様だよ」
手を差し延べる兄にグレンは飛びついた。
3歳上の兄、ユーリは、黒髪黒目で母と良く似ていた。
魔力の強いとされる黒を身に纏うその姿は、国中で評判になっている。自分と同じ色をしている優しい兄は、グレンにとっても誇らしいことだった。
「おきゃくさまってだれ?」
「グレンも、初めてだね。アレキサンドル・イーガ=ツェリ。父さんのお友達らしいよ」
父のお友達という言葉にワクワクしながらグレンは抱かれていた。