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5 別れ

 市場から急ぎ足で家路に就くが既に太陽が街を明るく照らし、人々が行き交い活動を始めている。

 息を切らしながら家の前に着くとフルクラムが車にシオンのトランクを積み込んでいて、腰を叩きながら顔を上げると、こちらに気づき門を開けて入ってきたシオンに


「遅かったな、大丈夫そうで良かったよ」


 シオンは眉を落として謝罪するとフルクラムは笑みを浮かべながら時計に目を落として


「話は車で聞こうじゃないか」


「バケットとハム、桃もあるのか」


 シオンはハッとして玄関に向かいながら振り向く。


「切ってサンドイッチにしてきます!」


 フルクラムはこちらに親指を立てるとセダンの荷室のドアを閉める。


          


  


 ――伝統的な建物の間を観光政策の為に旧式のデザインを模した自動車が走る様子はまるでずっと前に時の流れを置いてきてしまった様に見える。

 シオンは具材が挟まれたパンを両手で持ちながら市場での出来事を話すと、ハンドルを握るフルクラムは前を向いて笑い、片手に持ったパンの残りを口に頬張り飲み込むと


「お前も災難だったな」


「でもまたそれが良い思い出になるものさ」


 しかし浮かない顔をしていたシオンが口を開く


「でもあの少年は戦争に勝てば幸せになれるのでしょうか? あの子を逃したことは正解だったのでしょうか? 」


「私はあの時どうすれば良いのか分かりませんでした」


 魔法瓶に入ったコーヒーを飲んだフルクラムは一息置いて


「でもお前はその子を助けた、お前はその子に機会を与えた」


「それがどんな結果をもたらすかは誰にもわからないさ、戦争だって同じで誰にも結果はわからん」


「正解なんて無いんだ」


 シオンは何も言わずに口にバケットを運ぶ。




 そのうち永遠に続くかとも思わせる青々と作物が茂った田園風景からフェンスに囲まれた広大な土地が姿を現す。


「あれが基地だ、あそこから各地の壁外にある前哨拠点へ物資や(アンドロイド)を送り届けている」


「大切な時間は過ぎるのが早いな」


 悲しげな笑みを浮かべたフルクラムがシオンに目をやると俯きながら書類を両手で握っている


「気を張りすぎるなよ」


「前しか見えなくなるからな、前進以外にも道はある」


 ライフルで武装したメイド服姿のファミリアがゲートに立ち、シオンが持っていた書類を見せる。


 シオン達と書類を交互に目を通すと


「通れ」


 書類を突き出しながら短くそう言い、右手を挙げるとゲートが開く。


 駐車場に着き車から降りたシオンは荷室のドアノブに手を掛けて動かないフルクラムの手に自分の手を重ね


「私がやりますよ」


 そう言うとフルクラムは困り顔で


「俺はこれくらいしかしてやれないんだ」


「やらせてくれ」


 しかしシオンは手を離さずに微笑むと


「ご主人様だって気を張りすぎですよ、少しは自分の身体を考え無いと」


 シオンはそっとドアを開けてトランクを下ろすと、目を潤ませて天を仰いでるフルクラムの顔を見て


「行ってまいりますご主人様」


 そう言って右回りして庁舎に向かうシオンを「待っている」と言い、その背中を眺めていたフルクラムはハッとした様子でシオンの背中を見て手を伸ばそうとするが届かず、思わず口から飛び出すように


「お前の選択間違っていないと思うぞ! 」


 シオンは涙を溜めた目でこちらを向き大きく頷くと玄関まで歩いて行き、扉の前でもう一度チラリとフルクラムを見て中に入って行く。



 

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