調査
そこで、不意にシマオが二人に問いかけてきた「なあ、この辺で”しま”がつく地名って、どこか知ってる?」、そんなことを言われても、シマオの実家である島野家以外は3年前に引っ越してきたばかりだから、この辺の地名に詳しくないばかりか、土地感すらない。
島野家は公開されたばかりの公団住宅にいち早く美容院を開店するべく越してきた家族なので、レイヤとフジショーの二人よりは長く住んでいる。その人間が知らないのであれば、この二人が知るはずもないだろう。
「しまね~」とフジショーがつぶやく。「地名は知らねーけど、人の名前なら知ってるぜ」と続けて言う、確かにそうだ、この団地だけでなく、地元の人にも”しま”がつく名字の人は多い。「そっか、人の名前なら、誰かの家の中とかかもしれないな」とレイヤが返すと「それじゃ、宝のありかを暗号にする必要ないじゃん」とシマオに突っ込まれた。
それを言われたら、二人とも「それもそっか」と認めざるを得ない。
かくして、この紙きれは”何かのありかを示す暗号である”という共通認識が生まれたのであった。
「じゃあ、”しま”がつく名前の場所をそのへんの大人たちに聞いて回るか!」と言ってどこかに向かおうとするレイヤにフジショーが待ったをかける「おいおい、大人にバレちゃうじゃん、絶対ダメって言われるに決まってるよ」、するとシマオがそれをたしなめる、「いや、それは案外いい案だと思うよ、大人は『どうせ子供の遊びだ』と思って気にしないよ、それに、宝探しだと言わなければいいんだから」
すると、「あっそうか!、やっぱシマオは頭いいなー」とフジショーは納得した。「んじゃ、いこうぜ!」と一声かけると、レイヤは二人を引き連れて、商店街に向かった。
レイヤたちが最初に向かったのは9号棟の商店街だった。一番左端の精肉店は、シャッターが半分おりていた。昼下がりのこの時間帯、個人経営のお店は夕方の混雑時までは休憩をするの主流で、その時は、シャッターを半分下ろすことで【休店中】とするのだ、そこで、シャッターを下ろしていない青果店に入っていく、ここの旦那は早朝から起きているので、今は昼寝をしているはずだ、それで、旦那の奥さんが店番をしている、昼ごはんも終わって洗い物も片付いたころ、テレビの昼ドラマを見ているところだった。