↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
41/88

いつもと違う朝

(ねん)(くみ)+4(くみ)昼前(ひるまえ)から正午(しょうご)までの日課(にっか)だったので正午(しょうご)にプールの授業(じゅぎょう)()わって解散(かいさん)となった。プールでの(つか)れもあってお腹(おなか)()具合(ぐあい)半端(はんぱ)なく、ほとんどの()どもたちがお腹(おなか)をグーグーと()らせながら帰宅(きたく)していたのだった。それは玲也(れいや)たちも例外(れいがい)ではなく、フジショーに(いた)っては玲也(れいや)と9号棟(ごうとう)のエレベーターホールで(わか)れる間際(まぎわ)まで「ハラヘッタ」しか()わなかった。そんなフジショーのことをシマオは「ハラヘッタ星人(せいじん)」とからかっていたが、そんなことが(まった)()にならないくらいにフジショーは(はら)()っていたらしく、本当(ほんとう)に「ハラヘッタ」しか()わなかったのだった。


昼食(ちゅうしょく)()わると猛烈(もうれつ)眠気(ねむけ)(おそ)ってきたせいか、母親(ははおや)にせっつかれて歯磨(はみが)きをし(はじ)めたものの、()ぼけ(まなこ)朦朧(もうろう)としながら()(みが)くと、おざなりに(くち)(すす)いでそのまま寝入(ねい)ってしまった。それから数時間(すうじかん)ほどで()()めるとすっかり夕方(ゆうがた)になっていた。あんなに(ねむ)っていたのに、不思議(ふしぎ)なことに夕飯時(ゆうはんどき)には律儀(りちぎ)お腹(おなか)()っていた。


夕飯(ゆうはん)()べた(あと)()(みが)いてお風呂(ふろ)(はい)り、自室(じしつ)で“日課(にっか)”の宿題(しゅくだい)をしようと(つくえ)()かう。シマオの(いえ)宿題(しゅくだい)をやったときに(かれ)提案(ていあん)で”宿題日課表しゅくだいにっかひょう”を(つく)ったのだ。だが、ランドセルから教科書(きょうかしょ)とノートを()()し、それらを(つくえ)(うえ)(ひろ)げた(あと)、そのまま、ノートの(うえ)()()して()てしまうのだった。


それからどのくらい()ったのだろうか?、玲也(れいや)()()ますと布団(ふとん)(なか)にいた。()ている(あいだ)(おや)布団(ふとん)(なか)()れてくれていたようだ。居間(いま)(ほう)からはTVからと(おも)しきアナウンサーの(こえ)()こえる。母親(ははおや)台所(だいどころ)朝食(ちょうしょく)(つく)っている最中(さいちゅう)のようだ。玲也(れいや)()()がるとのそのそと洗面台(せんめんだい)()き、(かお)(あら)う。()ヤニを(あら)(なが)してさっぱりさせたら居間(いま)()く、だが、居間(いま)にいると(おも)っていた父親(ちちおや)はそこにはいなかった。


新聞(しんぶん)玄関(げんかん)郵便受(ゆうびんう)けに()さったままだ。普段(ふだん)ならこの時間帯(じかんたい)(かれ)父親(ちちおや)出勤(しゅっきん)準備(じゅんび)をすっかり()えて、居間(いま)新聞(しんぶん)()みながらTVのニュースを()ている(ころ)なのだ。台所(だいどころ)作業(さぎょう)をしている母親(ははおや)に「おとうさんは?」と()くと、彼女(かのじょ)は「おはよう」と(あさ)挨拶(あいさつ)()べてから「お(とう)さんは(そと)()()くって」と()(くわ)えた。玲也(れいや)(あさ)挨拶(あいさつ)をし(わす)れたことに(わる)びれながら「おはようございます」と()べると、(つづ)けて「なんで?」と(たず)ねた。彼女(かのじょ)は「野次馬(やじうま)」とだけ端的(たんてき)()べたが、その(かお)(こころ)なしか苦笑(にがわら)いしているように()えた。


「どこに()ったの?」と3()めの玲也(れいや)()いに、「あんたはいいのよ」とだけ彼女(かのじょ)(こた)えた。彼女(かのじょ)のニュアンスとしては『お(まえ)()くな』ということだったのだが、そんな空気(くうき)玲也(れいや)には通用(つうよう)しない。「え〜」とブータレて不満(ふまん)(あらわ)息子(むすこ)(たい)して彼女(かのじょ)はベランダの()こうを(あご)でシャクってみせた。それで玲也(れいや)がベランダに(ちか)づくと、宝田大橋(たからだおおはし)(うえ)警察車両(けいさつしゃりょう)救急車(きゅうきゅうしゃ)消防車(しょうぼうしゃ)複数台(ふくすうだい)()まっているのが()えた。


普段(ふだん)(あさ)時半前(じはんまえ)時間帯(じかんたい)川沿(かわぞ)いの県道(けんどう)通勤(つうきん)使(つか)われる路線(ろせん)バスや通勤(つうきん)自動車(じどうしゃ)でごった(がえ)すのだが、今日(きょう)はその県道上(けんどうじょう)にある宝田大橋(たからだおおはし)(うえ)警察車両(けいさつしゃりょう)消防車両(しょうぼうしゃりょう)複数台(ふくすうだい)()めてあるために片側交互通行かたがわこうごつうこうになってしまい、ちょっとした渋滞(じゅうたい)ができていた。団地内(だんちない)南下(なんか)するルートでも大田市街(おおたしがい)()けるが、市役所(しやくしょ)から(さき)道幅(みちはば)極端(きょくたん)(せま)くなるために利用者(りようしゃ)(きわ)めて(すく)ないし、当然(とうぜん)ながらバスの運行(うんこう)ルートではない。時間(じかん)のために安全性(あんぜんせい)犠牲(ぎせい)にする覚悟(かくご)がある(ひと)だけが南回(みなみまわ)りのルートを使(つか)うのだった。


玲也(れいや)はベランダに()てみた。ベランダのフェンスの上端(じょうたん)がちょうど玲也(れいや)目線(めせん)(おな)じだったのでフェンスの下端(かたん)(あし)をかけ、フェンス上端(じょうたん)手摺(てす)りにしがみつきながら(かわ)(ほう)(なが)めてみると、手前側(てまえがわ)土手道(どてみち)(うえ)大勢(おおぜい)大人(おとな)たちが多嘉良川(たからがわ)川原(かわら)(ほう)をのぞき()んでいる。(なか)には親子連(おやこれ)れもいるが、麻生家(あそうけ)では母親(ははおや)である玲子(れいこ)方針(ほうしん)子供同伴(こどもどうはん)のやじ(うま)禁止(きんし)だ。そんな野次馬(やじうま)(なか)に、くたびれた背広(せびろ)見慣(みな)れた後姿(うしろすがた)男性(だんせい)がいた、おそらく、いや間違(まちが)いなくそれが玲也(れいや)(ちち)敏也(としや)だろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。