考察2
ななつのこたち ひとつのこ
しまのなかに ひとつのこ
いちねんにつき ひとつのこ
ふちまでいって およぎましょ
しままでおよいであがりましょ
あがればしまのこのたから
「じゃあさ、“ななつのこたち”と“しまのなかに”の部分は置いておいてさ、”いちねんにつき ひとつのこ”のところはなんだと思う?」とフジショーが仕切り直す。即座に「人形を奉納しているんじゃないかな?」と返すシマオに続き、「昔は生贄を捧げていた、とか?」といたずらっぽく笑いながら言う玲也。「この辺に人を生贄にしていた歴史があるのかな?」とシマオが呟くと、「だから怖いって」と嫌そうな顔をしながら言うフジショーであった。
「そういえば、もうすぐお盆だから島神社の夏祭りもあるよね」と玲也が思い出したかのように言い出した。「へぇ〜、そうなんだ!?」とフジショーが驚いたように言う。「うん、うちのベランダから毎年見えるよ」と玲也は返す。「そうか、玲也ん家からはあそこが丸見えだね」と納得するシマオに「うん、まあね」と応じる玲也に「歌とかは聞こえるのか?」とフジショーが聞くと「いや、笛とか太鼓の音は聞こえるけど、歌声は聞こえないな」と玲也は思い出しながら言う。
「どんな祭りなの?」と興味津々そうなシマオに対して玲也は「いや、オレも最初から見ているわけじゃなくて、お母さんが「お祭りやってるよー」って言うからベランダに見に行くだけなんだ。なんか、白い服を着た人たちが笛とか太鼓で音楽を鳴らしながらあそこの道を・・・この間オレたちで通った道順で島神社まで行列するんだ。そして、島神社のところで、向こう側から来た行列と合流してから島に入って行くんだ」と述べた。
「あれ?じゃあ、この団地からも祭りの行列が出ているのか?」とフジショーが早とちりをしていたが、「いや、この団地でやるなら自治会からお知らせが来るはずだよ、地元の人しかやらないお祭りだと思う、多分、山の方の地元の農家の人たちじゃないかな?」とシマオが確度の高い話をする。その根拠として「お祭りの前になると地元の人達の予約が増えるから」と付け加えた。
実のところ、お盆になると西側と東側の山沿いの旧宝田村民たちは、白装束でおはやしをたてながら島神社まで行列をする習俗がある。小学校の向こう側の旧地主邸から旧村道を通り、沿道の各家から代表者が捧げものを持って行列に加わり、東山の村民と島神社前で合流してから身代わり人形を捧げものとして奉納の祭儀を行ったあと、無病息災と水難の厄除けを願う祈祷をするのだ。
「そういえば、お祭りが始まった由来とか、神社の由来とか、何も知らないなぁ」とシマオが呟くように言うと、玲也も「神社の下にあった人形は生贄なのかな?」と的を射ているのか外しているのかわからないことを言う。「でも、なんか面白そうだよな」と、フジショーはもっとも子供らしく頓智気なことを言った。
「”ユライ”って何?」と聞く玲也に「元々どういう意味だったか、とか、そんな感じの”理由”の大元のことだよ」とシマオ先生が教える。「へぇ~」と2人の少年は感心するのだった。「じゃあさ、神社とかお祭りの由来がわかれば、なんで神社の下に人形があったかもわかるんじゃねーの?」と玲也が問うと、「多分そうだと思う」とシマオがなんだか自信なさげに言う。「多分?」とフジショーが訝しんだ。「うん、僕は確かなことを知らないからね」とシマオは謙虚に言うのだった。
「どうすればそういうのがわかるんだろう?」と言う玲也の問いに「それそれ!」とフジショーが乗っかった。「図書館で調べるしかないね」と言うシマオが言うや否や玲也は立ち上がり「よし!じゃ、行こうぜっ!!」と言いながらやおら部屋から出ようとする。驚きの表情で固まるフジショーだが、シマオは冷静に「レイヤ!落ち着け!、時間を考えろよ!」と言った。フジショーの勉強机の端に影薄く置かれた目覚まし時計は午後4時15分を指している。まだまだ明るいが、小学生は午後5時までに家に帰っていなければならない規則なのでシマオはそれを気にしていた。
「明日でいいじゃん」とフジショーが真っ当な意見を述べる。うなだれる玲也と、それをやれやれというようなそぶりで眺めるシマオ。図書館は小学校よりもさらに南側にあるので、団地の外側を通る市道沿いを歩いていかなければならないが、歩きだと結構時間がかかる。「明日の朝9時にフジショーんちの前に自転車で集合しないか?」と言うシマオの提案に2人も賛成して今回はお開きとなるのであった。




