境内と社
ようやく落ち着いてきたシマオだが、まだ足が震えていて調子が悪いようだ。
とりあえず、頂上にたどり着かないことには話にならないので、レイヤとフジショーで両脇を抱えて階段を上がる。体も小さいがそれに比例して体重も軽いシマオは小2の少年二人でも軽々と抱え上げることができ、むしろ、シマオそのものよりも、シマオが装備しているカバンと水筒の方が重いと感じるほどだった。
階段を上がりきったところにもう一つの鳥居があり、その鳥居をくぐった先には戸建て住宅によく置いてあるような物置の2~3倍はありそうな大きさの社があった。古ぼけたその社は、ところどころ塗料が剥がれ落ち、塗料が剝がれたところからは中の木材が腐りかけている様子が窺える。もう何年も交換されていない様子の腐りかけたしめ縄には、茶色い染みがついた古い紙垂が何枚か付いていたが、一番右のものは根元から千切れており、反対側の一番左側のものは途中から敗れ落ちた感じだった。
鳥居から神殿の間には少し広めの広場があり、ところどころに背の低い草が生えていた。
そして、神殿に上がる階段のところには人形を持った少女が座っていた。3人とも、この不気味な暗い雰囲気の黒髪の少女には見覚えがあった、「川村…さん?」とフジショーが言うとレイヤも、言われてみればそうだな、と思った。この、異常なくらいに薄暗い境内でうつむいた顔はより影が濃く、顔がよく見えなかったが言われてみるとそう思える。