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――北部戦線

 曇天の空で二色の曳光弾が破裂音と共に飛び交っているが、数に勝る赤色の曳光弾が散発的な緑色の曳光弾の出所に集中して浴びせられ、何がが一つまた一つ昼花火のように爆ぜる。

 そのうち緑色の曳光弾は見えなくなり、ただ赤色の曳光弾が地上に向かって空気を裂くように降下する青白い何かに弾幕の雨が浴びせられるだけである。


「流石に、これはキツイな……」


 青白い光の主であるランドセルより一回り、二回り大きいスラスターを背負った少女は声を強張らせながらそう言いながら滑るように左右へ身体を揺らし、巧みに銃弾を避ける。

 しかしその後ろから追う中世西洋の甲冑に似た見た目の5機の機体がガトリング銃で絶え間なく弾幕を張り続けて反撃の余地を与えない。


「うわっ、弾掠った、あんま自信ないんだけどなあ……仕方ないか」


 そう言うと少女は薄汚れたメイド服の上から着たプレートキャリアからスモークグレードを取り出して安全ピンを抜き捨て、レバーを軽く指で払いのけると、火花と共に白煙が噴き出す。

 少女は頭の上にそれを掲げて大きく円を描くように同じ場所を周り続ける。

 そのうち少女の頭上は白煙に包まれ、上から撃ち下ろしていた機体からは少女の様子は確認できない。

 すぐに機体のうちの3機が散開して白煙に飛び込み少女を探し始めるが、白煙に突入した刹那1機の機体が下から少女の銃剣で腰の駆動部を突かれ、そのまま押し上げらように上昇し始める。


「ああああああああああああっ」


 少女は悲鳴とも雄叫びともつかない声を張り上げ、スラスターの最大出力で上昇する。

 上で警戒していた2機は射撃するが突き上げられる機体の厚い装甲に阻まれ貫通せず、高所を取られ先程と状況は逆転する。

 少女はライフル(SCAR-L)につけられたスリングの留め具を外し、ライフルごと機体を捨てると今度はパルスグレードを取り出す。

 背後からは先程の機体達が反撃を試みようと迫っている。


「散れっ」


 そう言うと同時に安全ピンを抜き、パルスグレードを落とす。

 電磁パルスにより敵を無力化するパルスグレードは敵の機体の真ん中で炸裂し、まともに食らった敵の機体達は魂が抜けたように脱力して地面へと吸い込まれていく。


「お、おわったか……?」


 息を荒げながらもサイドアームに携えていたハンドガン(P210)を取り出してしばらく周囲を警戒した少女は一息つくと


「きつかったぁ……片方スラスター死んじゃったし、味方の機体回収は他部隊に任せよー」


 そう呟き首から下げた古い懐中時計に目をと落とし、スラスターの様子を気にしつつ飛び去ろうとしたとき。


「あ、あれ動けないし、目の前が……何処かダメージ喰らった……の……かな」


 突如少女は金縛りにあったように動けなくなり、視界がぼやけ始める。


「あーあ……惜しかった……なぁ……戦争から帰っらご主人様に自慢しようと……思ったのに……」


 そう呟き静かに瞼を閉じると、スラスターも徐々に勢いを失い沈むように降下していく。

 


 


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