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6 陸の孤島

 大型の輸送ヘリに荷物と相乗りで乗せられたシオンは窓の外を見ていると壁の間に等間隔で造られた高射砲塔があり、対空砲の照準器の上に足を掛けながら兵士が昼寝をしている様子はまるで戦争とは無縁かのようだ。


「これが戦争ですか……」


 シオンは困惑した顔で静かに呟くが壁外に出ると敵の接近に気づくためか草が刈られ、複雑に掘られた迷路のような塹壕の妙な生々しさがシオンを現実に戻す。






『まもなく着陸する、総員シートベルト着用を改めて確認せよ』


 しばらくしてつけていたヘッドセットから無線が入る。

 するとヘリは速度と高度を徐々に落とし始めるが外には錆びついた格納庫や青々とした草が滑走路の随所から顔を見せる飛行場らしきものが見えるだけでとても使われているようには見えない。

 着陸したヘリから降りると制帽を押さえながら近づく二人の女軍人が近づいてくる。


「いやー、ご苦労、ご苦労! ようこそ我が家へ! 」


 陽気にそう話しかける妙に色気のある上官と思しき年増の女はシオンに顔を近づけ、前に掛かったブロンドヘアをかきあげてまじまじと見る。


「ふーん、可愛い子じゃない」


「いい目してるわ」


 シオンが苦笑していると隣にいた部下に見えるメガネをかけた士官が肩を掴み遠ざけると


「やめてください、引かれてます」


 上官にあっさりと切り捨てて背筋を伸ばすとシオンに敬礼をして


「失礼しました、私北部方面隊スザンヌ基地所属メイ・クラリス中尉です」


「そしてこちらが我が基地の司令官アンジュ・ムーア大佐です」


 シオンも慌てて足を引いてスカートを軽く持ち上げ、カーテシーと呼ばれる挨拶をする。


「よしっ、あとは任せた!」


 アンジュはメイの肩を軽く叩き建物へと戻っていく。


「すいません、ですが悪い人ではないです」


「どうぞこちらへ」


 メイは肩を軽く払うと降ろされたトランクを持ったシオンにそう言い、アンジュと同じ建物へと歩き始める。

 



 自室である小ぢんまりとした個室に荷物を置くとメイにある一室に連れられ、部屋の中に入るとライフルやスラスター、飾り気のないシンプルなメイド服、プレートキャリアなどが机の上に置かれている。


「先程ヘリの中に積まれていたあなたの装備です、初めて見ましたがこれがMILSPEC向けの試験機材ですか……」


「訓練はされているようなので説明は不要かもしれませんが規則なのでさせていただきます」


 ミアはまじまじと機材を見ていたが我に返り、説明を始める。

 

「とにかく装着しましょう、まずはメイド服ですね」


 そう言って畳まれていた服をハラリと広げて手渡す。


「こちらは金属素材が織り込まれた防刃繊維でできています、ただ従来と同じようにメイド服なので動きにくいですが……」


「そしてヘッドドレス、これは従来品と同じく風速、高度等々飛行に必要な情報はこちらから取得されます」


シオンが背中のホックなどを外し始めるとミアは

頬を少し赤らめて後ろを向く。




「着終わったらこちら、プレートキャリアです」


「一緒に支給される新型プレートは対物ライフルも理論上は受け止めます」


「衝撃はそのままなので()()ほど痛いでしょうけど」


 シオンはは被弾したときのことを想像し身を少し震わせる。

 シオンは慣れた手つきで装着すると隅に置かれたものよりも一回り大きなスラスターを受け取り、これも慣れた様子で背負う。


「それも新型ですね、従来の二発スラスターから更に二発増やして四発」


「推進力も倍近くまで上がります」


 そしてミアがシオンのライフルであるプレートキャリアと同じ砂茶色のSCAR-Hを取ると装着されたマガジンを外してチャージングハンドルを引き、シオンに手渡す。


「ライフルです、オプションパーツは銃剣のみですが申請していただければスコープ等の光学機器も搭載可能です」


 ミアはテーブルに置かれていた箱から弾丸を取り出してシオンに見せる


「弾薬は7.62×51mm、炭化タングステンを使用した弾薬ですので通常ドレッドノート(ウルフパック)達は正面から破壊可能です」


「めちゃくちゃ高いので使いすぎると怒られるんですけどね」


「でも遠慮はいりません」


 ミアは弾薬を手に上の弾丸を持て余すように眺めながら続けて


「死んだら元も子もないですし」


「何より戦うのがあなたの仕事なら私たちは泣きながら書類作るのが仕事、だから気にしないで」


 そう言って弾薬を置くとシオンに向けて小さく親指を立てるがシオンは冗談と捉えるべきかどうか分からず苦笑する。


「そうそう、これあなたのご主人様からですが」


 ミアの手にはチョーカーが載せられていて、中央には嵌め込まれた黒い玉が鈍く輝きを放つ。


「どうやら記憶のバックアップが取れない代わりにあなたの視覚データを撮るためのボディカメラだそうです」


「あと伝言で『着けても、着けなくても君の自由だ』と」


 ミアは迷うことなくチョーカーを着けるシオンを尻目に時計を見る。


「さてもうすぐあなたのお仲間さん達が帰って来る頃ですかね」


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