プロローグ
プロローグ
朽ち果てた家の横で異形の者が一匹ぐったりとしている。
その姿は昔話に出てくるような鬼そのものであった。体のいたるどころには刀傷。
”それ”は苦しそうに呼吸をし、力なくダラリと今にも崩れそうな家の壁にもたれかかっている。
”それ”が見下ろす先には小さな村がみえた。
だが遠くからでもその村のいたるどこから火の手があがっているのが確認でき、夜中にもかかわらず空は昼間のように明るくなっている。
いろんな人の苦しそうな叫び声も聞こえる。
その村を見ながら”それ”はボソボソと何かを口ずさむ。
「…シャボンダマトンダ…ヤネマデトンダ…」
その歌う姿は悲しんでいるようにも見える。
「…マデ…トンデ…コワレテ…キエ…タ……」
それっきり”それ”からは何も聞こえなくなった。
力尽いた”それ”の手からはキレイな石が転げ落ちる。
その様子を遠くで見つめる少女が一人いた。少女の足元には一匹の真っ黒な猫。
「これが一週間後の世界」
少女がぼそりとつぶやく。
「うん。多分一週間後くらいだと思う。もしかしたら六日後かもしれないし、八日後の光景かもしれない」
少女のつぶやきに猫が反応する。
「まあ僕らはとにかく石を出来るだけ早く探し出せばいいだけさ」
その言葉を聞くと少女は目を閉じ、胸にかけた石のペンダントを握り締めた。