救出
お待たせしました。
次で3歳編終了予定です。
空に浮かぶ少年は、ゆっくりと男達とグレン達の間に舞い降りた。
「この国の民は俺の子供だ。特に、王の一族は俺の子孫だから特にな」
鋭い目つきで男達を睨み少年は話を続ける。
「お前らも俺の子供だ。だから手荒な真似はしたくない」
その言葉は凛と澄んで、森に響き渡る。
男達は動きを止め、風に揺れる葉の音だけが流れる。
息をのむ男達。
少年の圧倒的な存在感。手荒な真似はしたくないと言いつつも滲み出る静かな怒り。
それは、男達から戦意を失わせることに繋がった。
そこに、アレク達がたどり着いた。凛と張り詰めた空気に3人は緊張した雰囲気をしている。そして、頭上に浮かぶ少年を見て3人は慌てて膝をついた。
「シュウ大賢者様。お久しぶりです」
「アレクじゃないか。それに、後ろの2人は……」
楽しそうにアレクに声をかけたシュウは、後ろの2人に目を向けると小さく微笑んだ。
「久しぶりだな。北の大地で逢って以来か?」
「はい。あの時は、お世話になりました」
丁寧に頭を下げる2人にシュウはあっけらかんと笑う。
「そんなに大した手間でもないし。それより、ダンはどうしている?」
「今は、この大陸を旅しています。祖国の支援をしているみたいです」
リヒトの口からそうこぼれた。
シュウは満足そうに微笑み
「後はお前等に任せる」
そう言って、空から舞い降り、グレン達の元に近づいてきた。
「よく頑張ったな。えらいぞ」
あどけない少年の顔で豪快に笑われ手をつないでいたユーリの身体がふるえ始めた。
グレンも放心し何も考えられなくなっている。
ぼーっとした顔でシュウの顔を見る。見覚えのない顔なのにグレンはどこか懐かしい感じがした。
「怖かったよな? もう大丈夫だ」
そのまま抱き上げられ頭を撫でられる。その暖かさにとうとうグレンは静かに泣き出した。
「良い家族を持ったな」
「えっ?」
聞き覚えのある声。
そして言葉が聞こえた気がした。
とっさにシュウの顔を見るが、優しい目でこちらを見ているだけだった。
「じゃあ、俺は用事があるから行くな」
グレンをその場におろし、縄で逃げ出さないように縛り上げられた男を一別してシュウは飛び上がった。
アレク達は立ち上がり、シュウを見上げる。
ユーリとケンも泣きそうになりながらも空を見上げる。
「今日は、空を見上げると良い。俺からのプレゼントだ」
そう言い残して、大賢者は闇に融けていった。
きらりと星が流れた。
シュウはどこからともなく杖を取り出し、大きく振るう。
「ホント、良い家族に恵まれた」
遙か下方ににある王城を眺めながらシュウはつぶやく。
「幸せにならないといけない。がんばれよヒビキ」
ちいさなちいさな祝福だった。
そして、空一面に星が流れ始めた。