宿題~シマオ宅で
夏休みの宿題なんかやらない玲也だったし、彼の天然な母親も宿題をするように促したりしないので、朝ご飯を食べ終わった玲也は日課の皿洗いが終わったら外に出ようと思っていたのだった。だが、その作業中、突然電話が鳴った。TVを見ていた母親が電話に出たが、相手はフジショーだったようだ。フジショーから電話を玲也に替わるよう頼まれた彼女は玲也と皿洗いを交代したので、玲也はタオルで拭った手が乾かないまま電話口に出ると「お!レイヤか?ちょうどよかった。さっきさぁ、シマオから電話が来てさ、今日はシマオん家で夏休みの宿題をしないかって言われてさ、で、お前ん家にもそれを電話してくれって頼まれたんだよ。」と言うので「わかった、じゃあさ、下で待っててよ、今から準備していくからさ」ということになった。玲也は母親にシマオの家で友だちと一緒に夏休みの宿題をする旨を伝えると、自室に戻ってランドセルに色々と詰め込んでから出かけて行った。
玲也がエレベーターに乗って地上階に到着した時、エレベーターホールの真ん中にはフジショーが玲也を待って佇んでいた。そこで、玲也はエレベーターの扉が開くなり「お・ま・た・せ」とおどけた挨拶をしながら出ていくと、彼のおふざけを完全にスルーしたフジショーは「おお、きたな」とだけ応えて歩き出す。少し小走りで追いついてから「いやぁ、宿題、ひとりじゃやる気出ねーんだよなぁ」と言う玲也に「お前は何でもそうだよな?」と畳みかけるフジショー。流石は親友、よくわかっている。
ところで、シマオの自宅は8号棟の1階で、フジショーが住んでいる5号棟はシマオの自宅から玲也の自宅よりも遠いが、玲也は5階に住んでいるので、距離的には同じくらいだ。むしろ、フジショーは9号棟によらないほうが短い距離でシマオの家に到着できる。しかし、フジショー宅はこの3人の居宅の中では、南西の山すそにある小学校に一番近い方なのだ。
閑話休題。
昨日の晩に見たアニメの話をしながら歩いているとすぐにシマオの家についた。フジショーが呼び鈴のボタンを押すとシマオの母親が出てきた、「いらっしゃい!さ、どうぞ入って」そういって2人の子供を中に招じ入れると、彼女は「正雄!2人ともきたわよ!」と間取り最奥の部屋のシマオに向かって声をかけつつ「今ジュースを出すから正雄の部屋で待っててね」といって台所に向かってしまった。2人はその後ろ姿に向かって「お邪魔します!」と元気よく言うと、シマオの部屋に向かっていくが、その途中でリビングの前を通る。
シマオの父親はリビングで何やら書類作業をしている様子だったが、息子の友人2人が通りがかると顔を上げて「やあ、いらっしゃい」と声をかけてきたので、2人も元気よく「おはようございます!お邪魔します」とあいさつを返した。そのあたりでシマオが自室の襖を開けて顔を出すと「いらっしゃいませ!」と挨拶した。「なんで店員さんなんだよ」と玲也がツッコミを入れるも、彼はそれを軽くスルーすると、自室の前に到着した2人に「適当に座って」と雑に対応するのだった。彼はいつもこんな感じだ。さらに、彼が自宅に友人を呼ぶのは決まって両親が家にいる日、つまり、シマノ美容室の定休日である平日の水曜日であることが多い。彼の両親は、時々、「不動産屋ですか?」と職業を間違われることがある。




