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第17話 ネムル―ラ⁉ 睡眠の魔法少女ズーズー・ノクターン①

 チャイムが鳴って午後の授業が終わりを告げる。

 放課後ケミィ先生に呼ばれてラボに行こうとしていた、その時の事。

 右半分が黒で左半分が白色という不思議な髪色をした女の子が私たちに話しかけてきた。


「よっすー。舞月夜サン、どうやら魔法少女になれなくなったそうっすねぇ」


 ぷかぷかのパジャマみたいな紫色の魔法少女服。

 星が描かれた睡眠キャップのようなとんがり帽子。

 その目はうとうととしていて、今にも眠ってしまいそう。

 魔法少女ってやっぱり変わった子が多いのかなぁ。

 

 ていうかそのセリフ昼休みの時も聞いたぞ。

 魔法少女になれなくなった所を狙ってくるなんて、それでも魔法少女なのか。


「何よ、やるなら相手するけど?」


 そして何でこの子はこんなに好戦的なのか。

 どっかの戦闘民族じゃないんだから、力を失っている間は大人しくしていたらいいのに。


「お、いいっすねぇ。そうと決まればさっそく……ぐぅ」


 決闘を仕掛けてきた少女の瞼が閉じて、話している途中なのに眠ってしまった。

 なんだか分からないが、今が逃げるチャンス!

 だと思ったのに、舞ちゃんはその子の頬をペチペチと叩き始めた。


「起きなさい! そっちから誘ってきたくせに眠ってんじゃないわよ!」

「まあまあ。せっかく向こうから寝てくれたんだからそのままにしとこうよぉ。この後ケミィ先生のとこにもいかないといけないしさぁ」


「ぐぅぐぅ……スピー」


 私が止めてるのに舞ちゃんは止まらない。

 そして往復ビンタされているのに白黒の魔法少女は全く起きない。

 それどころか鼻ちょうちんをぷかぷかと浮かべて完全に爆睡している。


 何ともヘンテコな状況だ。

 でもどうにか決闘だけは避けないと。

 

 しかし鼻ちょうちんがパチーンと割れて、白黒髪の女の子は目を覚ましてしまった。


「ん? んう、寝ちゃってたっす。それで、決闘を受けるんすよね」

「ちょ、ちょっと待って! まずはお名前を聞いてもいいかな⁉︎」


 舞ちゃんが何か言う前に、私は無理矢理二人の間に割り込んだ。

 まずは何をするにしても対話からだ。


「わっちの名前はズーズー・ノクターン。よろしくっすよー、愛諸星サン」


 これまた物凄い名前だ。

 異世界の住民は変わった名前の人が多いんだろうか。


「よろしく。あの、私のこと知ってるの?」

「いやぁ、クラスではあんたの話題で持ちきりっすよ。昨日のシエルとの決闘といい、入学した時の上級生の先輩を倒したときのやつといい。一般出身にしては中々やるようっすねぇ」

「いやぁ、それほどでもないよぉ。照れるなぁ」


 私ってば結構有名人なのかも。

 頭の後ろを掻いていると、舞ちゃんに横から小突かれた。


「調子に乗らない。目立つってことはそれだけ狙われやすいってことなんだからね」


 そっか。魔法少女だしアイドルとかになれるかなぁと思ったけど、出る杭は打たれるものだ。

 そのせいで決闘を挑まれるようになるなら、あんまり喜べることではないな。


「ついでに舞月夜、お前も有名っすよぉ。魔法少女になれなくなったエリート崩れって」

 

 そうズーズーはクスクスと小馬鹿にするように笑った。

 この子も昨日のシエルも今の弱ってる舞ちゃんを狙ってきた。

 ということは他の魔法少女からも決闘相手として狙われちゃう可能性があるってことだ。

 

 入学したばかりで目立ってる私はなおのこと。

 これじゃ有名というよりも悪名だ。


「それがどうしたの? 魔法少女になれなくたってあんたみたいな落ちこぼれに負けないわ!」

「うひひひひ。言うっすねぇ。ならそれを決闘で示すっすよぉ」


 大変だ。一触即発な雰囲気になってきた。

 でも元はと言えばこうなったのも舞ちゃんから魔法少女の力をとっちゃった私にも責任がある。

 これは私も腹をくくるしかないか。


「ねえ、その前に私と決闘してよ」

「ん? いやっすよ。お前意外と手強そうだし、まだあんまり点を持ってなさそうだから割に合わないっすよ。学年2位だった魔法少女になれない舞を狙った方がお得っす」


 そう来たか。

 点数の差が大きいほど点を奪って引きずり落とせるから舞ちゃんだけと戦うって魂胆だ。

 でもそんな弱っている相手を狙おうだなんて正々堂々とは言えない。

 ますます私が守らなくちゃ。


「でも私って舞ちゃんの力をもらってるからさ、実質的に舞ちゃんと同じってことだよね」

「それは、どういうことっすか?」

「私が舞ちゃんの代わりとして点数をかけて戦うってことだよ」

「ははーん、なるほどぉ。お前を倒せば二人分のポイントをもらえるってことっすかぁ」


 ズーズーがニヤついた。

 舞ちゃんは怒って私の腕を掴んで引き止めてきた。


「何勝手に決めてんのよ! 私はそんなこと頼んでない!」

「いいでしょ。入学試験でもシエルにも勝ったんだし、私ってなんだか強いらしいじゃん。もしかしたら舞ちゃんが強かったおかげかも」

「それは……、とにかくそんなの認めないんだからね!」


 私は舞ちゃんの両肩をがっしりと持った。

 そして相手の目を見て訴えた。


「ねえ、私が今生きてるのは舞ちゃんのおかげでしょ。その命の恩人がピンチの時に黙って見てなんかいられないよ」

「でも、あなたが戦う必要は……」


 なんだかんだと優しい子だ。

 口ではああ言ってるけど、本心では私の心配をしてくれている。

 それだけでもやる甲斐があるっていうものだ。


「別にいいよ! 私、絶対責任とるから!」

「うぅー、はぁ。分かったわ。でも魔法少女の力が戻るまでだからね」


 そうプイッと向こうを向いてしまった。

 素直じゃないなぁ。


「おーい、もう終わりっすかー? 本題に入るっすー」


 ふわ〜っと大あくびをかいて、眠そうにズーズーが口を挟んできた。


「あ、ごめんごめん。じゃあ決闘に勝った時の条件だね。私が勝ったらもう舞ちゃんに決闘を挑まないってことで」

「魔法少女の力が戻るまでよ!」と舞ちゃんが付け加えた。

「そういうこと。もちろん殺傷は無しね。で、そっちの条件は?」


 ズーズーはニヤケ顔の口を更に大きく歪めた。


「うひひひひ! わっちが勝ったら、愛諸星、舞が魔法少女になれるようになるまでわっちと毎日一回ずつ二人分の点数をかけて決闘するっす。そしたら大儲けっす」


 これは、私たちをカモにしようとしてきてるな。

 失礼なことにこっちの事を完全に舐めきっているみたいだ。

 ちらりと舞ちゃんの方を見ると、コクリと頷き返してくる。

 やっつけろってことだ。


「うん。いいよ。 それじゃあヒルグリム先生のとこに行こう」

 

 何とか舞ちゃんが危ないことをするのを阻止できた。

 でも困ったことに、ますます負けられなくなってしまったなぁ。

続く!

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