宝田青果店
「おばちゃ~ん、ちょっとききたいことがあるんだけど、いいですか~?」とレイヤが物おじしない声掛けをすると、ドラマに夢中になっていたおばちゃんは、ちょっと嫌な顔をしながら「なんだい!?やぶからぼうに?」と問い返してきた、しかし、一度やるとなったら遠慮なくヅケヅケとやっていくのがレイヤのスタイル、その後ろでフジショーがニヤつき、シマオがため息をついているのがなんとなく感じられたので、あれ?俺、またやらかしちゃったか?と思いつつも、一番気になっていることを口にする。
「あの、僕たち”しま”って名前の場所を探しているんだけど、おばちゃんは知ってますか?」、それに対して「なんでそんなことを知りたいのさ?」と問い返されてレイヤは詰まってしまう、宝探しのことは言えない、こういう時、どう返せばよいのかと言うことは考えていなかった。
すると、後ろからシマオが軽くため息をつきながら割って入った、「すみません、僕たち、夏休みの自由研究でこの辺の地名とかを調べているんです。それで、地元の人の名前に”田島”さんが多いので、きっと、地名にも”田島”か”島”がつくモノがあるんじゃないかな?って思いまして」、すると、八百屋の女将の態度が急変する、「あら!島野さんとこの坊ちゃんじゃない!は~、賢い子だことぉ~、シマノ美容室は安泰だねぇ~」続けて「でもねぇ、おばちゃんも地名のことはあんまり知らないんだよ、悪いけど、よそに当たってもらえない?ごめんね、役に立てなくて」と畳んだ、しかし、そこは秀才シマオ君、「いえ、大丈夫です、突然すみませんでした。」と言うと、ぺこりとお辞儀をしたので、シマオの後ろに回ったレイヤとフジショーも慌てて頭を下げ「すみませんでした」と声をそろえる。
だが、八百屋の女将は加えて「マー君のお父さんお母さんなら何か知ってるんじゃないの?地元の人も来てるだろうから」言ったが、シマオは「多分、今、一番忙しい時間帯だから、話してもらえないと思う」と返した。「あら、そうかい、そうだよね・・・あ!あたしの予約は・・・明日だわ」と言って、八百屋の女将は奥の方に引っ込んでしまった。
八百屋の隣はシマオの両親が経営している美容室だが、既に6人ほど順番待ちの客がいる、平日なのに大繁盛である。シマオはため息をつきながら首を振る、レイヤもフジショーも、その意味を理解している、「こりゃ、話を聞いてもらえるフインキ(雰囲気)じゃないな」と。
3人は次の店に行くことにした。